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「東京にいなければエンジニアとして生き残れない」──そう信じて10年間、都内のSES企業で客先常駐を続けてきた高橋聡さん(33歳・仮名)。しかしコロナ禍のリモートワーク経験が、その思い込みを根底から覆した。現在は長野県に移住し、自社サービス企業の社内SEとしてフルリモートで働く。年収・キャリア・生活の質──どう変わったのか? 「理想論」ではなく「実行可能な選択肢」として、そのリアルを語ってもらった。

【転職者情報】
氏名:高橋聡
年齢:33歳
居住地:長野県(転職後)
現職:社内SE(フルリモート)
前職:都内SES企業(Webエンジニア)
エンジニア歴:10年
主な技術スタック:TypeScript / React / Node.js / AWS(ECS・S3・RDS)
転職先企業:従業員300名・自社サービス企業・フルリモート可

Before:都内SESエンジニアとしての10年間
高橋さんは新卒でSES企業に入社。PHP(Laravel)とJavaScriptを軸に、都内の大手企業や中小スタートアップへの客先常駐を繰り返しながら、着実に経験を積んできた。MySQLによるデータベース設計、AWSの基礎的な運用など、フルスタックに近い実務経験は確かなキャリアを形成していった。
Q. SESエンジニアとして働いていた頃、良かった点はなんでしたか?
案件の多様性は、今振り返っても大きな財産だと思います。金融系、EC系、SaaS系と、さまざまな業界のシステム開発に関わることができた。技術スタックも強制的に幅が広がりますし、「現場の空気を読む力」もSESで鍛えられました。東京という場所の利便性も正直、捨てがたかったですね。打ち合わせがしやすい、勉強会が多い、情報が集まりやすい──都内ならではのメリットは確かにあった。
一方で、年数を重ねるにつれて違和感も蓄積していった。特に「働く場所を選べない」という制約は、次第に大きなストレスになっていたという。
Q. 違和感や課題を感じ始めたのはいつ頃でしたか?
エンジニア歴7〜8年目あたりから、じわじわと「このままでいいのか」という感覚が出てきました。客先常駐なので、毎朝決まった時間に決まった場所へ行かなければならない。通勤時間は往復2時間近く。満員電車での消耗は思った以上に積み重なるんです。
生活コストの問題もありました。都内の家賃・物価は高い。エンジニアとして収入は悪くないはずなのに、手元に残るお金はそれほど多くない。「何のために働いているんだろう」と考えることが増えていきました。
一番大きかったのは、働く場所を自分で決められないこと。エンジニアとしてのスキルはあるのに、「どこにいるか」に縛られる感覚──これが一番のフラストレーションでした。
Turning Point:コロナ禍が「気づき」に変えた
転機は2020年春、コロナ禍のリモートワーク導入だった。強制的に自宅での作業を余儀なくされた状況が、逆説的に高橋さんの価値観を大きく変えることになる。
Q. リモートワークを初めて経験したとき、どんな感覚でしたか?
正直、最初は「仕事のパフォーマンスが落ちるんじゃないか」と不安でした。でも実際にやってみると、むしろ集中できる。通勤ゼロで体力の消耗がない分、頭の回転が全然違う。コードの品質も、自分の判断では上がったと思います。
そして気づいたんです。「あれ、東京にいる必要、なくない?」って。仕事の成果は場所に関係なかった。それは、自分の10年間の思い込みを崩す体験でした。
その後、週末を利用して長野県の農村地帯に足を運んだ。友人の別荘に泊まり、自然の中でリモートワークをしてみたところ、東京では味わえなかった「余白」を感じたという。
Q. 地方移住を具体的に考え始めたきっかけは?
長野で1週間過ごしたとき、朝起きたら山が見えて、昼休みに外を散歩して、夜はスーパーで地元の食材を買って自炊する──そういう生活が、こんなにも気持ちいいのかと。仕事の質は変わらないのに、生活の質は段違いだった。「これが毎日なら、自分はもっといい仕事ができるんじゃないか」って思ったんです。

転職活動:「リモート可の社内SE」という選択肢
地方移住×フルリモートという方向性が定まった高橋さんは、転職活動を開始した。しかし、思い描くような求人はなかなか見つからなかった。
Q. 転職活動で最初に直面した壁は?
「地方在住OK・フルリモート・社内SE」という条件で探すと、求人数が極端に少ないんです。リモートと書いてあっても週に何日かは出社必須だったり、地方在住は認めていなかったり。社内SEという職種自体、そもそもオンサイト前提の会社が多い。正直、「自分の条件は無理なのか」と諦めかけた時期もありました。でも、転職サイト経由でエージェントに相談したことで、状況が変わりました。
エージェントとの出会い
接点となったのは、社内SE転職ナビ経由でのエージェント相談だった。担当者は単なる求人紹介にとどまらず、「フルリモート×地方在住」という条件での現実的な可能性と、年収・キャリアへの影響を正直に伝えてくれたという。
Q. エージェントとやり取りして、どんな点が良かったですか?
一番助かったのは、「地方転職における年収の現実」をちゃんと教えてくれたことです。ふんわりとした理想論じゃなく、「この会社はこの年収レンジで、生活コストを差し引いたら都内より手取りは上がる可能性がある」という具体的な試算を出してくれた。
それから、「フルリモート可」と求人票に書いてあっても、実際の運用が異なるケースがあることも教えてもらいました。エージェント側で企業の内情をある程度把握しているので、「この会社は本当にフルリモート定着している」という情報が信頼できた。
働き方を重視してくれる姿勢が、ずっと一貫していました。「希望条件を妥協しましょう」ではなく、「この条件を実現できる場を一緒に探しましょう」というスタンス。それが私には合っていました。

After:長野×社内SEフルリモートの「リアル」
転職から約1年半。高橋さんは現在、長野県内に拠点を置きながら、従業員300名の自社サービス企業の社内SEとしてフルリモートで勤務している。技術スタックはTypeScript・React・Node.js・AWSへとアップデートされ、自社プロダクトの開発に深く関わるようになった。
年収の変化──本当に下がるのか?
Q. 年収はどのくらい変わりましたか?正直に教えてください。
名目上の年収でいうと、転職前より若干下がりました。でも「実質的な豊かさ」は確実に上がっています。
都内では月の家賃が高く、外食が多くなりがちで食費もかさんでいた。長野に移ってから、家賃は都内の半額以下になりました。食費は地元の農産物が安くて、自炊すれば都内の半分以下で済む。通勤コスト(交通費・定期代)もゼロ。
月の固定費を計算し直したら、手元に残るお金は転職前より増えていました。「年収が下がる=生活が苦しくなる」という思い込みは、地方移住においては必ずしも正しくない。
社内SEの働き方──リモートで成立するか?
Q. 社内SEという職種は、フルリモートで成立すると実感していますか?
私の会社に関しては、完全に成立しています。ただし、企業によって大きく違うとも感じています。
社内SEの仕事は大きく分けると「既存システムの運用・保守」「社内からの問い合わせ対応」「新規システムの企画・開発」の3つ。このうち「問い合わせ対応」はSlackやメール対応で十分カバーできる。「開発」はそもそもリモートと相性がいい。
唯一の課題は、社内の関係者とのコミュニケーション。対面の方がスムーズなシーンはあります。ただ、うちの会社はリモート前提の文化が根付いているので、ビデオ会議やチャットのやり取りが最適化されている。「リモートで生産性が落ちる」という感覚は正直ほとんどない。
キャリアへの影響──スキルは磨かれるか?
Q. 社内SEへの転職で、技術的なキャリアはどう変わりましたか?
技術スタックが大きくアップデートされました。SES時代はLaravel・PHPが主戦場でしたが、今はTypeScript・React・Node.jsが中心。AWSもECSやRDSなど、より実践的な使い方を覚えました。
社内SEというと「保守が多くてスキルが停滞する」というイメージを持つ人もいますが、自社サービス企業の場合は違います。プロダクトを成長させるために新技術を積極的に採用していく必要があるので、学習の機会は豊富。
むしろSES時代より深く、一つのサービスに向き合えるようになったと思います。「この機能を作ることでユーザーがどう変わるか」を考えながら開発できる──これはSESにはなかった体験です。

地方×社内SEのメリット・デメリット:正直に整理する
「地方移住+社内SEフルリモート」という選択の現実を、高橋さんに正直に整理してもらった。理想論ではなく、実際に1年半以上生活して見えてきた等身大の評価だ。
✅ メリット(高橋さんが実感している)
- 通勤ゼロによる体力・時間の回復(週10時間以上)
- 生活コスト低下により、実質的な手取りが増加
- 自然環境・静かな作業空間でコードの集中度が向上
- 食生活の改善(地元農産物、自炊中心)
- ワークライフバランスの大幅な改善
- 自社サービス開発に深く関わることでエンジニアとしての充実感向上
⚠️ デメリット・注意点(高橋さんが正直に感じていること)
- 名目年収は転職前より若干低下した(会社・条件による)
- 地方都市はエンジニアコミュニティが少なく、勉強会や交流の機会が減る
- フルリモート可の社内SE求人は、都内勤務前提の案件より絶対数が少ない企業によっては「リモートOK」が形骸化しているケースもある(エージェント選びが重要)
- 家族・パートナーの同意と、移住先の生活インフラ確認が事前に必要
「場所を変えること」を考えている人へ
Q. 都内で働いていて、地方移住やリモートに興味があるエンジニアへのアドバイスは?
まず「自分は本当に何を変えたいのか」を明確にすることだと思います。場所を変えることが目的になってしまうと、転職先でも同じ不満が生まれます。私の場合は「働く場所の自由」と「生活コストの最適化」と「自社サービス開発への関与」が明確だったから、転職先の条件を妥協なく絞り込めた。
次に、エージェント選びです。「フルリモート×地方在住×社内SE」という条件は、すべてのエージェントが得意なわけじゃない。この領域に詳しいエージェント・サービスを選ぶことが、求人の質に直結します。
最後に、「生活の試算」を必ずしてください。年収だけ比べても意味がない。家賃・食費・通勤費・交際費など、生活コスト全体を比較すると、地方転職の方が実質的に豊かになるケースは確かにある。数字をちゃんと見ることで、不安は行動に変わります。
まとめ:「働く場所」はキャリアの一部だ
高橋さんのストーリーが示しているのは、「エンジニアとして優秀であれば、働く場所を選ぶ権利がある」という当たり前の事実だ。
地方×社内SEフルリモートという選択は、決して「妥協」ではない。年収の変化、技術スタックの刷新、ワークライフバランスの向上──それぞれのリアルを直視したうえで、自分の価値観に合った選択をした結果だ。
「場所を変えたい」という気持ちがあるなら、まずは情報収集から。理想論ではなく、実行可能な選択肢として「地方×社内SEフルリモート転職」を検討してみてほしい。
この記事のポイント
- 社内SEのフルリモート転職は、自社サービス企業を選べば実現可能
- 地方移住後の年収は名目で下がっても、生活コスト差で実質手取りが増えるケースあり
- 技術スタックはSES時代より深化。スキル停滞は「会社選び」次第
- フルリモート×地方在住の求人は絶対数が少ないため、専門エージェント活用が重要
- 「場所を変える」ことは妥協ではなく、キャリア設計の一部
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※本記事は実際の転職者へのインタビューをもとに構成したものです。プライバシー保護のため、氏名・年齢・企業情報等は一部変更しています。



