ITエンジニアにとって魅力的なキャリアパスのひとつに、情シス(社内SE)への転職があります。ただ、限られた求人数、幅広いスキル要求、即戦力志向など、乗り越えるべき課題はさまざまです。しかし、適切な戦略と準備があれば、この難関を突破することは不可能ではありません。
本記事では、情シス(社内SE)への転職の難しさの理由と攻略法を転職エージェントの視点から詳しく解説します。情シス(社内SE)への転職を希望される方は、最後までご覧ください。

情シス(社内SE)とは?
情シス(情報システム部門)の主な役割は、社内のネットワークやIT機器の管理、業務システムの企画・開発・運用、そしてITに関する社内サポートの提供など、多岐にわたります。
その中で「社内SE」とは、情シス部門に所属するエンジニアであり、社内のIT基盤や業務システムを技術面から支える専門職です。システムの導入や保守、セキュリティ対策、業務フローの効率化など、企業のIT活用を推進する中心的な役割を担います。
また、社内SEは社内の業務プロセスや組織文化を深く理解したうえで、ITをどう活用すべきかを提案・実行できる立場にあることも特徴です。そのため、単なる「技術者」にとどまらず、経営層と現場の橋渡しを行う存在として期待されるケースも少なくありません。

情シス(社内SE)転職が難しいといわれる理由
企業の中核を担う情シス(社内SE)に転職するのは難しいと言われています。その主な理由は下記の5つです。
求人数が限られている
求人数が限られているという点は、情シス(社内SE)への転職が難しい理由のひとつです。多くの企業で情シス部門は不可欠な組織ですが、その規模は比較的小さく、採用枠も限られています。一般的に、1社あたりの募集人数は1〜2名程度にとどまることが多いのが現状です。
この背景には、情シス部門の特性があります。企業全体のIT戦略を担う重要な部署であるため、大規模な増員よりも、質の高い人材を少数精鋭で揃える傾向があります。また、企業によってはシステムの内製化を進めるために、人員増強に積極的ではあるものの、その動きは緩やかで、急激な求人増加には至っていません。
限られたチャンスを最大限に活かすには、早期の情報収集と準備、戦略的なアプローチが求められます。
幅広いITスキルが求められる
情シス(社内SE)への転職が難しい大きな理由のひとつは、幅広いITスキルが求められる点です。情シス部門は企業のIT戦略を担う重要な部署であるため、単なる技術者ではなく、ビジネスの中核を支える存在でなければなりません。
そのため、基本的なITインフラの知識はもちろん、ネットワーク構築、サーバー管理、情報セキュリティ対策、クラウドサービスの活用など、IT戦略全般を見渡せる幅広いスキルが求められます。さらに、システム開発やプロジェクト管理能力も求められることが多く、これらスキルをひとりで兼ね備えていることが期待されます。
このような幅広いITスキルの要求は、転職希望者にとって高いハードルとなるでしょう。
即戦力の募集となりやすい
多くの企業が即戦力を求めている状況も、情シス(社内SE)への転職を難しくしている理由のひとつです。情シス部門は企業のIT戦略を担う重要な部署であるため、即座に成果を出せる人材を求める傾向が強いのです。
この背景には、企業がいち早くIT投資の効果を得たいという期待があります。多くの企業が業務効率化や新規事業創出のためにIT活用を進めており、それに伴い情シス部門への期待は高まっている傾向にあります。そのため、未経験者の採用には慎重な姿勢を見せる企業が多く、業務経験者でなければ書類選考すら通らないというケースもあるようです。
情シス(社内SE)への転職を目指すなら、事前にスキルや資格を身につけるなどして、戦略的に取り組まなければなりません。
ソフトスキルも重視される
情シス(社内SE)部門には、社内のさまざまな部署や外部ベンダーとの連携が不可欠です。そのため転職希望者には、高いソフトスキルも求められます。技術力だけでなく、コミュニケーション能力や問題解決力、リーダーシップなどの対人スキルが重視されるため、転職の難易度が高くなりやすいのです。
円滑なコミュニケーションが業務の成否を左右しかねず、経営陣や他部署に対して新システムの提案やプレゼンテーションを行う機会も多いため、説得力のある提案能力も求められます。
複数のプロジェクトを同時に進行させるマネジメント力や、トラブル発生時の冷静な対応力も重要です。これらのソフトスキルを磨くことが、情シス転職成功の鍵となるでしょう。

人気が高く、競争が激しい
そもそも転職市場において情シス(社内SE)への転職は、人気が高く、競争が激しくなっています。ITスキルが重視される現代では、情シスは安定性と将来性を兼ね備えた魅力的な職場として、注目を集めているからです。
それでいて、前述のとおり大手企業であっても情シス部門の年間採用数が少ない現状では、競争が激しくなるのも当然でしょう。さらに業界や企業特有のシステムやプラットフォームの知識など、高度な専門性が求められるため、難易度は高くなってしまいます。
このような状況下で情シス(社内SE)への転職を目指すのであれば、ほかの候補者との差別化を図り、戦略的に活動する必要があります。
現在のIT業界の求人動向
IT業界の求人動向は、働き方の多様化と働きやすさを重視する傾向が高まっています。社内SE転職ナビで保有する求人でも、ワークライフバランスや充実した福利厚生に注力する企業が増加傾向です。なかでもリモートワークやフレックス制度を導入する企業が目立ちます。
この「働きやすさ」を重視する流れは、情シス(社内SE)の求人にも反映されています。従来の技術力や即戦力としての経験に加え、柔軟な働き方を受け入れる姿勢や、自己管理能力も重要視されるようになっています。
こうした変化は、現在の職場環境に不満を感じている人や、より良いワークライフバランスを求める人にとって、新たなキャリアステージへの扉を開く転職の好機といえるでしょう。
情シスの求人に興味が湧いたら、実際にどんな求人があるのかを見てみましょう。社内SE転職ナビでは、常時5,000件以上のIT求人を掲載しています。求人の閲覧は登録なしで可能なので、条件や求められる人物像などを確認してみましょう。
情シス(社内SE)の平均年収
情シス(社内SE)の平均賃金は、一般的に約530万円から約660万円程度です。この数字は一般的な日本の平均賃金を上回っている一方で、ほかのIT職と比較した場合、特別に高いわけではありません。
ただし、情シスで働くには年収以外にもさまざまなメリットがあります。まず、情シスに配属されれば、さまざまなIT技術や、プロジェクト管理に触れることができるため、IT職の入り口として最適です。
また、社内でのキャリアアップの機会も豊富であるため、成果を積み重ねることで、自社内でのポジションをあげていくことができるでしょう。全社的なIT戦略を担当する管理職や、役員になることも夢ではありません。企業ならではの福利厚生や、安定した経営基盤の恩恵を受けることも可能です。
このように、情シスへの転職は日本の平均を上回る年収が手に入るだけでなく、キャリア形成と生活の安定の双方が手に入る魅力的な選択なのです。
情シス(社内SE)転職でおすすめの業界
情シス(社内SE)への転職を考える際、業界によって求人の傾向に大きな違いがあることを知っておくことがいいでしょう。一般的に、IT・通信業界、金融業界、製造業界などの業界で、IT人材のニーズが高い傾向にあります。
ただし、各業界で求められるスキルや経験は異なるため、自分のキャリアプランに合わせて慎重に選択することが大切です。さらに業界ごとの詳細な違いや特徴を知りたい方は、下記の記事を参考としてみてください。

情シス(社内SE)転職を成功させる!身に着けておくべきスキル・経験は?
情シス(社内SE)として転職を成功させるには、幅広いスキルが求められます。ただし「何でもできる」ことを目指す必要はありません。実務で求められるのは、現場の課題を正しく捉え、社内外の関係者と連携しながら着実に解決へ導ける力です。
ソフトスキル:社内SEとしての“立ち回り力”
まず必要なのが、社内の関係各所と調整しながら業務を進めるための基礎的な“対人スキル”です。社内SEは部門横断で動くため、部署ごとの事情や優先度を理解しながら調整する力が求められます。
課題のヒアリングでは、相手が抱えている問題をうまく引き出すための傾聴力と質問力が必要ですし、導入提案では経営層にも納得してもらえる説明力が欠かせません。加えて、外部ベンダーや開発チームを動かす際には、納期や予算を含めたマネジメントの視点も必要になります。

技術スキルよりも「社内で調整しながら動けるか」を重視する企業は多いです。特に、非IT部門との会話を円滑に進められる方は、面接でも好印象を持たれやすい傾向にあります。


ハードスキル:現場で“即戦力”になる技術領域
一方で、もちろん技術的な素養も欠かせません。たとえば、PCやプリンターのトラブル対応、社内ネットワークの構築・保守、サーバーやActive Directoryの管理など、インフラ系の運用スキルは定番です。また、情シスがSaaSやクラウドサービスを管理することも増えており、Microsoft 365やGoogle Workspace、SlackやBoxなどの業務ツールに関する知識も強みになります。
最近ではPowerShellやシェルスクリプトを用いた定型業務の自動化や、簡単なSQLの読み書きなど、業務効率化につながるミニ開発スキルも歓迎される傾向があります。さらに、開発ベンダーとのやり取りを円滑にするために、JavaScriptやHTML/CSSといったフロントエンドの知識を持っていると重宝されることもあります。



すべての技術に精通している必要はありませんが、「インフラ×改善提案」や「アプリ運用×ユーザー支援」など、2軸で語れるスキルセットをもっている方は評価されやすいです。実務でやってきたことを“業務改善ストーリー”として伝えるのがポイントです。
企業が情シス(社内SE)として求める人材とは?
スキルがあっても転職がうまくいかない理由のひとつに、「企業の求める人物像」とのズレがあります。情シス求人の中でも、求められるスキルや働き方の幅は意外と広いため、応募先の業務内容との“相性”を見極めることが重要です。
たとえば、IT資産管理やキッティング中心の現場もあれば、システム選定・導入支援・業務改善までを求められる職場もあります。求人票には「情シス」とだけ書かれていても、実際の仕事内容が異なることは多いため、募集背景や組織体制まで確認することが欠かせません。
また、カルチャーフィットの視点も見逃せません。たとえば、裁量を持って動きたい人がトップダウン文化の企業に入ると、ストレスを感じやすくなります。一方で、安定した環境を求める人が、変化の激しいスタートアップに入社するとミスマッチが起きやすいのも事実です。



「この会社のやり方に馴染めそうか」「自分のペースと会社のスピード感は合っているか」といった視点を持つことが大切です。現場の雰囲気や文化は求人票だけではわかりにくいため、不安がある場合はぜひご相談ください。選考に進む前にすり合わせできます。


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まとめ
ITスキルの向上と、安定した生活を両立できる情シス(社内)ですが、転職を検討した際には「難しそう」と思ってしまうかもしれません。しかし、本記事を参考に情シス(社内)への転職事情を理解し、戦略的に活動を行えば、理想の企業への就職を達成できるでしょう。
もし、現状の働き方に不満があるのであれば、情シス(社内)への転職をおすすめします。ひとりで活動するのが不安であれば、「社内SE転職ナビ」がサポートするので、安心してください。
ライター:にのまえはじめ
大手精密部品メーカーで社内SE・PGを経験。その後、国内のSIerに転職し生産管理システムの開発・導入・保守・運用を担当。現在は自らIT企業を立ち上げ、顧客企業のDX化やIT化による業務改善の支援を行っている。並行して企業サイトやWebメディアでライターとしても活動中。趣味は筋トレ・プロレス観戦。
Website:https://writer.yui-road.com/

