情報システム部門は、企業のIT戦略を支える重要な部署です。業務の内容は多岐にわたり、専門的な知識が求められる場面も少なくありません。一方で、「情シスに配属されたけれど、何から学べばいいかわからない」「キャリアアップのために何か武器が欲しい」と感じている方もいるでしょう。
本記事では、情シスで働く方に向けてオススメの資格を9つ紹介します。業務内容に合わせてまとめているので、最適な資格を見つけるための参考にしてください。

情シスに資格は必要?
情シスの業務を遂行するうえで資格は必須ではありません。ただし、自身のスキルや知識を客観的に証明するための強力なツールとしては有効です。未経験で情シスに配属された方や、転職活動で自身の能力をアピールしたい方にとっては、体系的な知識の証明となるため資格取得を前向きに検討されると良いでしょう。
資格取得の過程で得られる知識は、ITインフラやセキュリティ、システム開発といった情シス業務の土台を固めるのに役立ちます。特定の製品や技術に関するベンダー資格を保有していれば、現場での即戦力として評価される場合もあります。
自身の知識レベルを客観視しキャリアプランを考えるうえで、計画的な資格取得はオススメです。
情シスの業務内容
情シスの業務は幅広く、企業の「ITの何でも屋」と表現されることも少なくありません。業務の中核となるのは、サーバーやネットワークといったITインフラの設計や構築、運用・保守です。社員が快適かつ安全に業務を行える環境を維持する「縁の下の力持ち」的な役割を担います。
社員からのPCトラブルやソフトウェアの操作方法に関する問い合わせに対応する「ヘルプデスク」業務も重要な仕事です。サイバー攻撃の脅威から企業の情報を守るための「情報セキュリティ対策」の重要性も増しています。
ほかにも、業務効率化を目的とした新しい社内システムの企画・導入・運用や、IT資産の管理、ベンダーとの調整など、多岐にわたる業務を担当します。

IT系資格の種類
IT系資格の種類は、大きく分けて以下の3種類です。
- 国家資格
- 民間資格
- ベンダー資格
各種類の特徴を知り、目的に合った資格を選びましょう。
国家資格は経済産業省が認定する公的な資格で、情報処理推進機構(IPA)が試験を実施します。「ITパスポート」や「基本情報技術者試験」などがあり、ITに関する基礎的かつ体系的な知識を証明できます。社会的な信頼性が高いのが特徴です。
民間資格は、NPO法人や企業が認定する資格です。特定の製品に依存しない中立的な立場で、実務的なスキルを問うものが多く見られます。ベンダー資格は、MicrosoftやCiscoといったIT企業(ベンダー)が自社製品に関する知識や技術を認定する資格です。特定の製品を扱う現場では即戦力として高く評価されます。
ITインフラ管理にオススメの資格
ITインフラは、企業が安定してビジネスを継続させるうえで不可欠な存在です。情シス担当者は、ITインフラを安定稼働させるため、ネットワークやサーバーに関する知識が求められます。ここでは、インフラ管理に関する実践的なスキルを証明する3つの資格を紹介します。
- 基本情報技術者試験(FE)
- CompTIA Network+
- Cisco Certified Network Associate(CCNA)
各資格について詳しく見ていきましょう。
基本情報技術者試験(FE)
「基本情報技術者試験(FE)」は、ITエンジニアの登竜門として知られる国家資格です。最大の特長は、ITに関する知識を体系的かつ網羅的に学べる点にあります。具体的にカバーしている知識領域は以下のとおりです。
- コンピューターの仕組み
- データベース
- ネットワーク
- セキュリティ
- プロジェクトマネジメント
- 経営戦略
インフラ領域に特化した資格ではありませんが、サーバーやネットワークの設計・構築といった実務の基礎を理解するうえで有効です。実際に、ITインフラや業務システムに携わる多くのエンジニアが初期段階で取得しており、現場でも汎用的な知識として活用されています。
基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
CompTIA Network+
CompTIAが認定する「CompTIA Network+」は、ネットワーク分野に特化した国際的な資格です。CiscoやJuniperといった特定のベンダー(メーカー)の製品に依存せず、中立的なネットワーク知識とスキルを証明できます。
試験で問われる知識は、以下のとおりです。
- TCP/IPモデルやOSI参照モデル
- IPアドレッシング
- VLANの構築
- ルーティングプロトコルの仕組み
- DNSやDHCP
ネットワークのパフォーマンスを維持し、障害発生時の原因特定とトラブルシューティング手法も求められます。
単なる暗記ではなく、原理原則を深められる内容となっているため、応用力の高いネットワークエンジニアとしての基礎を築くのに最適です。
CompTIA Network+ | CORE|CompTIA JAPAN (コンプティア 日本支局)

Cisco Certified Network Associate(CCNA)
「Cisco Certified Network Associate(CCNA)」は、ネットワーク機器市場で世界最大手のCisco Systems社が公式に認定するベンダー資格です。ルーティング(通信経路の最適化)やスイッチング(同一ネットワーク内のデータ中継)に関する深い知識と、具体的な設定・検証スキルが身につきます。
ネットワークの抽象的な理論が、具体的なコマンドラインの設定と結びつくため、知識が定着しやすく理解が深まります。ネットワーク自動化やプログラマビリティといった新しい分野の基礎も資格の範囲です。
インフラエンジニアのキャリアを築いていきたい方や、大規模な環境で活躍したい方にとっては取得する価値が高い資格です。
Cisco Certified Network Associate (200-301 CCNA) – Cisco
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情報セキュリティにオススメの資格
企業のIT化やDXが急速に進む現代において、情報セキュリティの確保は事業継続に直結する経営課題です。サイバー攻撃は年々巧妙化・悪質化しているため、企業を守るためには高度なセキュリティ対策が求められます。必要な知識とスキルを証明し、キャリアアップにつなげるには以下の3つの資格がオススメです。
- 情報セキュリティマネジメント試験(SG)
- CompTIA Security+
- 応用情報技術者試験(AP)
各資格について詳しく解説します。
情報セキュリティマネジメント試験(SG)
情報処理推進機構(IPA)が実施する「情報セキュリティマネジメント試験(SG)」は、情報セキュリティを「マネジメント」の視点から捉えた国家資格です。対象となるのは、ウイルス対策や不正アクセス検知といった純粋な技術的対策だけではありません。情報セキュリティレベルを維持・向上させるための管理体制(ISMS:情報セキュリティマネジメントシステム)の構築・運用に関する知識も体系的に学びます。
具体的な内容は下記のとおりです。
- 情報資産の洗い出しとリスク分析
- 情報セキュリティポリシの策定
- 従業員への教育・啓発活動の計画
- インシデント発生時の報告・対応プロセスの整備
組織のセキュリティガバナンスを強化するうえで、中心的な役割を担いたい方に最適な資格です。
情報セキュリティマネジメント試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

CompTIA Security+
「CompTIA Security+」は、CompTIAが認定する情報セキュリティ分野の国際的な民間資格です。特定の製品や技術に依存せず、グローバルスタンダードとなっているセキュリティのベストプラクティスを網羅しています。
試験で問われる主な知識は、以下のとおりです。
- 最新の脅威や脆弱性の分析
- 暗号化技術の適切な利用法
- アクセス制御やID管理の仕組み
- リスク管理の実践的な手法
現実のセキュリティインシデントを想定した問題解決能力が試されるため、取得者は実践的なスキルを持つ専門家として高く評価されます。資格は3年ごとに更新が必要であり、継続的に学習しなければ維持できません。
グローバルに通用するセキュリティの専門家を目指すなら資格取得を検討すべきでしょう。
CompTIA Security+ | CORE|CompTIA JAPAN (コンプティア 日本支局)
応用情報技術者試験(AP)
「応用情報技術者試験(AP)」は、基本情報技術者試験の上位にあたる国家資格です。IT全般に関する応用的かつ高度な知識とスキルを証明するもので、技術・マネジメント・経営戦略の3分野にわたって幅広く出題されます。
そのため、取得者は「技術もビジネスもわかる」人材として評価される場面が多くあります。
とくに情報セキュリティ分野では、以下のような幅広い知識が求められます。
- セキュアプログラミング
- ネットワークセキュリティ
- データベースセキュリティ
- セキュリティポリシの策定
- リスク分析と評価
- 情報セキュリティ監査
技術的な専門性を深めると同時に、管理や統制といった視点からも情報セキュリティを考えられる力が問われます。
応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ヘルプデスクやユーザーサポートにオススメの資格
社員からのITに関する問い合わせやトラブルに対応するヘルプデスクやユーザーサポートは、企業の円滑な業務運営を支える「最前線」です。受け身でトラブルを解決するだけでなく、社員のITリテラシー向上を支援し業務の効率化に貢献できます。
ここでは、ヘルプデスクやユーザーサポートにオススメの3つの資格を紹介します。
- ITパスポート試験(IP)
- MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
- CompTIA A+
順番に詳しく見ていきましょう。
ITパスポート試験(IP)
「ITパスポート試験(IP)」は、ITに関する基礎知識を証明する国家資格です。ITの専門家だけでなく、営業や企画、経理など、あらゆる職種を対象としています。
AIやIoTといった最新技術のキーワードから、企業のコンプライアンスや経営戦略の基礎、そして情報セキュリティや個人情報保護に関する基本的な考え方まで、幅広く網羅されています。
ヘルプデスク担当者にとっては、ITパスポート試験で得られる幅広い知識が、コミュニケーションの基盤となります。ユーザーが抱える問題の背景にある業務内容を理解しやすくなるため、的確で質の高いサポートを提供できるでしょう。
全てのITキャリアの出発点として、ユーザーの立場を理解するための第一歩として有益な資格です。
MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)
「MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)」は、WordやExcel、PowerPointといったMicrosoft Office製品の利用スキルを証明できる国際資格です。
ヘルプデスクには、「Excelの関数がうまく動かない」「PowerPointで図形をきれいにそろえたい」といった、Office製品に関する問い合わせが数多く寄せられます。資格を取得すれば、質問に対して正確に回答できるでしょう。
上級スキルを身につければ、ユーザーからの質問に答えるだけでなく、一歩踏み込んだ付加価値の高いサポートも提供できます。ユーザーから直接「ありがとう」と言われる機会も増え、業務のやりがいにも直結する実用性の高い資格です。

CompTIA A+
CompTIAが認定する「CompTIA A+」は、ITサポートやヘルプデスク業務のプロフェッショナルであることを証明する国際資格です。以下のようなITサポートの現場で必要とされる知識やスキルをカバーしています。
- PCやモバイルデバイスのハードウェア構成
- OSのインストールと管理
- ネットワーク接続
- 基本的なセキュリティ対策
最大の強みは、ハードウェアやOSに起因する問題を解決に導く、「トラブルシューティング能力」が体系的に習得できる点にあります。問題解決のためのフレームワークが身につくため、再現性の高いサポートが可能となります。
ヘルプデスクやユーザーサポートの担当者として、専門的で信頼される存在になるための一歩となる資格です。
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社内システムの企画・導入にオススメの資格
社内システムの企画・導入は、企業のIT化・DX推進や、業務効率化を実現するうえで重要な役割を担います。単にITツールを導入するだけでなく、経営層や利用部門と密に連携し、ビジネス課題を解決へと導く高度な能力が求められます。
IT部門と経営層の橋渡し役となり、企業の変革をリードするために役立つ3つの資格を見ていきましょう。
- 応用情報技術者試験(AP)
- プロジェクトマネージャ試験(PM)
- 中小企業診断士
各資格について解説します。
応用情報技術者試験(AP)
「応用情報技術者試験(AP)」は、技術的な知識と経営的な視点をバランス良く証明できる国家資格です。システム開発の一連のプロセスに関する深い知識が身につきます。
身についた知識は、社内システムを導入する際に、外部のITベンダーとコミュニケーションを取る際に役立ちます。ベンダーからの提案内容を技術的な観点から的確に評価したり、社内の業務要件を誤解なくシステム要件に落とし込んだりするうえで効果的です。
技術とビジネスの橋渡し役として、システム導入プロジェクトを成功に導くための強固な基礎を築けるでしょう。情シス担当者として、運用・保守に留まらず、企業のIT戦略の企画・立案といった上流工程へのキャリアアップを目指すうえで有力な資格です。
応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
プロジェクトマネージャ試験(PM)
情報処理推進機構(IPA)が実施する「プロジェクトマネージャ試験(PM)」は、ITプロジェクト全体の責任者としての能力を認定する国家資格です。以下のマネジメント全般に関する知識と実践力が問われます。
- プロジェクトの立ち上げ
- スコープ・予算・スケジュール・品質・リソースを管理する計画立案
- 計画に沿って実行を監視・コントロールする能力
- プロジェクトの完結
プロジェクトを成功に導くための具体的な手法やフレームワークが身につくため、仕様変更や技術的なトラブル対応や、関連部署や経営層といった利害関係者との調整にも役立ちます。プロジェクトを率いるリーダーや責任者を目指す方にとって挑戦する価値のある資格と言えるでしょう。
プロジェクトマネージャ試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
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中小企業診断士
「中小企業診断士」は、IT系の資格ではありませんが、経営コンサルタントとしての唯一の国家資格です。資格取得を通して、以下のような企業経営全般に関する専門的な知識が身につきます。
- 企業の経営戦略
- 財務・会計
- 法務
- マーケティング
- 生産管理
- 人的資源管理
社内システムを導入する目的は、経営課題の解決です。中小企業診断士として培われる経営的な視点があれば、「なぜ今このシステム投資が必要なのか」を、事業戦略や財務諸表と関連付けて論理的に説明できます。投資対効果(ROI)を具体的な数値で示し、経営陣の意思決定を後押しできるでしょう。
ITと経営の両面から企業の成長に貢献したいと考える情シス担当者にとって、最強の武器となり得る資格です。
情シスで資格を取る際の注意点
情シス担当者が市場価値を高めるために資格取得を目指す点は有益です。一方で、適切な資格を選ばなければ、コストや時間などの労力が無駄になりかねません。
最も重要なのは、資格取得を目的ではなく、キャリアアップを実現するための手段と捉える点にあります。自身のキャリアの方向性によって、取得すべき資格の優先順位は異なるからです。
業務内容やキャリアプランとの関連性が薄い資格を選んでしまうと、実務で全く活かせないという事態に陥りかねません。資格によっては定期的な更新が必要なものもあり、維持コストや継続的な学習も考慮に入れるべきでしょう。
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まとめ
本記事では、情シスの多岐にわたる業務内容をカテゴリに分けて、おすすめのIT資格を解説しました。現在の担当業務や将来のキャリアパスと照らし合わせ、資格を見つける参考にしてください。
忘れてはならないのは、資格はあくまで知識やスキルを客観的に証明するための有効な手段であり、取得自体が目的ではないという点です。資格取得の過程で得た体系的な知識やノウハウを、日々の実務にどう活かし、企業の課題解決や成長に貢献していくかという視点を忘れないようにしましょう。
情シス部門に求められる役割はますます重要かつ高度になっています。計画的な資格取得を通じて専門性を高め、変化の時代に不可欠な人材へと成長するために、新たな一歩を踏み出しましょう。