「社内SEとしてキャリアアップしたい」と考えたとき、周囲と差をつける武器となるのが「ポートフォリオ」です。
社内SEとしての経験が浅い方は「自分にはアピールできる実績がない」と感じているかもしれません。しかし、キャリアアップに役立つポートフォリオは、自分を知ってもらうための重要なツールです。
「高度なスキルや経験を書かなければ」などと身構える必要はありません。現在の自分のスキルや志向が伝われば、十分にポートフォリオとして機能します。
今回は、社内SEのキャリアアップに役立つポートフォリオの作り方をわかりやすくご紹介します。
ポートフォリオとは?
ポートフォリオとは、これまでにITエンジニアとしてこれまで携わったプロジェクトや業務の成果物をまとめたものです。社内SEのポートフォリオでは、一般的に以下の4つの要素があります。
プロジェクト概要 | 参加したプロジェクトの目的や背景、チーム構成など |
役割と貢献 | 自分が担当した役割や具体的な貢献内容 |
技術スキル | プロジェクトで使用した技術やツール |
成果物 | 具体的なアウトプット(コードサンプル、デザイン、レポートなど) |
ポートフォリオは、履歴書や職務経歴書では伝えきれない詳細な情報を提供できるので、技術職やクリエイティブ職などスキルが重視される職種には効果的です。また、職務経歴書などに書いた内容を裏付ける証拠としても活用できます。
社内SEとしての経験が浅い方や未経験の方は、企業での開発プロジェクトに参加した経験を記載することが難しいでしょう。そのため、自分で作成したプログラムをWeb上に公開し、ポートフォリオにそのリンクを張ることがおすすめです。
採用担当者はポートフォリオに張られたリンクをたどって、コードサンプルなどを容易に動作確認できるので非常に便利です。
▼ポートフォリオの具体例が知りたい方はこちら
社内SEがポートフォリオを作成すべき理由
Webエンジニアの中途採用担当において、面接の他に候補者のスキルや経験、人となりを知る方法が「書類」です。履歴書や職務経歴書では測りきれない、アウトプットの参考となるのがポートフォリオといえます。
ここでは、社内SEとしてキャリアアップを目指す際にポートフォリオを作成すべき理由を、以下の4つに分けて詳しくご紹介します。
- スキルの証明
- キャリアアップのための強力なツール
- 継続的な成長の証明
- 社内コミュニケーションの促進
スキルの証明
出典:厚生労働省 IT・デジタル人材の労働市場に関する 研究調査事業
社内SEとしてキャリアアップを目指すには、ポートフォリオなどを使ってスキルや経験を具体的に証明することが重要です。
厚生労働省によるIT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業の調査報告書では、IT・デジタル企業がIT・デジタル人材を中途採用するうえで重視していることは、従業員規模にかかわらず「ITスキルのレベル」が50%前後と約半数を占めていました。
そのため、ポートフォリオなどを通して社内SEとしてのスキルをアピールすることが重要です。社内SEのポートフォリオでスキルを証明するためには、以下の3つの情報を書くと良いでしょう。
- 得意なプログラミング言語とそのスキル
- 独力でどこまで設計開発を進められるか
- コードの見やすさや操作性の工夫
職務経歴書にプログラミングの言語名だけ記載されていても、どの程度まで対応できるか採用者は把握できません。しかしポートフォリオがあれば、企業は応募者がどのようなスキルをもっていてどこまで対応できるかという情報を知ることができます。
そのため、ポートフォリオの内容が充実していれば、社内SEの書類選考に通過する可能性を高められるのです。
キャリアアップのための強力なツール
ポートフォリオは、社内SEとしてキャリアアップするための強力なツールになります。
まず、社内SEとして他社への転職を考える場合、履歴書や職務経歴書だけでは伝えきれない前職での具体的な実績や経験をアピールすることが大切です。ポートフォリオは、採用担当者が応募者の実績や経験を具体的に評価するための重要な資料となり、選考を有利に進めるための強力なツールになります。
また、フリーランスの社内SEとして活動する際にもポートフォリオは欠かせません。クライアントに対して、自分のスキルや過去のプロジェクト経験を示すためにもポートフォリオを活用できます。
具体的な成功事例を記載することでクライアントからの信頼を得やすくなり、案件獲得のチャンスも広がります。
このように、ポートフォリオは社内SEのキャリアアップのために非常に有効なツールであり、将来のキャリアパスを切り拓くためにも必須アイテムとなるでしょう。
継続的な成長の証明
社内SEのポートフォリオは、定期的に情報を更新することで自身の成長やスキルアップを具体的に証明できます。
ポートフォリオを作成・更新する過程で自身のスキルや経験を振り返り、自己評価を行うことができます。すると、これまでの成果を確認しつつ、社内SEとしての将来のキャリア目標や最新技術の学習計画を明確にすることができます。
また、上司や同僚に自身の仕事のフィードバックを求めることで、社内SEとしての強みや改善点を把握できます。フィードバックをもとにポートフォリオを更新することで、新たな視点から社内SEとしての自己成長を確認でき、社内での信頼も高めることができるでしょう。
このように、社内SEのポートフォリオを作成しておくと自己成長を促進するとともに、転職時にその成長を証明することもできます。
社内コミュニケーションの促進
社内SEのポートフォリオは、ほかの部門やチームメンバーと円滑なコミュニケーションを図るためのツールとしても使えます。
自身が取り組んでいるプロジェクトやその成果を、ポートフォリオを活用してほかの部門やチームメンバーに共有すると、プログラミングなどお互いのITスキルを把握でき協力関係を築きやすくなります。すると、社内メンバーへの業務の割り当てがスムーズになり、部門間の連携が強化されることで業務の効率化にもつながります。
また、ポートフォリオに記載された実績やノウハウの具体的な事例が共有できると、社内全体の技術力が向上し、チーム全体の生産性も向上するでしょう。
このように、社内SEのポートフォリオはチームメンバーとのコミュニケーションを促進し、キャリアアップキャリアアップにも役立つ重要なツールです。
採用担当者が見るポイント
社内SEが転職する際、採用担当者はどのようなポイントを見ているのでしょうか。結論としては、以下の3つが重要なポイントです。
- 技術スキルのレベルや経験の有無
- 問題解決能力
- コミュニケーション能力
ポートフォリオは自身の実績を示すアウトプットがあるだけでも価値がありますが、その評価ポイントは企業や採用担当者によって異なります。社内SEは技術職のため、基本的にはスキルが重視されますが、企業によっては説明力や文章から得られる印象など、スキル以外の部分を見ていることもあります。
ここでは、社内SEなどIT系の採用担当者がどのようなポイントを重視しているかを具体的にご紹介します。
技術スキルのレベルや経験の有無
社内SEの転職時や案件獲得時に、採用者は技術スキルのレベルや経験の有無を重視しています。
そのため、ポートフォリオではプログラミング言語や使えるツールについて、職務経歴書よりもさらに具体的に示すことが大切です。
また、前職での実績といった経験もアピールポイントになるので、自分のスキルを活用した実務経験をポートフォリオなどで説明できると、選考の合格率がさらに高まるでしょう。
問題解決能力
中途採用において、優秀な人材と判断されるポイントとしては、問題解決能力を挙げる採用担当者は非常に多くいます。問題解決能力は履歴書や職務経歴書では伝わりにくいので、社内SEとしてのポートフォリオを作成すると良いでしょう。
たとえば、これまで参加したプロジェクトにあった問題を、自分の得意なスキルを活用して解決した経験など、社内SEの実務を通した事例を記載しましょう。問題に対してどのようなアプローチをとり、どんな過程を経て解決していったのか、採用担当者がイメージできるよう、経緯に沿って記載することをおすすめします。
コミュニケーション能力
社内SEの転職や案件獲得では、コミュニケーション能力も大切です。
コミュニケーション能力は履歴書や職務経歴書では伝わりにくいものの、ポートフォリオではアピールできます。実績やスキルの内容だけでなく、その説明方法や構成からコミュニケーション能力をうかがい知ることができるからです。
論理的かつわかりやすく説明できているかは、採用担当者が特に重視するポイントです。実際に、社内SEとして円滑に業務を進めるためには、顧客や社員同士、取引先とのスムーズなコミュニケーションが必要となります。
そのため、社内SEの転職活動や案件獲得では、ただポートフォリオを作成するだけでなく、いかにわかりやすく効果的に伝えるかが重要です。チームメンバーとの実務経験などを記載して、コミュニケーション能力を証明できるポートフォリオを作成しましょう。
▼ポートフォリオ以外に採用担当者が見ているポイントはこちら
社内SEが活用できるポートフォリオの作成手順
「ポートフォリオを作る必要があるのは理解したけれど、具体的にどう作れば良いのか?」と思っている方も多いでしょう。ここからは、社内SEとしてのスキルや経験を活かしつつ、採用担当者の目にとまるポートフォリオの作成方法について詳しく解説します。
社内SEのポートフォリオは、主に以下の3ステップで作成します。
- 目的とターゲットの設定
- 情報収集と整理
- デザインとレイアウト
目的とターゲットの設定
社内SEのポートフォリオを作成するときは、目的とターゲットを明確に設定しましょう。社内SEの転職では、自身のスキルや実績をアピールすることがポートフォリオの目的となります。
社内SEとしてキャリアアップを目指す場合は、ポートフォリオは上司やメンバーに対して自分の能力を示すためのツールとして使えます。また、転職活動の際には、採用担当者に自分のスキルや経験をアピールする場合にも、目的に応じて必要事項を追加できます。
社内SEのポートフォリオでは、ターゲットは採用担当者や上司など経営陣となります。採用担当者がターゲットの場合はスキルや問題解決能力が重視され、上司や経営陣がターゲットの場合はリーダーシップや業務改善の実績が重視されるでしょう。
目的とターゲットを明確に設定することで記載内容や構成がより具体的になり、採用者の目にとまるポートフォリオになるでしょう。
情報収集と整理
次に、社内SEのポートフォリオの作成では過去のプロジェクトや実績を振り返り、必要な情報を収集・整理することが大切です。
社内SEのポートフォリオに必要な情報は、主に以下の4つです。
- 参加したプロジェクトの目的や期間
- 使用した技術
- チーム構成をまとめたプロジェクトの概要
- 自分の具体的な役割や貢献内容
特に、問題を解決した方法や得られた成果を具体的に示すことで、採用担当者により強い印象を与えられるでしょう。
また、活用したスキルやツールをリスト化し、成果物になるシステムやアプリケーションの概要やコードサンプル、設計図を添付しておくことで視覚的にもアピールできます。
これらの情報をプロジェクトごとに整理して配置しておくことで、さらにわかりやすく伝えられます。テキストだけでなく図表やグラフも活用すると、より採用者の印象に残りやすくなるでしょう。
デザインとレイアウト
さいごに、社内SEのポートフォリオのデザインとレイアウトを決めます。デザインとレイアウトは、ポートフォリオの見やすさに大きく影響するので重要なステップです。
ポートフォリオのデザインの基本は、一貫性とシンプルさです。フォントやカラー、レイアウトに一貫性をもたせることで、統一感のあるリッチな印象を与えられます。情報量が多すぎると読み手の記憶に残りづらくなるので、重要なポイントを際立たせるようにシンプルで分かりやすいデザインを心がけましょう。
レイアウトは、視覚的な魅力を引き立たせるのに重要です。成果物やプロジェクトのスクリーンショット画像などを活用すると、テキストよりも見た目のインパクトがあります。
構成では見出しや小見出しを配置し、段落ごとに情報を分けることで読みやすくなります。さらに、適度な余白があると全体の見た目が良くなり、読み手にとって負担の少ない構成になります。
社内SEのポートフォリオでよくあるミスと改善方法
社内SEのキャリアアップでは、ポートフォリオの作成はとても有効です。しかし、どんなに時間をかけて作成しても、そのポートフォリオが自分の評価を下げてしまう場合があります。
ここでは、社内SEのポートフォリオでよくあるミスと、その改善方法について解説します。これからポートフォリオを作成する方や、すでに作成した方はより良いポートフォリオにするためにぜひ参考にしてください。
社内SEのポートフォリオでよくあるミスは、以下の3つです。
- プロジェクトの目的や背景が不足している
- 具体的な成果物や成果について書かれていない
- 専門用語が使われ理解しにくい内容になっている
見やすくシンプルに作成しつつ、職務経歴書とは異なるアプローチができるように改善していきましょう。
プロジェクトの目的や背景が不足している
社内SEのポートフォリオでよくあるミスの1つ目は、プロジェクトの目的や背景が不足していることです。
社内SEとしてポートフォリオを作成するとき、技術的な側面に焦点を当てすぎて、プロジェクトの目的や背景についての説明が不足しているケースがあります。この場合、プロジェクトの概要や成果を正しく伝えられず、採用担当者や上司から十分な評価を得られません。
改善方法としては、最初にプロジェクト概要をくわしく書き、プロジェクトの目的や背景、達成したいゴールについて記載しましょう。
次に、技術的な成果だけでなく、そのプロジェクトが組織にどのような影響を与えたかを強調しましょう。成功事例として、業務効率化やコスト削減などの具体的な数値を書くと、採用者や上司により効果的に伝わりやすくなります。
具体的な成果物や成果について書かれていない
社内SEのポートフォリオでよくあるミスの2つ目は、具体的な成果について書かれていないことです。
プロジェクトの詳細は述べられているものの、自分が出した成果や具体的な成果物が不足していると、自分の貢献度が十分に伝わらずに適切な評価を得ることが難しくなります。
改善方法としては、これまで参加したプロジェクトで作成したドキュメントやコードサンプルなど、具体的な成果物をポートフォリオに記載することが重要です。また、コードサンプルなどはポートフォリオにリンクを張ることで、読み手が動作確認できるようにしておくと実践的にアピールできます。
さらに、上司やチームメンバーからの評価、顧客からのフィードバックも掲載すると、成果物の品質や効果を証明することにもつながるでしょう。
専門用語が多く理解しにくい内容になっている
社内SEのポートフォリオでよくあるミスの3つ目は、専門用語が使われ理解しにくい内容なっていることです。
技術的な専門用語や仕様を詳細に記載しすぎて、一般的な読者や非技術者にとってほとんど理解できない内容になってしまうことがあります。すると、採用担当者や経営陣にプロジェクトの価値が正しく伝わりません。
改善方法としては、ポートフォリオのターゲットを技術者だけでなく非技術者にも設定し、専門用語が必要ない程度の解説に抑え、簡潔で読みやすい説明を心がけましょう。
プロジェクトの目的や成果の概要をメインに記載し、補足程度に技術的な説明を書くと非技術者でもわかりやすくなります。また、表や図、画像など視覚的な情報を増やすことで、専門的な内容でも伝わりやすくなるでしょう。
社内SEのポートフォリオは定期的な更新とメンテナンスを行おう
社内SEのポートフォリオは一度作成して終わりではなく、定期的な更新とメンテナンスを行うことが重要です。常に最新の情報を反映させることで、社内SEのキャリアアップにより効果的です。
過去に受けた古い案件やプロジェクトの記録は詳しい内容を忘れてしまうことがあるので、月に1回程度でポートフォリオを見直す時間を設けると良いでしょう。
また、他者からのフィードバックも非常に役立ちます。信頼できるチームメンバーや上司にポートフォリオを見てもらい、改善点や感想を聞くことで客観的な視点を得られます。
さらに、業界の専門家やメンターからの意見を取り入れると、さらに質の高い改善ができます。転職活動中であれば、面接中にc採用担当者からのフィードバックを活用し、次の応募に向けてポートフォリオを改善することもできます。
定期的な更新とメンテナンスを繰り返して、社内SEのキャリアアップに役立つポートフォリオを作り上げましょう。
「社内SEとして転職したい」と考えているなら、求人を豊富に持っている転職エージェントとともに進めるのがおすすめです。社内SE転職ナビは5,000件以上のIT求人を公開する転職支援サイト・転職エージェントサービスです。非公開求人も多く保有しているので、他にない魅力的な企業に出会えるでしょう。
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まとめ
本記事では、社内SEのキャリアアップに役立つポートフォリオの作り方について詳しく解説しました。
ポートフォリオは自身のスキルや実績を効果的にアピールするための重要なツールであり、履歴書や職務経歴書では伝えきれない情報を伝えられます。
ポートフォリオを作成する際は、目的とターゲットを明確にし、過去のプロジェクトや実績を整理・収集してわかりやすく構成すると良いでしょう。また、デザインとレイアウトにも注意を払い、一貫性と視覚的な魅力を意識することで、統一感のあるリッチな印象を与えられます。
そして、ポートフォリオは一度作成して終わりではなく、定期的に更新し、他者からのフィードバックを活用することで、常に最新情報を維持することが重要です。今回の記事を参考として、将来的にも役立つポートフォリオを作成しましょう。