サーバーの保守・運用とは、システムが安定して稼働し続けるためのメンテナンスを行う業務です。そのため問題が発生した際には、迅速で正確な対応が求められます。一方でサーバー運用は日常的なシステムの監視や管理を行い、最適なパフォーマンスを維持するのが主な業務です。
この記事では、サーバー保守と運用の違いに加えて、それぞれに求められるスキルや将来性についても詳しく解説します。サーバーの保守・運用に興味のある方は、是非参考にしてください。
サーバー保守・運用とは?
サーバー保守・運用とひと言で言ってもなかなか概要は伝わらないでしょう。
ここでは、以下4つの視点に絞ってサーバー保守と運用について、詳しく解説します。
- サーバーの種類
- サーバー保守とは?
- サーバー運用とは?
- 保守と運用の違い
サーバーの種類
サーバーには、用途や構成に応じて以下のような、さまざまな種類があります。
- 物理サーバー
- 仮想サーバー
- クラウドサーバー
- 専用サーバー
物理サーバーとはデータセンターやオフィス内に実際に設置されるハードウェアのサーバーのことで、高い性能やセキュリティが求められる環境で利用されるのが一般的です。
仮想サーバーとは物理サーバー上で複数の仮想マシンとして稼働し、リソースの効率的な利用が可能なサーバーで、柔軟性が求められるシステムに適しています。
クラウドサーバーとはインターネット経由でアクセス可能なサーバーのことで、スケーラビリティやコスト効率の点で優れているのが特徴です。
アプリケーションサーバーやデータベースサーバーといった専用サーバーは、それぞれ特定の機能を提供します。
このようにサーバーの種類は多岐にわたり、適切なサーバーの選択はシステムの安定性と効率性を左右する重要な要素となります。
サーバー保守とは?
サーバー保守とは、サーバーシステムが常に安定して稼働するように、日常的に行われるメンテナンス活動のことです。具体的にはハードウェアのチェックやソフトウェアのアップデート、セキュリティパッチの適用、バックアップの確認などが含まれます。
サーバー保守の目的は、システム障害やデータ損失のリスクを最小限に抑えることです。また予防保守として潜在的な問題を事前に特定し、トラブルが発生する前に対策を講じることも重要な役割です。
これによりサーバーのダウンタイムを減らし、業務の継続性を確保することが可能になります。
サーバー運用とは?
サーバー運用とは、サーバーシステムが常に最適なパフォーマンスを発揮し、安定して稼働するように管理・監視する業務のことです。具体的な業務内容にはシステムのパフォーマンス監視やリソースの最適化、ユーザーアクセスの管理、定期的なバックアップの実施やセキュリティ対策の適用などが含まれます。
サーバー運用の障害発生時の迅速な対応や復旧作業は、システムの可用性と信頼性を維持するために特に重要です。
またサーバー運用の業務には障害を未然に防ぐための予防措置や、運用効率を高めるための自動化ツールの導入なども含まれています。このようにサーバー運用は、日常業務の円滑な進行を支える重要な役割を担っているのです。
保守と運用の違い
サーバー保守と運用の違いは、その目的と役割にあります。
保守とは、サーバーが常に安定して稼働するための予防的なメンテナンスを指します。一方で、運用は日々のサーバーの動作を監視し、リソースの最適化やトラブルシューティングを行う業務を指します。
保守が予防的な作業であるのに対し、運用は日常的な管理と問題対応に重点を置いているのが主な違いです。これら二つの役割を組み合わせることで、サーバーの安定性と効率性を維持し、業務の円滑な運営を支えられます。
サーバー保守の仕事内容
ここからは、以下3つのポイントに分けてサーバー保守の仕事内容や必要スキルなどを紹介します。
- 対応範囲と内容
- 年収相場
- 必要なスキル
サーバー保守の対応範囲と業務内容
サーバー保守の対応範囲は、サーバーの安定稼働を維持するために必要な作業全般です。たとえば、ディスクやメモリの状態を定期的に確認し、故障の兆候があれば早めに交換します。ディスクの寿命はおおよそ2~3年で、年に数回チェックが必要です。
また、毎月のセキュリティアップデートはスケジュールに沿って実施します。例えば、毎月第2水曜日にアップデートを行い、事前にバックアップを取った上でシステムの動作確認をする等、定期的にアップデートを実施する仕組みを作ることが重要です。
さらに、障害が発生した際には、迅速に原因を特定して対応します。例えばECサイトのセール期間中にアクセスが急増し、夜間にデータベースの負荷が限界を超えたことが原因でサーバーがダウンする、金融業界では夜間のバッチ処理中にサーバーがメモリ不足でダウンする等の障害が考えられます。スピーディな復旧に取り組む他、障害発生後には再発防止策を講じて次に備えることが重要です。
こうした作業を通じて、サーバーの安定運用を保つのがサーバー保守の役割です。
サーバー保守の年収相場
サーバー保守・運用の年収相場は、経験やスキル、企業規模により異なりますが、一般的には400万円から600万円程度です。経験が浅い場合、300万円前後の年収からスタートすることが多く、経験を積むことで上昇します。特にサーバーの設計や構築など高度なスキルを持つ保守・運用エンジニアは、年収700万円以上も可能です。
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必要なスキル
サーバー保守・運用の仕事にはサーバーやネットワーク、データベース、セキュリティといった各分野の深い知識が不可欠です。加えて、インフラ部分に関する知識も求められます。具体的には障害が発生した際に問題がプログラムにあるのか、サーバーやネットワーク機器にあるのかを迅速に見極める能力です。
さらに、正確な作業能力も重要です。保守・運用の作業はシステムが稼働中でも行われることがあるため、ささいなミスでも大きな障害につながる可能性があります。そのため、作業手順を厳密に守り、ミスなく作業を進めることが必要です。
これらのスキルを持つことで、サーバー保守・運用の仕事を効率的にこなせるでしょう。
サーバー運用の仕事内容
ここからは、以下4つのポイントに分けてサーバー運用の仕事内容や必要スキルなどを紹介します。
- 対応範囲と業務内容
- 年収相場
- 必要なスキル
対応範囲と業務内容
サーバー運用の対応範囲には、サーバーが安定して稼働し続けるための様々な業務が含まれます。主に、リソース・セキュリティ・ユーザー・データの4点において管理業務が発生します。
まず、リソース管理では、CPU使用率やメモリ消費量、ディスク容量を定期的に監視し、サーバーが過負荷に陥らないように調整します。例えば、アクセスが急増する期間には負荷分散を行い、サーバーのパフォーマンスを維持します。
セキュリティ管理は、外部からの脅威に対してサーバーを守るために行われます。サーバー設定の適正化、セキュリティパッチの適用、ファイアウォールの設定などが含まれます。これにより、不正アクセスやウイルス攻撃からサーバーを守り、情報漏洩のリスクを減らします。
ユーザー管理では、システムを利用するユーザーのアクセス権限を適切に管理します。特に、退職した社員のアカウントを放置することはセキュリティリスクを高めるため、定期的にアカウントの整理を行い、不要なアカウントは削除します。
データ管理では、サーバー上に保存されたデータのバックアップや復元を行います。重要なデータに対しては、暗号化や定期的なバックアップが必須です。バックアップを確実に行い、障害時に迅速にデータを復旧できるよう準備します。
加えて、障害対応も重要な業務の一つです。サーバーの障害の際には速やかに原因を特定・対応し、サービスの停止時間を最小限に抑えます。また、再発防止策を講じて同じ問題が起こらないよう対策を取ります。
年収相場
サーバー運用の年収相場は、サーバー保守と同列に語られることが多く、約400万円から800万円程度が一般的となっています。社内SE転職ナビの「サーバー保守/運用(インフラエンジニア)」の求人では、最低年収の平均が493万円、最高年収の平均が821万円です。(2024年9月時点)
サーバー運用の業務の本質は「サーバーが安定的に運用されること」のため、サーバー周りの業務に幅広く対応できるエンジニアは仕事を任せてもらえるチャンスが多くなるでしょう。経験を積んでいくと、サーバー運用チームのリーダーを任されたり、ベンダーのコントロールを任されたりすることもあります。
必要なスキル
サーバー運用の仕事において必要なスキルは、広範な技術知識と実践的な能力が求められます。まず、サーバーを適切に運用するためには、ネットワークスキルが不可欠です。TCP/IPやDHCP、LAN/WANの仕組みを理解し、ネットワークの問題を迅速に解決できる能力が求められます。また、インフラエンジニアの兼務も多いため、ネットワーク全般にわたる知識が必要です。
次に、Linuxのスキルも重要です。多くのサーバーはLinux上で動作しており、コマンド操作やミドルウェアの設定が求められます。特に、システムの再起動やログの解析といった日常的なタスクを効率的にこなすためには、Linuxコマンドを自在に扱えることが求められます。
セキュリティの知識も欠かせません。サーバーには機密性の高いデータが保管されるため、セキュリティ対策を怠ると大きなリスクを抱えることになります。セキュリティパッチの適用やファイアウォールの設定、さらには脆弱性診断など、セキュリティに関する幅広い知識が必要です。
サーバー保守・運用の効率化のための人材確保
ここからは、サーバー保守・運用の効率化において欠かせない人材確保の方法についてご紹介します。
- エンジニアを雇用する
- ツールを導入する
- アウトソーシングする
- スポットでアウトソーシングする
エンジニアを雇用する
サーバー保守・運用の効率化において、エンジニアの雇用は重要です。サーバーを安定稼働させるためには、高度なスキルと専門知識を持つエンジニアが必要になるためです。特にサーバーの設計や構築、保守に関する経験と知識を持つエンジニアの選定により、トラブル発生時の迅速な対応や日常的なメンテナンスの効率化が可能になります。
また社内でサーバー保守を担当するエンジニアを雇用するか、外部のサービスプロバイダーに委託するかの選択も重要です。社内でエンジニアを雇用すれば、内製によりノウハウの蓄積が可能になります。一方で外部委託はコストの抑制やリソースの効率的な活用に寄与しますが、サービス品質や対応速度など、委託先のパフォーマンスに依存する面もあります。
ツールを導入する
サーバー保守・運用を効率化する際は、ツールの導入が有効です。特にサーバー管理ツールや監視ツールの導入により、日常の運用監視や障害対応が自動化され、人的リソースの負担を軽減できます。またツールによっては、複数のサーバーやシステムの一元管理が可能であるため、運用の統合も図れます。
例えばサーバー監視ツールの利用により、トラフィックの急増やネットワークの遅延をリアルタイムで検出し、問題が発生する前に予防策を講じることが可能です。さらにクラウドベースのサーバー管理ツールの導入により、物理的なサーバー管理の手間を減らし、柔軟なスケーラビリティを実現できます。
アウトソーシングする
サーバー保守・運用業務はアウトソーシングする企業も多いです。24時間365日の監視や障害対応が必要な環境では、外部の専門業者のサポートが自社従業員のワークライフバランスを守ることにつながります。
また、アウトソーシングはコスト削減においてもメリットがあります。エンジニアの雇用と育成には金額・リソースの面でコストがかさむ傾向にありますが、アウトソーシングではそうした負担を軽減できます。ただし長期的なナレッジの蓄積やチームの育成という面で、メリットは享受できません。
スポットでアウトソーシングする
サーバーに不具合が発生した際にのみ外部の専門業者に対応を依頼すれば、通常(平時)の運用中はコストを抑えることが可能です。サーバーが安定稼働している間は特に有効で、予算に制限がある企業や、自社内に専任のエンジニアを持たない企業にとっては選択肢に入ってくるでしょう。
しかし、日常的にサーバー運用・保守業務を行っていないことから、トラブルの度に状況を一から説明しなければならない、スピーディな問題解決が難しい等のデメリットもあります。
サーバー保守・運用エンジニアの将来性
ここからは、サーバー保守・運用のエンジニアの将来性について、需要やキャリアパスも含めて解説します。
需要・将来性
サーバー保守・運用に携わるエンジニアの需要と将来性は、どちらも明るいといえます。クラウドやAIの普及により、ITインフラの重要性が増す中で、サーバーエンジニアの役割はますます重要になっているためです。サーバーエンジニアにはオンプレミスのサーバーだけでなく、クラウド技術にも対応するスキルが求められており、これがエンジニアの市場価値を高める要因となっています。
またセキュリティの知識も欠かせない要素であり、サイバー攻撃への対策を講じる能力は、エンジニアとしての価値をさらに高めます。
サーバー保守・運用に携わるITエンジニアとしての将来性を確保するには、クラウドやAI、セキュリティといった市場に求められる技術を身につけることが重要です。
キャリアパス
サーバー保守・運用のエンジニアのキャリアパスには、いくつかのステップがあります。最初の段階では、システムの運用や保守に携わりながら実務経験を積むことが一般的です。ここで得た経験とスキルを基に、次のステップとして専門性を高めたり、別の分野へ転向したりすることが可能です。
例えばサーバーエンジニアからのキャリアパスとして、ネットワークエンジニアやデータベースエンジニアへの転身が考えられます。より広範なインフラ管理やクラウド環境の運用に関わるクラウドエンジニアとしてのキャリアを目指すことも可能です。
マネジメントスキルを身につけることで、プロジェクトマネージャーやチームリーダーとしてのキャリアアップも視野に入れることができます。特にクラウド技術やセキュリティに関する専門知識を深めることで、IT業界内での市場価値がさらに高まるでしょう。
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まとめ
この記事では、サーバー保守・運用の基本的な役割と必要なスキル、将来性などを解説しました。
サーバー保守・運用は、企業のITインフラを安定して稼働させるために欠かせない仕事です。日常的なシステム監視から障害対応、セキュリティ対策まで、幅広いスキルが求められます。特にクラウドの普及やセキュリティの重要性が増す中で、これらの業務を担うエンジニアの需要は高まっているため、将来的にも安定したキャリアを築けるでしょう。
またサーバー保守・運用はキャリアの選択肢として、社内SEを目指すことも可能です。この記事を読んで、サーバー保守・運用の仕事や社内SEの仕事に興味を持った方は、ぜひ『社内SE転職ナビ』に会員登録してどのような仕事があるか、探してみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人:前嶋 翠(まえじま みどり)
・プロフィール
COBOLが終わろうとする時代にプログラマのキャリアをスタートし、主にJavaエンジニアとして経験を積みました。フリーランスエンジニアとして活動していたとき、リーマンショックが起こったことをきっかけに家庭に入りました。出産を経て在宅でできる仕事として、ライターに。ITエンジニア経験のあるライターとして、IT業界のあれこれを皆さまにわかりやすくお伝えしていきます。