データサイエンティストの仕事は、ビジネスの意思決定を支援するためにデータの収集、分析を行う専門職です。本記事では、データサイエンティストの役割や仕事内容・メリットについて詳しく解説します。
データサイエンティストとは?役割は?
データサイエンティストは、データから価値を引き出し、企業の戦略立案や問題解決をサポートする仕事です。企業にとって意思決定に直接関わる重要な役割を担っています。
データサイエンティストはその役割を果たすために、企業が保有する膨大なデータを解析し、有益な解決策を提供することで、ビジネスの成長や効率化に貢献します。
ほかの職種と異なり、データの分析だけでなくビジネス課題の解決を検討するという、非常にやりがいのある仕事です。
需要と将来性
ISCの調査によると、日本のデータサイエンティストは、需要の方が高いという結果が出ました。
また、デジタル化が進み企業内でも情報資産の保護が重要視されています。会社の資産をサイバー攻撃などから守るためにも、データサイエンティストは今後ますます必要とされる仕事と言えます。
さらに、ビッグデータの活用やAI技術・機械学習の技術進歩なども昨今話題となっており、これらを活用できるデータサイエンティストの需要は高まるばかりです。これらの技術は業界を問わずに求められるため、どの企業からも必要とされるでしょう。
上記の流れは今後もしばらく続くと考えられますので、データサイエンティストは将来性もある仕事といって良いでしょう。
データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの仕事内容は多岐にわたります。おもな業務は以下のとおりです。
- 戦略立案
- データ収集
- データ分析
- レポーティング・提案
戦略立案
まずデータサイエンティストは、ビジネスの目標や課題に基づいて、データを活用した戦略を立案します。
具体的に説明すると、今抱えているビジネスの課題を明確にし、さらにその課題を解決するために必要なデータを明確にします。ビジネスの課題を明確にしないことには、膨大なデータからどのデータをかつすべきか定まらないため、この工程は非常に重要です。
また、この戦略立案の段階ではデータサイエンティスト以外にも各所関係者と話し合いを重ねて調査の目的をすり合わせしなくてはならないため、コミュニケーション能力も求められる仕事です。
データ収集
次にデータ収集です。データサイエンティストは、企業内外のデータソースから必要なデータを収集します。また、必要なデータが見つからない場合は消費者などにアンケート調査を実施し、データを収集する仕事も行います。
次の作業は、分析しやすい形にするためのデータの前処理です。たとえば外れ値の処理や文字データの扱いを決める作業はこれに当てはまります。
データ分析
データ分析では、これまで収集したデータを用いてデータを可視化したり統計分析を行います。また、機械学習を使って予測モデルを構築することもあります。
データ分析では統計分析や機械学習などの深い知識が求められるでしょう。ただ、企業によっては機械学習のエンジニアと協力してデータ分析を行うこともあるため、データサイエンティスト1人で全ての作業を担当しない場合もあります。
レポーティング・提案
データ分析の結果をレポートとしてまとめ、関係者に報告します。この報告で重要なのは、「データの結果」ですが、それ以上に「課題解決につながる知見や提案」です。
なぜなら、経営陣はデータの結果というよりも、ビジネスの課題解決の糸口を探しているからです。問題解決につながるような有効な提案をできるかどうかは、非常に重要視されるでしょう。
上記の視点を踏まえて、データサイエンティストは分かりやすく可視化されたレポートを作成し、データに基づいた提案を行います。
データサイエンティストと近しい職種との違い
データサイエンティストは、データの収集・分析・解釈を通じてビジネスに有益なインサイトを提供する専門職ですが、同様の分野にデータアナリスト・データエンジニア・機械学習エンジニアといった職種も存在します。それぞれの違いを詳しく解説します。
- データアナリストとの違い
- データエンジニアとの違い
- 機械学習エンジニアとの違い
データアナリストとの違い
データアナリストは、おもに既存のデータやツールを使用して現状分析やレポーティングを行うのが中心です。仕事内容としてはデータを集計し、統計的手法を用いて傾向やパターンを分析するのが一般的です。
一方で、データサイエンティストはデータアナリストの役割に加えて、データの前処理やデータモデリング・予測分析・機械学習アルゴリズムの実装などを担当します。そのため、データアナリストと比較するとより高度な分析や技術的な作業を行います。
データエンジニアとの違い
データエンジニアは、データの収集・保存・処理に必要なインフラを構築する仕事です。そのため、データ分析ができるように、データベースの設計やデータフローの最適化などを担当します。
一方、データサイエンティストは、データエンジニアが提供するデータ基盤を利用して分析を行うため、どちらの仕事も必要不可欠です。
機械学習エンジニアとの違い
機械学習エンジニアは、機械学習アルゴリズムの開発・実装・最適化に特化した職種です。彼らはモデルのトレーニング・パラメータの調整・モデルの評価・デプロイを行い、実際の業務環境でモデルを運用します。
データサイエンティストも機械学習の知識を持ち、モデルの開発に関与することがあります。しかし、彼らの役割はより広範で、ビジネス課題につながる提案まで行うのが一般的です。
データサイエンティストに転職するメリット・やりがい
データサイエンティストとして働くことには、数多くのメリットとやりがいがあります。以下では、以下が具体的なポイントです。
- 上流工程の仕事を担当できる
- 働ける業界の幅が広い
- 高年収が期待できる
- 社会に影響する仕事ができる
- 転職・独立しやすい
上流工程の仕事を担当できる
データサイエンティストは、ビジネスの戦略立案や意思決定に直接関与する、上流工程の仕事を担当できます。これは、ほかのエンジニア職種にはなかなかない経験を積めるため、非常にやりがいもある仕事です。
自分の分析結果が企業の重要な意思決定に役立つため、大きな達成感を得ることができるでしょう。
データサイエンティストは提案業務といったコンサル的な仕事も含まれるため、オールラウンドに仕事ができることが求められます。データサイエンティストになりたての頃は求められるスキルの幅に苦労するかもしれませんが、1人前になる頃にはかなり多くのスキルを身につけられるようになるでしょう。
働ける業界の幅が広い
データサイエンティストは、多様な業界で必要とされる職種です。金融・医療・製造・マーケティング・IT・エネルギーなど、データを活用するあらゆる分野で活躍の場があります。
各業界で異なるデータセットや分析手法を駆使するため、ほかの業界に行くと新しい知識やスキルを学ぶ機会もあります。キャリアの幅を広げつつ、様々な分野で経験を積むことができるのもデータサイエンティストの魅力と言えるでしょう。
高年収が期待できる
データサイエンティストは、他のIT職種と比較しても高い年収が期待できます。企業にとってデータサイエンティストはビジネスの意思決定にも関わる貴重な存在のため、年収も上昇傾向にあります。
さらに成果が目に見えやすい職種であるため「昨年と比較して売り上げが◯%上がった」などの根拠を示すことで、パフォーマンスに応じた報酬も期待できるでしょう。
社会に影響する仕事ができる
データサイエンティストは、データを活用して社会的課題を解決する仕事にも携わることができます。これはどういうことかというと、たとえば医療分野では疾病予測や治療法の最適化などを行っており、データサイエンティストの仕事が社会に影響を与えることもあります。
業界にもよりますが、このように社会に影響する仕事ができるのもデータサイエンティストの特徴です。
転職・独立しやすい
データサイエンティストのスキルは汎用性が高く、1度身につけるとほかの企業でもそのスキルを活かすことができるため、転職市場でも非常に有利な立場に立てる可能性が高いです。
さらに、独立してフリーランスとして働く道も開かれています。もちろんフリーランスとして独立するためには経験をしっかり積む必要がありますが、フリーランスになると、自由な働き方を実現できるでしょう。
データサイエンティストに求められるスキル
データサイエンティストとして成功するためには、多岐にわたるスキルが求められます。それぞれのスキルを詳しく見てみましょう。
- 分析・統計に関する知識
- データ集計・可視化スキル
- プログラミングスキル
- コミュニケーションスキル
- 問題解決力
分析・統計に関する知識
データサイエンティストには、データ分析と統計に関する深い知識が必要不可欠です。確率論・回帰分析・仮説検定・時系列分析などの統計手法は理解しておきましょう。
また、統計ソフトウェアの使用経験も役立ちます。未経験から学習するのであれば、統計の基礎知識を身につけてからソフトウェアに触れることをおすすめします。
データ集計・可視化スキル
データサイエンティストは、膨大なデータを整理し、視覚的に分かりやすく表現する能力が求められます。また、データ集計にはSQLなどのデータベース言語も必要になることがあります。
また、データの可視化にはTableau、Power BI、Matplotlibなどのツールが使われることも多いです。これらのツールにも触れておくと良いでしょう。
プログラミングスキル
プログラミングスキルは、データサイエンティストにとって必須のスキルです。とくにPythonやRなどの言語は、データ分析や機械学習アルゴリズムの実装に広く使われています。
これらの言語を使いこなすことで、データの前処理など、データ分析の工程の1部を自動化できます。このような理由から、プログラミングスキルもやはり学習したほうが良いでしょう。
コミュニケーションスキル
データサイエンティストは、分析結果を経営層やほかのチームメンバーに説明し、理解してもらう必要があります。そのため、複雑なデータの結果を分かりやすく伝えるコミュニケーションスキルが重要です。
また、ビジネスのニーズを正確に把握して適切な提案をするために、優れた対話能力が求められます。コミュニケーション能力に自信がない方は、そのようなコミュニケーション能力をあげる講座を受講してみると良いかもしれません。
問題解決力
データサイエンティストは、ビジネスの課題を解決するための問題解決能力が求められます。データから洞察を得るためには、分析だけでなく、そのデータが示す根本的な問題を見極める能力が必要です。
また、データ分析の途中で上手くツールやプログラムが動かないときに、迅速に対処できるスキルも必要でしょう。
未経験でデータサイエンティストになるには
データサイエンティストとしてキャリアをスタートするためには、特定のスキルや知識を身に着けることが重要です。未経験からデータサイエンティストになりたい方はぜひこちらを参考にしてください。
勉強して必要な知識を身に着ける
データサイエンティストに必要なスキルを習得するために、まずは基本的な知識を学習するのが一般的です。
ただし、データサイエンティストは幅広い分野の勉強をしなくてはなりません。そのため、まずはそれぞれの分野の、基本的な知識を理解しましょう。
また、現在では、オンラインの学習プラットフォームが数多くあります。そのような場所ではデータサイエンスのコースも数多く公開されていますので、そのような教材を活用して基礎知識を身につけましょう。
近い職種で経験を積みキャリアチェンジを狙う
直接データサイエンティストとして仕事を得るのが難しい場合は、近い職種で経験を積んでからキャリアチェンジを狙うのもおすすめです。
たとえば、データアナリストなどはデータサイエンティストと同じようにデータ分析を行います。このように業務の一部が重複している職種を狙えば、スキルを磨きながら、データサイエンティストへのキャリアチェンジも狙えるでしょう。
また、同じ企業内で違う職種に変える選択肢も出てきますので、転職しなくてもデータサイエンティストになれる可能性が高まります。
データサイエンティストに有効な資格
データサイエンティストに有効な資格はいくつかありますが、代表的な資格をあげてみました。
- データサイエンティスト検定
- OSS-DB技術者認定試験
- 情報技術者試験
- 統計検定
- G検定・E資格
データサイエンティスト検定
データサイエンティスト検定は、日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供する資格で、データサイエンティストとしての基礎知識とスキルを証明するものです。
試験では、データサイエンスの基本概念・データ分析手法・機械学習の基礎・データ可視化などが問われます。
受験資格は設けられていませんので、これからデータサイエンティストを目指す人は、ぜひこちらの資格にチャレンジしてみましょう。
OSS-DB技術者認定試験
OSS-DB技術者認定試験は、オープンソースデータベース(OSS-DB)に関する知識と技術を証明する資格です。データベースの基本操作や設計、運用、チューニングなどのスキルを評価します。
データベースの基本的な知識もしっかり身につきますので、興味のある方は取得を目指してみましょう。
情報技術者試験
情報技術者試験は、日本の情報処理推進機構(IPA)が実施するITスキルを評価する試験です。基本情報技術者試験や応用情報技術者試験など、多くの種類があります。
ITの基礎知識として、プログラミング・ネットワーク・データベース・セキュリティ・システム開発など幅広く問われる試験です。
参考:情報技術者試験
統計検定
統計検定は、日本統計学会が実施する統計に関する知識を評価する資格試験です。統計学の基礎から応用まで、幅広いレベルの知識を証明できます。
統計学は、データ分析の基盤となります。そのため、統計学の資格を持っているとデータサイエンティストとしての信頼性も高めることができるでしょう。
受験資格もとくにないため、未経験からの転職を検討される方は、この機会にぜひ統計検定にチャレンジしてみましょう。
参考:統計検定
G検定・E資格
G検定(ジェネラリスト検定)とE資格(エンジニア資格)は、日本ディープラーニング協会(JDLA)が提供する資格です。
G検定はディープラーニングの基礎知識が問われる資格試験です。AIの基礎知識や応用事例・倫理的な問題などが出題されます。
一方でE資格は、ディープラーニング技術を実際に実装・運用するエンジニア向けの資格。モデル構築・ハイパーパラメータチューニング・実装技術などを学びます。
AIやディープラーニングの知識とスキルを身につけ、データサイエンティストとしての専門性を高めたい方はぜひ挑戦してみましょう。
参考:G検定・E資格
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まとめ
データサイエンティストは、ビジネスの戦略立案と意思決定に、直接貢献する重要な役割を担います。高年収や多様な業界での活躍が期待できる一方で、統計・プログラミング・コミュニケーションスキルなど、多岐にわたるスキルが求められます。
未経験からでも、きちんと知識を身につけることができれば、未経験からでもデータサイエンティストを目指すことができるでしょう。