レベニューシェアとは「成果に応じて収益を分け合う」仕組みのことです。
初期費用を抑えつつ事業を成長させたい企業や、自分のスキルを正当に評価されたい人に注目されています。
本記事ではレベニューシェアの仕組みから契約書を作成するポイント、向いている・向いていない業種まで徹底解説します。

レベニューシェアとは何か
「レベニューシェア」とは、事業によって得られた売上の一部を事前に定めた割合で分配する契約形態のことです。
発注側と受注側が、リスクとリターンを共有しつつ成果に応じた報酬を得る点が特徴です。
利益ではなく売上ベースで分配されるため、業務委託や請負契約のような固定報酬と異なり、成果次第で収益が増減します。そのため、固定費を抑えたい発注側と、成果による報酬を期待する受注側双方にメリットがあります。
他の報酬形態との違い
レベニューシェア以外の報酬形態として「プロフィットシェア」「ロイヤリティ」「成果報酬(業務委託)」があげられます。
それぞれの報酬形態とレベニューシェアの違いについて解説します。
プロフィットシェア
プロフィットシェアとは、「事業全体の利益」を分配対象とする契約形態のことです。
たとえば、売上が1,000万円、経費が800万円で利益が200万円だった場合、その利益を契約割合に応じて分配します。
赤字のように利益がない場合は報酬が発生しないのが特徴です。受注側にとって報酬は不安定ですが、発注者側は経費を回収できたうえで報酬支払いの義務が生じるため、リスクが低い形といえます。
一方、レベニューシェアは「売上」そのものを基準とするため、利益が出なくても受託者に報酬が支払われる点でプロフィットシェアと異なります。
ロイヤルティ
ロイヤルティとは、特許権・商標権・著作権などの知的財産権を使用する対価として支払われる報酬のことです。
たとえば、書籍の著者が印税として売上の10%を受け取る場合などです。書籍の販売額1,000円に対して100円を印税として報酬を受け取るのは「ロイヤルティ」となります。
ロイヤルティはあくまで「権利使用料」であり、成果報酬型ではないため、売上を事業パートナー間で分配するレベニューシェアとは考え方が異なります。
つまり契約の目的や何を対象としてしているかという点が違うのです。
成果報酬(業務委託)
成果報酬型の業務委託契約とは、あらかじめ定めた「成果」が達成された場合にのみ報酬が支払われる契約のことです。
たとえば、Web制作の業務委託で「指定ページの公開」が成果目標であれば、納品・公開が完了した時点で報酬が支払われます。未完成のままでは報酬は発生しません。他にもエンジニアやライターなど、成果物を納品し受領されることで報酬が支払われる場合も成果報酬に該当します。
成果報酬は売上や利益をベースにしないため、契約時に定めた成果と報酬支払いの連動性が高いのが特徴です。対してレベニューシェアでは、売上そのものに対して報酬が支払われるため、成果そのものの達成可否に関わらず報酬が発生する契約となります。
【発注者側】レベニューシェアのメリット・デメリット
レベニューシェア契約は、発注者にとっても受注者にとっても「成功を分かち合う」仕組みになります。それぞれのメリット、デメリットをきちんと押さえてから契約を行うことが大切になるため、まずは発注者側のメリット、デメリットについて解説していきます。
発注者側のメリット
発注者側のメリットとして、初期費用を抑えながら専門スキルを持つフリーランスや個人事業主を活用できる点が挙げられます。成果が出れば受注者側が報酬を得る仕組みのため、人件費を固定費化せずに外部パートナーとして組むことが可能です。
また、成果によって初めて報酬につながるため、初期投資を抑えてビジネスを始めることにもつなげられます。発注者、受注者が協力体制を敷き、「継続的な収益」を生む体制へとできれば、プロジェクト成功時には報酬が積み上がり、結果的に高単価契約となることも少なくありません。
成果を出す仕組みをお互いに作り出すことで信頼関係を築きやすく、長期的なパートナーシップ形成にもつながります。そのため中小企業やスタートアップにとっては非常に有効です。
発注者側のデメリット
成果を挙げなければ受注者へ報酬を払う必要がない反面、発注者側も成果を得られないため、投資の回収が遅れるリスクがあります。また、成果が発生したとしても収益が発生するまでに時間を要するケースもあるため、事前に収益モデルを明確にすることが大切です。
収益モデルが不十分だと継続的な支払いが発生し、利益率を圧迫してしまう可能性もあります。
受注者側とのやり取りとして、成果が見えやすいため報酬に口を出されやすくなることや契約管理の工数が増える可能性がある点は留意しておきましょう。
【受注者側】レベニューシェアのメリット
続いて受注者側のメリット、デメリットを見ていきます。レベニューシェアは受注者にとって大きなチャンスである一方、安定性に欠ける面もあります。
フリーランスや個人事業主の方はメリット、デメリットを整理しておくことで、契約時に適切な判断が可能です。
受注者側のメリット
受注者にとっては、成果が積み上がれば継続的な収益につながる点が最大のメリットです。
売上ベースで報酬が発生するため、プロジェクトが成長すれば固定報酬契約よりも高単価になる可能性があります。成果をあげればあげるほど、固定報酬契約以上の報酬を得られることになるでしょう。
さらに、発注者と収益を共有することで信頼関係を築きやすく、長期的な協業へと発展するケースも少なくありません。特にスキルや実績を持つフリーランスにとって、自分の力が正当に評価されやすい契約形態といえます。
受注者側のデメリット
デメリットは売上が立たなければ報酬はゼロとなるため、生活の安定性に欠けるリスクがあることです。加えて事業の方向性や意思決定は発注者側が担うケースがほとんどのため、意思決定に関与できず不完全燃焼でプロジェクトが終了してしまう可能性もあります。
また、契約したプロジェクトによっては収益発生までに一定の時間がかかるケースもあります。報酬が事業の収益に紐づいているため、最初の支払いがいつなのか、費用回収にどれくらいの時間がかかるのかという点を押さえておくことが大切です。
場合によっては開発費用や初期投資にかかった費用が回収できないケースがあることも留意しておきましょう。
レベニューシェアは“対等なパートナー関係”を築く仕組みでもある
レベニューシェアは単なる報酬契約ではなく、発注者と受注者が「成果を共に作り、共に分かち合う」関係を築く仕組みです。
売上に応じて報酬が決まるため、双方が責任を持って能動的に動くことがレベニューシェアでは求められます。従来の受託型や請負型では、受注者は決められた範囲の業務をこなすにとどまりがちですが、レベニューシェアでは事業の成否に当事者意識を持つ点が大きな違いです。
レベニューシェアを長期間に渡って継続していくことで、発注者と受注者は指示役と実行役という関係を超え、ビジネスを共に成長させる対等なパートナーシップへと発展していきます。
レベニューシェアの契約書を作成する際のポイント
レベニューシェア契約では、事前に「売上の定義や対象範囲」「分配比率と期間」「支払いスケジュール」「売上報告やモニタリング方法」「解約条件」を明確にすることが大切です。
これらを契約書に具体的に記載しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、双方が安心して成果に集中できる環境を整えられるためです。あわせて、守秘義務や競業避止条項など、情報流出や利害衝突を防げる契約形態になっているかも確認しておくと良いでしょう。
売上の定義と対象範囲を明確にする
「売上」と一言でいっても、税込か税抜か、返品やキャンセルが発生した場合にどう扱うか、決済手数料を差し引くのかなど、解釈の余地が残るとトラブルの原因になります。そのため、契約書には「どの範囲の売上を分配対象とするのか」を明確に記載することが大切です。
たとえば「税抜売上から返品額を控除した実際の入金ベース」といった形で具体的に定義するなどが挙げられます。
事前に売上の定義と対象の範囲を双方で確認できるように線引きしておくことで、後々の誤解や不信感を防ぐことにつながります。
分配比率と分配対象期間を設定する
レベニューシェア契約の根幹は「売上の何%を、どの期間にわたって分配するか」です。単純に固定比率を決める場合もあれば、プロジェクト初期は多めに配分し、軌道に乗ったら比率を下げるなど変動制を取り入れることもあります。
その場合は「売上100万円までは30%、以降は20%」といったように計算式を契約に明文化することが必要です。
分配対象となる期間も「リリースから2年間」など期限を設定しておくと、双方の見通しが立ちやすくなります。成果に応じてどの程度の収入になっていくのかが透明化されることになるため、契約の段階できちんと詰めておくことが大切です。
支払いスケジュールと方法を決めておく
報酬が発生する条件や支払いタイミングも、事前に細かく決めておく必要があります。たとえば「月末締め翌月末払い」や「一定金額(例:20万円)を超えた場合のみ支払い」といった具体的なルールを設けることで、支払い方法が自動化されるため実務がスムーズに進みます。
支払い方法も銀行振込やオンライン決済などお互いに確認したのちに明記し、振込手数料をどちらが負担するかも取り決めておくと安心です。
支払いに関する取り決めが曖昧だと、最も大きなトラブルにつながるため、必ず契約書に盛り込みましょう。
売上報告・モニタリングの方法を決める
レベニューシェアは「売上の透明性」がなければ、お互いに信頼して業務を行うことはできません。
反対に「売上の透明性」が担保されていれば、信頼関係の基盤になります。そのため、売上データをどのように共有するかを契約で明記することが大切です。
たとえば、Googleスプレッドシートを用いた月次レポートや、専用ダッシュボードを通じた週次共有など、具体的なツールや更新頻度を決めておきましょう。内容が更新された段階でコミュニケーションツールに通知がいく仕組みなどがあれば、より安心して業務に取り組めます。
また、数字の正確性をどう担保するかも重要です。定期的な監査や証憑確認の方法を取り入れておくことで、不信感を未然に防ぎ、長期的な協力関係を築きやすくなります。
解約・終了条件を明記する
契約期間中に必ずしも事業が順調に進むとは限りません。
売上が伸び悩む、双方の関係が悪化する、事業自体を中止せざるを得ないケースもあります。さまざまなケースを想定し、「どのような条件で契約を解約できるのか」「プロジェクトを途中終了する際の手続きはどうするのか」を契約書に事前に定めておくことが不可欠です。
たとえばプロジェクトが途中終了した場合、残り期間の支払いの有無や、制作済みの成果物の扱いも取り決めておくなどです。抜け漏れがないように契約書に明記しておくことで、想定外の状況が起きても円滑に契約を終了できます。
守秘義務や競業避止条項も検討する
レベニューシェア契約では、売上データや顧客情報といった重要な内部情報を共有します。そのため、守秘義務を契約に盛り込み、情報の外部流出を防ぐことは必須になります。
さらに、必要に応じて競業避止条項を設定することも検討し、万全な体制を整えることが大切です。たとえば「契約期間中および終了後1年間は同種サービスに関与しない」といった形などです。制約の強さは信頼関係や事業の性質に応じて調整できますが、情報保護と公平性のバランスを意識するようにしましょう。
守秘義務違反をした場合、損害賠償などの責任が生じるのはもちろんのこと、社会的信用が失墜してしまい、その後の他の会社との取引なども難しくなってしまうため、必ず遵守することが大切です。
レベニューシェアが向いている業種・向いていない業種
レベニューシェアは、ビジネスの特性によって相性の良し悪しが分かれるのも特徴です。たとえば継続収益が見込めるサービスや、初期コストを抑えたスモールスタート事業には適していますが、物販や高額な制作案件のように初期投資が大きい事業には不向きな場合も少なくありません。
本章では、レベニューシェアが向いている業種と向いていない業種、導入判断を行う際のポイントなどを解説していきます。
向いている業種(SaaS、Webサービス、サブスク、スモールスタート)
レベニューシェアが適している業種として、SaaSやWebサービス、サブスクリプション型の事業が挙げられます。
挙げた業種は毎月の利用料や広告収益など、売上が定期的に積み上がる仕組みを持っているのが特徴のため、分配対象が明確で継続的な収益分配が可能なためです。売上が途絶えるリスクも少なく、親和性の高い業種といえるでしょう。
また、スモールスタートの新規事業にもレベニューシェアは向いています。スモールスタートの新規事業であれば、初期費用を抑え、売上が出た段階で分配できるためです。
発注者はリスクを軽減でき、受注者はスキルを投じて将来的な成果を享受できます。さらに、Webマーケティング支援やアプリ開発など、成果が売上に直結しやすい領域もレベニューシェアと相性が良い代表例です。
レベニューシェアが向いていない業種
レベニューシェアは、物販ビジネスや制作物の一括請負型業務にはあまり適していません。物販の場合は在庫や仕入れといった高額の初期費用が必要になるうえ、利益率が低いため、売上から報酬を分配すると発注者側の負担が大きくなりやすいのです。
また、ホームページ制作や映像制作のように「納品した時点で成果が確定する案件」も相性が良くありません。制作の仕事は売上が継続的に発生せず、受注者が納品後の売上をコントロールできないからです。さらに、どの時点をもって納品とするか事前に合意していないと、支払いを巡ってトラブルになりやすい点も注意が必要です。
さらに、初期投資が高額で回収リスクが大きい事業では、成果が出なかったり、成果が出るまでに時間がかかったりする可能性があります。そのようなケースでは、レベニューシェアよりも固定報酬契約の方が合理的だといえます。
レベニューシェア導入を判断する2つの基準
レベニューシェアを導入するかどうかは、「継続的な収益が見込めるか」「売上を正確にトラッキングできるか」が判断の基準になります。
たとえば、サブスクリプションやWeb広告のように売上が明確な数値で把握できる事業は相性が良いですが、ブランド向上や認知施策のように売上と直結しない活動はレベニューシェアと相性が悪くなります。また、導入前には「どの売上を対象とするか」「分配の期間や比率」「報告の方法」などを定めておくことが重要です。
収益性が不透明な事業に無理に導入すると、双方に不満が残る結果となるため、契約前の見極めと準備が不可欠です。
レベニューシェアの導入事例
レベニューシェアの仕組みを理解しても、「実際にどう運用されているのか」「どの業界で成果が出ているのか」といった具体例は気になるところです。契約条件の設定方法や収益が発生するまでの期間、トラブルが起きた際の対応なども、導入を検討するうえで重要なポイントになります。
C2C Platform株式会社は、ダイレクトマッチング事業に特化したシステム開発・事業支援を展開しており、レベニューシェア型のモデルを積極的に取り入れています。どのような考え方で事業を進めているのか、同社にインタビューしました。詳しい内容は、ぜひインタビュー記事をご覧ください。

導入前に確認すべきチェックリスト
レベニューシェアを導入する前に、次の3つの観点を必ず整理しておきましょう。
1. 信頼関係の構築
レベニューシェアは単発の取引ではなく、長期的な協力関係を前提とした契約です。相手が約束を守るか、情報を透明に共有できるか、ビジョンや価値観が近いかといった点を事前に見極めることが欠かせません。
契約前の顔合わせや、小規模なプロジェクトでの試験的な協業も有効です。
2. 報酬設計の明確化
「売上」の定義(税抜・手数料控除前後など)や分配比率、支払いサイクルを具体的に取り決める必要があります。曖昧なまま契約すると、後に「想定と違う」というトラブルを招きかねません。
双方が納得できる報酬設計が、協力関係を安定させる基盤となります。
3. 解約・トラブル時の取り決め
売上が想定に届かなかった場合や、関係が悪化した際の解約条件も明記しておくことが重要です。契約解除の手順、既存顧客やデータの扱い、違約金の有無などを事前に決めておけば、万一のときも冷静に対応できます。
よくある質問(FAQ)
- Q1. レベニューシェアと成果報酬の違いは何ですか?
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成果報酬は「事前に定めた成果(例:納品物や契約数)」を達成した場合に支払われるものです。一方レベニューシェアは「売上や利益そのもの」を基準に報酬が分配されます。そのため、成果が未達でも売上が発生すれば報酬が支払われる点が異なります。
- どのような業界で使われることが多いですか?
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Webサービス、EC、アプリ開発、広告運用、コンテンツ制作など、成果が直接売上に結びつきやすい領域で導入されています。特に初期投資を抑えたいスタートアップや、リスクを分け合いたい事業パートナー間で活用されるケースが多いです。
- 契約を結ぶ際の注意点は?
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「売上の定義」「分配比率」「支払いサイクル」「解約条件」を必ず明文化しておくことです。ここが曖昧だと、後にトラブルになる可能性があります。信頼できる相手かどうかの見極めも重要です。
- 税務や会計上の扱いはどうなりますか?
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基本的には売上に連動した「収益分配」として処理されます。ただし契約内容や業務実態によって会計処理が変わる場合があるため、必ず税理士や会計士に確認することをおすすめします。
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新しい仕組みや働き方が広がるなかで、エンジニアにとってもキャリアの選択肢は多様化しています。レベニューシェアのように従来とは異なる契約形態が注目されているのと同じように、転職においても「これまでの常識」にとらわれず、自分に合った環境を見極めることが大切です。
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まとめ
レベニューシェアは成果を共に分かち合うことで発注者と受注者が対等な関係を築ける契約形態です。しかし、レベニューシェアを成功させるためには、契約書の明確化に加えて、ビジネスパートナーとの信頼関係が構築できる仕組みや目線を一致させることこそが持続的な成果を生みます。
レベニューシェアの導入を検討している場合は、契約条件を整えると同時に信頼できる相手なのかどうかをきちんと見極め、パートナーシップを築くことが可能かを判断してみてください。



