中途採用を成功に導く9つの手法と選び方。自社に合った活用戦略とは?

中途採用で「何から始めればいいか分からない」「求人を出しても応募が来ない」といった悩みはありませんか?
本記事では、主要な中途採用手法9種類を網羅し、費用・スピード・マッチ度などの観点で比較

さらに、自社に合った手法を選ぶための基準や、効果的な使い分け方、最新トレンドも解説します。採用成功につながる選択と運用のヒントをぜひご覧ください。

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この記事の目次

中途採用の採用手法とは?基本的な考え方と選定軸

中途採用は、単に「人を集めること」が目的ではなく、必要なタイミングで、必要な人材を確保するための手段です。採用手法を検討する際は、「どれが流行っているか」ではなく、自社の課題・体制・目的に合っているかを基準に選ぶ必要があります。

まずは中途採用の手法を大きく3つに分類して整理しておきましょう。

受動型:応募を「待つ」採用

求人サイトやハローワーク、広告媒体などに募集要項を出し、応募を待つ形の手法です。

掲載するだけで広く募集できるという点で間口は広いものの、集まった応募者の質や志向性はコントロールできず、母集団の選別に時間がかかることも少なくありません。特に企業認知度が低い場合は、そもそも「見られない」ことが課題になることもあります。

一方で、採用ブランドや企業サイトが充実している場合は、受動型でも良質な応募が集まりやすく、コストパフォーマンスの高い手法になります。

能動型:企業から「動く」採用

ダイレクトリクルーティングやSNSを活用したスカウト型採用がこれにあたります。特徴的なのは、企業が「会いたい」と思う候補者に、ピンポイントでアプローチできる点です。

転職意欲が高くない潜在層にアプローチできることから、ミスマッチを避けたい専門職採用やハイクラス人材の確保に適しています。

ただし、スカウトメールの作成・送付、日程調整、対応の継続には一定の社内工数が必要であり、体制が整っていないと成果につながりづらいのも事実です。

仲介型:第三者を介する採用

人材紹介会社や派遣会社など、外部のプロフェッショナルを介して人材を紹介してもらう手法です。

紹介型は「面接設定済みの即戦力人材」と会えることが魅力で、スピード感やマッチングの質を重視する採用に向いています。一方で、採用が決まった場合は年収の30~35%程度の紹介手数料が発生するため、予算面での検討も欠かせません。

また、紹介される候補者の質はエージェントの理解度に依存するため、「パートナー選び」も採用成功の一部といえます。

判断基準は「3つの視点」で考える

数ある手法の中からどれを選ぶべきかを考える際は、「どのくらい急いでいるか」「どんな人に来てほしいか」「どこまで社内で対応できるか」という3つの視点で整理すると、自社にとって最適な手法が見えてきます。

たとえば、「今すぐにでも1名欲しい」というケースでは、時間をかけて母集団を集めるよりも、紹介型でスピーディーに動くほうが適しているかもしれません。逆に、1年先の増員を見越した採用であれば、オウンドメディアやSNSで潜在層へ働きかける手法がフィットすることもあります。

また、社内に採用に関わる人材がどれほどいるかも大きな判断材料です。スカウトを送ったものの、その後の対応が追いつかないという状況では、能動型採用の強みを活かしきれません。

代表的な中途採用手法を徹底比較

中途採用の成功には、自社に合った採用手法を見極めることが不可欠です。この章では、現在主流となっている採用手法を5つのカテゴリに整理し、それぞれの特徴・コスト感・向いている採用ニーズを比較します。

まずは、採用手法を俯瞰するうえで役立つ全体像から見ていきましょう。

採用手法のカテゴリ整理

中途採用の手法は、大きく以下の5カテゴリに分類できます。

カテゴリ主な手法
公的機関ハローワーク
求人広告・掲載型求人媒体(Web)、求人サイト、紙媒体(新聞折込・求人誌)
人材紹介・仲介型人材紹介(転職エージェント)、ヘッドハンティング、派遣
ダイレクトアプローチ型ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、SNS(ソーシャルリクルート)
自社発信・イベント型オウンドメディア、ミートアップ、説明会、アルムナイ採用

それぞれの手法はターゲット層や企業規模、採用の緊急度によって向き不向きがあります。

手法費用即効性マッチ度工数(自社負荷)向いているケース
ハローワーク無料地方中小企業/採用コストを抑えたい場合
求人媒体(Web)中〜高広く募集したい/採用ブランドに強みあり
人材紹介成果報酬低〜中急募/即戦力/専門人材
ダイレクトリクルーティング月額課金○〜◎ハイクラス/ピンポイント人材が欲しい
リファラル採用低コスト社員に協力を仰げる社風
SNS(X、LinkedIn等)無料〜採用広報・認知向上も同時に狙いたい場合
オウンドメディア採用中〜高×〜△長期的な採用力強化/採用ブランディング
合同説明会・イベント系対面接点を重視/知名度を活かしたい場合
アルムナイ採用退職者ネットワークが維持されている場合

※ 費用は「初期掲載型 or 成果報酬型 or 自社運用の手間」などで大きく異なります。

例えば、「とにかく早く1名採用したい」場合は、人材紹介やリファラルが即効性・マッチ度ともに高く向いています。
一方で、「半年後に向けて継続的に母集団を作っていきたい」という場合は、オウンドメディアやSNS活用が効果を発揮します。

また、複数職種を一気に採用したいケースでは、媒体掲載型やイベント出展のほうが効率的です。

このように、「何人採りたいのか」「いつまでに採りたいのか」「どんな人材を採りたいのか」という軸によって、選ぶべき手法は大きく変わってきます。

採用手法9種の詳細解説と活用のポイント

中途採用の手法にはそれぞれ特徴と強みがあり、向いているフェーズや企業規模も異なります。ここでは、主要な採用手法について「特徴」「向いているケース」「活用時のポイント」「注意点」の観点で詳しく解説します。

人材紹介(エージェント)

人材紹介は、第三者(エージェント)が企業の要件をヒアリングし、条件に合う候補者を紹介する手法です。報酬は成果報酬型(年収の30〜35%が相場)で、内定承諾時に発生します。

人材紹介が向いているケース

  • 急募ポジションがある
  • 即戦力人材を効率的に採用したい
  • 自社採用が採用につながっていない
  • 採用にリソースを割けない

活用のポイント

  • 良いエージェントに依頼すれば、事前にマッチ度の高い候補者とだけ会える
  • 候補者との条件交渉や意向醸成も担ってくれるため、自社で採用ノウハウがなくても安心して任せられる

自社の採用状況に合わせて柔軟な対応が可能な人材紹介ですが、そのぶん事前にエージェントに採用要件を擦り合わせておくことが重要となります。定期的なコミュニケーションが必要となりますが、そのなかで面接や候補者対応の相談、市況や競合他社の情報共有等もできるため、採用ノウハウが少ない企業にもおすすめです。

また、あくまで「決まった人に対して費用が発生する」モデルのため、母集団形成や認知拡大といった目的には不向きです。紹介される候補者の質や温度感はエージェントごとに差があるため、担当者との連携や認識合わせが成果に直結します。

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ダイレクトリクルーティング(スカウト型)

ダイレクトリクルーティングとは、企業が採用媒体やデータベースを活用し、候補者に直接スカウトを送る手法です。成果報酬ではなく月額利用料制のサービスが主流です。

ダイレクトリクルーティングが向いているケース

  • ピンポイントで経験者を採用したい
  • 採用ブランディングに一定の投資ができる
  • 採用広報やスカウト文面作成のリソースがある
  • 費用を抑えて小さくスタートしたい

活用のポイント

  • 転職潜在層にアプローチできる
  • 返信率が低くなる傾向にあるため、スカウト対象や文面のPDCAを回すことが重要


ダイレクトリクルーティングでは、優秀層ほど毎日多くのスカウトを受け取ることになるため、スカウトへの返信率は高くありません。しかし文面改善や対象者の絞り込みによって改善するケースが多いため、PDCAを前提とした運用体制が求められます。また、受託型よりも企業側の“攻める姿勢”が問われます。

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求人媒体

求人広告は、媒体に情報を掲載して応募を集める“受動型”の採用手法です。

Web広告(転職サイト・専門メディアなど)と紙媒体(求人情報誌・新聞折込など)に大別されますが、基本構造は「情報を掲載し、閲覧者の応募を待つ」スタイルです。

自社の採用ブランドや求人内容が魅力的であれば、短期間で多くの応募者を集められる手段として有効です。

求人媒体が向いているケース

  • 複数名の同時募集(掲載費を分散できる)
  • 比較的広くターゲットを取りたいとき
  • 採用ブランディングがある程度できていて“見つけてもらえる”状況にある企業

活用のポイント

  • 求人票で誰に来てほしいターゲット像を明確にする
  • 露出のタイミングと期間を工夫する(求職活動が活発になる時期や週前半の更新タイミングを狙うなど)

求人広告は情報の出し方ひとつで応募の質も数も大きく変わります。テンプレート通りの原稿では埋もれやすいため、写真・タイトル・ファーストビューの設計に注力し、閲覧者の「自分ごと化」を促す工夫が重要です。

また、紙媒体については現在は一部エリア(地方・製造系など)を除き主流ではなく、Web広告との併用か、認知施策としての活用が現実的です。

リファラル採用(社員紹介)

リファラル採用とは、自社の社員から知人・友人を紹介してもらう採用手法です。あらかじめ会社の雰囲気や体制が伝わっていることが多いため、カルチャーフィット率が高いのが強み。費用がほとんどかからないのも魅力です。

リファラル採用が向いているケース

  • 社内の人間関係や信頼関係が強い
  • チームで働く文化がある
  • 採用ブランディングにコストをかけられない

活用のポイント

  • 紹介者へのインセンティブだけでなく、紹介しやすい仕組み(推薦文テンプレートなど)を整備する
  • 制度が形骸化しやすいため、定期的な進捗確認や改善を行うことが重要

社員紹介に偏りすぎると、多様性が失われたり、既存社員との結びつきで入社した人が辞めづらくなる心理的圧も生じかねません。また、社員が積極的に紹介したくなるような企業文化・職場環境の整備も不可欠です。

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アルムナイ採用(退職者再雇用)

アルムナイ採用とは、過去に自社で勤務していた社員を再び迎え入れる採用手法です。

退職者との関係性を維持し、ライフステージやキャリア環境が変わったタイミングで「再び戻ってきたい」と思えるような接点を作ることで、即戦力人材を低コストで確保できる可能性があります。

アルムナイ採用が向いているケース

  • 社員の在籍期間が長く、退職後も関係性が良好な企業
  • カルチャーや理念への共感を重視
  • 育成に時間がかかる職種(エンジニア、製造、金融など)で再現性のあるスキルを評価したいとき

活用のポイント

  • 緩いコミュニティやOB向けメルマガ等、退職者との接点を保ち続ける仕組みをつくる
  • 再入社の評価・条件を明確にして不公平感を防ぐ

アルムナイ採用は特にエンジニアのような育成に期間のかかる専門職と相性がよく、ネガティブな理由の退職でなければ復職後に即戦力となりやすいことが魅力です。

一方で退職の経緯や再入社後の受け入れ体制を十分に確認せず進めると、同じ理由で再び離職するリスクがあります。企業側にも「歓迎する空気」と「明確な制度の整備」が求められます。

オウンドメディア採用

自社のWebサイトやnote、ブログ等を通じて、企業の魅力やカルチャーを自発的に発信し、応募につなげる手法です。コンテンツ資産として中長期的に機能するのが強みです。

オウンドメディア採用が向いているケース

  • 認知度が低いが、魅力的な社風や制度がある
  • 採用に継続的に取り組みたい
  • 母集団形成よりも“共感による応募”を重視したい

活用のポイント

  • 社員インタビューや制度紹介、代表メッセージなど、言葉で“らしさ”を伝えるコンテンツが効果的
  • SNSやSEOと連携することで、より広くターゲットにリーチできる

コンテンツマーケティングの流行から、採用を目的としたオウンドメディアに取り組む企業は多くなっていますが、注意したいのは即効性がなく、効果が出るまでには数ヶ月〜半年以上かかることもあるということ。また、コンテンツを継続的に更新する体制がないと放置感が出て逆効果になることもあるため、運用設計が大切です。

SNS採用(LinkedInなど)

SNS採用とは、X(旧Twitter)やLinkedIn、Facebook、InstagramなどのSNSを活用して候補者との接点をつくる採用手法です。中でもビジネス特化型のLinkedInは、候補者検索やスカウト送信が可能な唯一のSNSとして、特に即戦力人材の採用で使われています。

一方でXやInstagramは、主に企業の認知拡大や採用ブランディングに活用されることが多く、すぐに採用につながる手法ではありません。

オウンドメディア採用が向いているケース

  • 採用したい職種のターゲットがSNSを日常的に使っている
  • オウンドメディアや求人票では届きづらい層にアプローチしたい
  • エンジニア、デザイナーなどスキル可視化がしやすい職種を採用したい場合

活用のポイント

  • LinkedIn はスカウト、Instagramは環境の発信など、採用目的に応じてSNSごとに使い分ける
  • 現場社員や人事個人の発信、または個人を際立たせた投稿が好まれやすい

SNS採用は短期で成果を出す手法ではなく、オウンドメディア同様に認知・関係構築から始める中長期的な取り組みです。特にLinkedIn以外では、直接スカウトしても反応が得られにくいため、まず知ってもらう→興味を持ってもらう→応募につながるという導線を前提にした設計が欠かせません。

採用イベント(合同説明会・ミートアップなど)

採用イベントは、候補者と直接コミュニケーションが取れるリアル or オンラインの接点づくりを目的とした手法です。学生向けの合同企業説明会から、エンジニアとのミートアップ、カジュアル面談形式のウェビナーまで、形式は多様です。

特に企業の雰囲気やカルチャーを“空気感”で伝えたい場合に有効で、短期間で複数人と出会いたいときにも活用されます。

採用イベントが向いているケース

  • 採用候補者との「直接の接点」を早めに持ちたいとき
  • 知名度に頼らず、魅力を“体感”で伝えたい中小・ベンチャー企業
  • カルチャーマッチを重視して選考に進めたい場合

活用のポイント

  • 自社紹介だけでなく、テーマセッションや交流時間を設けるなど参加者にとって有意義な時間となるようにする
  • 面談や選考への導線を設計し、参加者の取りこぼしを防ぐ

イベントは「やって終わり」では効果が出づらいため、事前に「誰に来てほしいか」「何を持ち帰ってもらうか」を明確にして設計することが大切です。参加者へのフォローアップや、選考導線へのつなぎ方もあらかじめ決めておくことで、単なる交流から「採用接点」に変えることができます。

また、イベント自体は一日でも、集客や資料の準備、オフラインであれば会場準備など運営工数は意外と大きいため、開催頻度よりも目的に合った場づくりと動線設計がカギになります。

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ハローワーク

ハローワークは、厚生労働省が運営する公的な求人サービスです。無料で求人掲載が可能で、特に地域密着型の採用に使われています。

ハローワーク採用が向いているケース

  • 採用コストをかけられない中小企業
  • 地方での採用
  • 正社員・パートなど幅広く募集したいとき

活用のポイント

  • 求人票の文面次第で反響が大きく変わるため、無料であっても「誰に向けた仕事か」を明確に記載する
  • 写真や職場風景の掲載も効果的

採用コストを抑えられるのは魅力ですが、エンジニア採用においてはミスマッチが起きやすく、応募の質やスキル情報の不足が課題になることも多いです。地方採用や限定的なポジションでは活用の余地もありますが、スキルベースでの人材獲得を狙う場合は、他の手法と併用し、あくまで補完的なチャネルとして考えるのが現実的です。

また、他媒体に比べて転職意欲が高くない層も含まれやすいため、選考基準の明確化が必要です。

企業規模・課題別の採用手法の選び方

どの採用手法にもメリット・デメリットがある中で、「結局、自社に合うのはどれなのか?」と悩む採用担当者は少なくありません。特にエンジニアやバックオフィスなど職種によっても有効な手法は変わるため、採用目的と体制を整理した上での選定が重要です。

この章では、実際の企業を想定した3つのケースをもとに、採用手法の選び方と組み合わせ方のリアルな判断軸を解説します。

ケース1:エンジニア採用に苦戦している中堅SaaS企業(従業員200名)

エンジニア採用に苦戦している中堅SaaS企業(従業員200名)

採用背景・課題

自社プロダクトの拡張にともない、Webアプリケーションのフロントエンド・バックエンドエンジニアを3名採用したい。しかし、求人媒体では応募がほとんどなく、仮に応募があってもスキルマッチやカルチャーフィットに課題が残り、定着率が低い状況が続いている。

有効な手法

ダイレクト・リクルーティング
求人媒体で応募が集まらない要因の一つは、「今すぐ転職したい人材」が限られていること。ダイレクトリクルーティングであれば、潜在層(転職検討初期)のエンジニアに対して、自社の強みやカルチャーを丁寧に伝えることができる。職種特性に合わせて技術スタックやチーム構成を明記したスカウト文面を作成すれば、転職温度感が高くない層とも接点を持てる可能性がある。

リファラル採用
エンジニア同士のつながりを活かすことで、カルチャーの相性をある程度担保できる人材との出会いが期待できる。既存社員からの紹介は、候補者もある程度会社の雰囲気や働き方を事前に理解したうえでの応募となるため、ミスマッチや早期離職のリスクを軽減しやすい。紹介制度を形だけでなく、エンジニアが実際に動きたくなるような仕組み設計と報酬設計の工夫がカギとなる。

オウンドメディア採用(技術広報)
いきなり応募・スカウトという関係ではなく、まずは自社の存在を「気になる会社」として認識してもらう必要がある。開発ブログや技術勉強会レポート、開発者インタビューなどを発信することで、技術に対する姿勢や文化が伝わりやすくなる。転職顕在層だけでなく、転職するか迷っている層への「間接的なアプローチ」として有効。

エージェント・Aiba

スカウト文面は「応募を促す」ものではなく、「興味を持ってもらう」設計がポイントです。スタートアップや中堅企業で多忙な中でも、短期的には紹介会社などで母集団を形成しつつ、並行して採用広報に取り組むことが、中長期的に“会いたくなる会社”を作る近道になります。

ケース2:地方拠点のバックオフィス人材を1名採用したい製造業企業(従業員50名)

■採用背景・課題

これまで新卒中心の採用体制を続けてきたが、定年退職者の増加とともに中途採用へのシフトが必要に。しかし、ハローワークや紙媒体では反響が乏しく、応募が来てもスキルや年代が合わず、採用の手応えを感じられていない。
Uターン・Iターン人材をターゲットにしたいが、訴求の仕方がわからず、社内でも採用に対する温度差やコスト意識がネックになっている。

■有効な手法

人材紹介サービス
全国からのUターン・Iターン希望者を対象にした提案が可能で、地元志向や業界志向を持つ人材にリーチしやすい。自社での露出が難しい場合でも、エージェントが魅力を言語化・代弁してくれる点が強み。紹介手数料は一定かかるが、「採用できなければ費用は発生しない」ため、初期投資を抑えて始められるのもメリット。

オウンドメディア採用(採用ブランディング動画/note記事)
U・Iターン層にとって、「実際にどんな職場か」「どんな人が働いているか」は重要な判断軸となる。noteやYouTubeを活用し、会社の歴史や地域に根ざした働き方、社員インタビューなどを発信することで、地元回帰層の共感を得やすくなる。特に動画は、上層部の思いや将来像も伝わりやすく、社内理解にも寄与する。

ダイレクト・リクルーティング
都市部で働いているが、地元に戻りたい気持ちを持つ人材に向けてスカウトを送ることで、潜在層との接点が生まれる。居住地やプロフィールからU・Iターン志向を読み取り、丁寧なスカウト文面を設計すれば、応募意欲が高くない層にもアプローチできる。

エージェント・Aiba

エンジニア採用では、「スカウトを送る=すぐに面談につながる」という感覚だとギャップが生まれやすいです。実際には、スカウト前から会社の情報を発信しておくことで“なんとなく知っている会社”になり、返信率も変わってきます。
忙しい中でも、採用広報と並行してスカウト文面を定期的に見直していくことで、短期と中長期の両面から効果を出せる企業が増えています。

ケース③:急成長中のスタートアップ(従業員30名・シリーズA)でエンジニア採用を強化したい場合

■採用背景・課題

サービス拡大と資金調達により、半年以内に10名以上の採用が必要な状況。
しかし人事専任はおらず、COOや現場マネージャーが採用業務を兼任しており、媒体掲載だけでは工数と採用成果が見合わない。スピード感をもって進めたいが、そもそも応募が少なく、ターゲットとの接点が持てていない。

■有効な手法

ダイレクト・リクルーティング
スタートアップの「スピード・柔軟さ」はダイレクトリクルーティングと相性が良い。選考の意思決定も速く、職種ごとにスカウト文面をテンプレ化・自動化すれば、スモールスタートも可能。候補者とのコミュニケーションを一貫して現場が担えるため、興味喚起から面談設定まで一気通貫で進められる。

人材紹介
限られたポジションに対して、即戦力層を紹介してもらう手段として有効。媒体やスカウトではカバーしにくい「今すぐ転職したい優秀層」との出会いが生まれやすく、少人数でも短期集中で採用できる可能性がある。面接や条件提示のスピード感がある分、紹介から内定までが早く、エージェントと役割分担しやすい。

オウンドメディア採用(採用note・スライド資料・X投稿)
会社の知名度がない分、「なぜこの会社に入る価値があるか」を自社で語ることが欠かせない。スカウトのリンク先にnote記事、スライド資料、Wantedlyストーリー、X(旧Twitter)の発信などがあるだけで、返信率は変わる。
「いきなり面談」ではなく「まずは気になる」状態を作ることが、母集団形成の第一歩となる。

エージェント・Aiba

スタートアップはリソースが限られるからこそ、やるべきことに優先順位をつけ、社内外で分担することが不可欠です。候補者との最初の接点づくりをどこに任せるか、は非常に大きなポイントになります。

中途採用における最新トレンドと今後の見通し

近年の採用市場では、手法の多様化にとどまらず、テクノロジーやメディア環境の進化によって「人材との出会い方」そのものが変わりつつあります。中途採用においても、これらのトレンドを的確に捉えることで、自社の採用活動に新たな選択肢が生まれます。

AI・自動化の活用

採用業務の効率化として、スカウト配信の自動化ツールやチャットボットを導入する企業が増えています。候補者ごとの興味・スキルに応じたスカウト文面の最適化、面談日程の自動調整など、人の手を介さずに一定のレベルで候補者体験を向上させることが可能です。特に少人数の採用担当で運用する企業にとっては、一定の成果を出しながらリソースを抑えられる選択肢となり得ます。

一方で、求職者側もAIを活用してプロフィールを最適化したり、スカウト文面の質をチェックしたりする傾向が強まっています。企業と候補者の間で「温度感」や「期待値」にギャップが生まれやすいため、自動化一辺倒ではなく、要所で人の関与を挟むことが重要です。

SNS・動画活用の進化

採用ブランディングの手法として、TikTokやYouTubeなど動画プラットフォームを活用する企業が増えています。いわゆる「採用広報動画」は、求職者が企業の雰囲気や働く人の姿を直感的に知る手段となり、特に20代〜30代前半の若手層との相性が良いとされています。

近年では、「会社紹介」だけでなく、“1分社員インタビュー”や“1日の働き方紹介”といったカジュアルなコンテンツも増えており、「入社後のギャップを減らす」ための工夫としても注目されています。

また、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSでは、人事や現場社員があえて“ラフな文体やトーン”で日常を発信するアカウントも増加中。フォロワーとの距離感を近づけることで、「応募前から会社を知っていた」という心理的ハードルの低下につながっています。

まずは社内に“動画・SNSが得意な人”がいるかを探すところから。スマホ1台でも十分始められる時代だからこそ、「ちゃんとやる」より「継続できる」がカギです。

タレントプールとCRMの活用

「一度会って終わり」ではなく、「将来に向けてつながり続ける」ことの重要性が増しています。たとえば、イベントやスカウトで接点を持った候補者が、すぐに転職を考えていなかったとしても、数カ月〜数年後に自社にマッチする瞬間が来ることは少なくありません。

そこで注目されているのが、タレントプールの活用です。候補者の情報や過去のやり取りをCRM(採用管理ツール)に蓄積し、適切なタイミングでアプローチすることで、「今は転職しないけど、いい会社だと思ってる」人材との関係性を育てていけます。

メール配信や勉強会招待など「接点の細さ」にこだわることで、採用の“再現性”を高められる。短期決戦ではない採用戦略が求められる時代です。

自社に合った中途採用手法を見極めよう

中途採用の難しさは「選択肢が増えたこと」にあります。求人媒体、エージェント、ダイレクトリクルーティング、SNS、動画。どれも「やったほうがいい」と言われながら、結局どこから手をつければよいのか迷ってしまう企業は少なくありません。

採用は、やるかやらないかの手法論ではなく、全体設計の話です。大切なのは、自社の「今の採用課題」と「理想の採用状態」から逆算して、手法と運用を組み立てていくことです。

採用活動は「手法選び」で7割決まる

よくあるのは「とりあえず掲載しておこう」「とりあえずエージェントに依頼しよう」といった、現場のリソース起点の採用。これでは、効果が出なかったときに「どこが悪かったのか」が見えづらく、手法の相性も判断できません。

まずは、「どういう人が来てほしいか」ではなく、「今なぜ採用できていないのか」を仮説として言語化しましょう

課題仮説
媒体で来るのは未経験ばかり・要件定義が曖昧では?
・万人受けする内容となっていないか?
エージェント紹介が合わない・スクリーニングの軸が共有できている?
・担当者とのコミュニケーションに齟齬はないか?
スカウトに返信が来ない・採用広報や職場の透明性が足りない?
・候補者のプロフィールを読み込んだうえでのスカウトとなっているか?

成功のポイントは「バラバラ運用」からの脱却

複数のチャネルを使うこと自体は悪くありません。問題は、それぞれが別チームで別々の基準・メッセージで運用されていることです。

選考基準やコンセプトに一貫性がなければ、求職者は「この会社、本当に一緒に働くイメージがわかない」と感じます。逆に、トーンやメッセージが統一されていれば、エージェント経由でもスカウト経由でも、「伝わる会社」になります。

また、振り返りをKPIだけで終わらせないことも大切です。内定辞退の背景、面接通過率の低い理由など、“数字の裏にあるストーリー”を拾い、手法だけでなく訴求軸まで見直す視点が重要です。

採用手法の見直しは、小さな違和感から

採用がうまくいっていないと感じたとき、大きな数字の変化や明確な失敗だけが見直しのサインとは限りません。実は、「ちょっとした違和感」こそが、手法や運用が現状にフィットしていない兆しになることがあります。

たとえば、応募数はそれなりにあるのに、最終面接まで進む人がほとんどいなかったり、スカウトメールの開封率がじわじわと下がっていたり。あるいは、紹介された候補者との面談後に辞退が続くなど、数字には現れにくい変化が積み重なっているケースも珍しくありません。

こうした現場の声を丁寧に拾い上げ、採用フロー全体の中でどこにズレが生じているのかを把握することが、改善のスタートラインになります。手法を大きく変える必要があるとは限りませんが、使い方や訴求内容、メッセージのトーンなど、部分的な見直しだけでも成果は大きく変わります。

半年ごとの定期的な手法の振り返りに加え、スカウト文面や求人票のアップデートはもっと短いスパンで。変化の早い採用市場では、こうした細やかな運用改善が、次の成果につながります。

採用手法に関するよくある質問(FAQ)

最後に、採用手法に関するよくある質問にご回答します。

ダイレクトリクルーティングは中小でも効果ある?

実際に成功している中小企業も多くあります。ただし、スカウト文面や候補者選定の工数は一定かかるため、「スカウトを送れば応募が来る」といった短期視点ではなく、採用広報や運用設計を含めて中長期的に活用する前提が必要です。

採用ブランディングと採用手法はどう関係する?

採用ブランディングが機能していると、媒体やスカウト経由の返信率・応募後の動機形成がスムーズになります。特に、オウンドメディアやSNS、技術ブログなどは、ダイレクトリクルーティングやリファラルと相性が良く、チャネル全体の効果を底上げする役割を担います。

求人媒体とエージェント、両方使うのはアリ?

もちろんアリです。ただし、目的と運用が重複しないように注意が必要です。媒体は幅広く応募を集める「広さ」を担い、エージェントは要件に合う人材の「精度」を担うという役割分担が理想です。KPIも別軸で設計しましょう。

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まとめ

中途採用における手法の選択肢は年々増え、情報もツールも溢れています。ですが、どの手法を使うか以上に重要なのは、「なぜその手法を選ぶのか」「どう活用するのか」という視点です。

エンジニアを採るのか、地方で採用するのか、若手か即戦力か——求める人材像によって最適な手法は異なり、万能な選択肢はありません。むしろ、「何をやらないか」を決めることが、採用戦略の質を高めます。

また、手法そのものよりも、メッセージの一貫性や現場の協力体制、振り返りの仕組み(KPIや定性レビュー)といった運用面の整備が成果に直結します。スカウト文面ひとつ、求人票の見せ方ひとつで、候補者の反応は変わるからです。

どの手法を使っても、効果はすぐには現れません。採用は短距離走ではなく、継続的に改善を重ねるマラソンです。トレンドに振り回されず、自社の採用課題と向き合いながら、「続けられる仕組みづくり」を意識して設計・運用していきましょう。

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