エンジニア採用において候補者のスキルを見極めるために、過去の実績をまとめたポートフォリオの提出を求める場合があります。ただし、「何を見て、どう評価すれば良いのか分からない」「見た目の完成度に惑わされてしまう」などの悩みを抱えている方もいるでしょう。
本記事では、ポートフォリオから見抜くべき3つの力や、実務で本当に活きるアウトプットの条件などについて徹底解説します。本記事の内容を参考にして、ポートフォリオ評価の精度を高め、採用のミスマッチを予防してください。

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ポートフォリオで見える3つの能力:技術・構造・伝達力
候補者の経験や技能を把握するために一般的に使用される資料がスキルシートです。加えて任意でポートフォリオが提出される場合もあり、候補者の能力をより深く知る機会が得られます。ポートフォリオを通じて評価できる代表的な能力は以下の3点です。
- 技術力(スキル)
- 構造力(設計・整理能力)
- 伝達力(アウトプット・説明力)
各能力について詳しく解説するので、ポートフォリオが提出された際の参考にしてください。
技術力(スキル)
ポートフォリオで示されているソースコードや技術スタックは、候補者の技術力を具体的に評価するための重要な手がかりです。単に「〇〇が使える」というスキルシート上の記述だけでは判断しきれない、コードの品質や実装の正確さ、問題解決へのアプローチ方法などが明らかになります。
具体的には、以下のような指標で評価可能です。
- 冗長なコードがなく効率的に書かれているか
- セキュリティ対策は考慮されているか
- 適切なアルゴリズムが選択されているか
また、新しい技術やトレンド技術を取り入れている姿勢や、既存技術に対する深い理解も、候補者の技術への感度や探求心を示すポイントとなります。
スキルシートではわからない「コードの癖」や「工夫の跡」から、候補者の実装力や技術的成熟度を読み取り可能です。
構造力(設計・整理能力)
設計能力や情報を整理する能力などの構造力を評価するうえで、ポートフォリオは貴重な材料です。たとえば
- 提出された成果物のフォルダ構成が論理的であるか
- ファイル名や変数名、関数名などの命名規則に一貫性があり理解しやすいか
- 各モジュールやコンポーネントの責務が適切に分離されているか
などの点は、候補者の「考えて設計する」習慣を評価するための指標となります。
見通しが良い構造になっているか、メンテナンスを考慮した設計がなされているか、設定ファイルやドキュメントが整理されているかなども評価ポイントです。
コードや構成から一貫した設計方針が読み取れる場合、候補者が単に動くものを作るだけでなく、持続可能なシステムを構築する意識を持っていることを表しています。
伝達力(アウトプット・説明力)
技術力や設計力だけでなく、候補者の思考や成果を伝える「伝達力」の評価でもポートフォリオは有効です。
READMEファイルの内容を確認すれば、
- プロジェクトの目的や使い方、技術構成、起動方法などが分かりやすく記述されているか
- 第三者がスムーズに理解・利用できるよう配慮されているか
が判断でき、候補者の情報整理能力やドキュメンテーション能力が評価できます。
コード内に残されたコメントや変更内容を表しているコミットメッセージからは、他者との協業を意識した開発姿勢が推測できます。
単に個人で優れたコードが書けるだけでなく、チームメンバーと円滑にコミュニケーションを取り、知識を共有しながら開発を進める能力も評価可能です。
実務で活きるポートフォリオとは?評価に値するアウトプットの条件
提出されたポートフォリオを見て、「技術的にはすごそうだけれど、実際の業務でどれほど活かせるのだろうか?」と判断に迷うこともあるでしょう。チームでの実務開発では求められる観点が異なる場合もあるからです。本章では以下の3つの視点で、現場の視点から見て評価に値するポートフォリオの条件について解説します。
- 実務的な設計・運用を意識しているか
- 一貫性や妥当性がある選定がされているか
- 学びや改善が見えるか
順番に見ていきましょう。
実務的な設計・運用を意識しているか
ポートフォリオを評価する際、単に機能が実装されているかだけでなく、それが実務的な設計や運用をどれだけ意識して作られているかという視点が重要です。
具体的には
- バージョン管理システム(Gitなど)のコミットログが適切に残されているか
- リファクタリングの過程や意図が追えるようになっているか
- コードの保守性を高めるための工夫が見られるか
- 他の開発者が開発に参加できるようにドキュメントが整備されているか
などの点が評価ポイントになります。
エラーハンドリングやログ出力といった、運用時に問題が発生した際の追跡や対応を考慮した設計がなされているかも、実務経験の有無や成熟度を判断するうえで参考になるでしょう。チームでの協調開発や長期的な運用を見据えた視点を評価できます。
一貫性や妥当性がある選定がされているか
使用されている技術スタック(プログラミング言語、フレームワーク、アーキテクチャなど)の選定理由に一貫性と妥当性があるかは、技術的判断力を見極める要素です。単に流行の技術を多数使っているからといって、必ずしも高く評価していいわけではありません。
プロジェクトの目的や規模・特性に対して、技術を選んだ理由や、他の選択肢と比較したメリット・デメリットの考慮などの思考プロセスが重要になります。
小規模なアプリケーションに対して過度に複雑なマイクロサービスアーキテクチャを採用したり、特定の課題解決に対して明らかにオーバースペックなライブラリを導入したりする場合は、技術選定の妥当性に疑問を抱かざるを得ません。技術的な選択の背景にある論理性に着目して評価しましょう。
学びや改善が見えるか
ポートフォリオは、完成された成果物であると同時に、候補者の成長プロセスや学習意欲を映し出す鏡でもあります。初期の実装からのコードの改善や、技術的課題に対する工夫などが見えるポートフォリオは高評価に値します。
たとえば、Gitのコミット履歴からは以下の内容が読み取り可能です。
- バグ修正の過程
- リファクタリングによる品質向上の試み
- 新しい技術要素の導入とその試行錯誤の様子
上記の内容から、候補者の自律的な学習姿勢や、良いものを追求する姿勢が伺えます。過去のコードに対する反省点や得た教訓、次に活かそうとしている点などが、ドキュメントや面接で語られれば、継続的な成長意欲の証にもなります。完成度だけでなく、努力や試行錯誤のプロセスにも目を向けましょう。
よくあるポートフォリオの評価ミスとその対策
採用の現場では、意図せずに誤った判断をしてしまうケースも少なくありません。見た目の印象や技術的な派手さに目を奪われたり、逆に重要な情報を見落としてしまったりすると、候補者の能力を見誤ってしまいます。本章ではよくある評価ミスと対策方法について、以下の3つの視点で解説します。
- 「完成度」だけで判断してしまう
- 派手な技術スタックに惑わされる
- コード以外の要素(ドキュメント等)を見落とす
採用担当者の方は最後までご覧ください。
「完成度」だけで判断してしまう
ポートフォリオを評価する際によくあるミスが、プロダクトの「完成度」や見た目の美しさだけで候補者の能力を判断してしまうことです。洗練されたUIや多機能なアプリケーションは目を引きますが、採用担当者が見るべき本質は成果物の裏側にある候補者の「思考プロセス」や「技術的な工夫」です。
シンプルに見えるアウトプットでも、高度なアルゴリズムや緻密な設計思想が隠されているかもしれません。見た目は華やかでも、コード品質が低かったり、拡張性や保守性が考慮されていなかったりするケースもあります。
候補者が持つ課題意識や解決するための技術的アプローチ、試行錯誤への理解が重要です。表面的な仕上がりだけでなく、課題設定力や設計力、問題解決能力を評価する視点を持ちましょう。
派手な技術スタックに惑わされる
目新しいフレームワークや難解な技術構成が使われているポートフォリオを見ると、「この候補者は優秀そうだ」と早合点してしまうことがあります。ただし、話題の技術や複雑なアーキテクチャの採用が、候補者の実力やプロジェクトへの適合性を示すわけではない点に注意しましょう。
重要なのは、技術選定の理由と目的です。なぜその技術を選んだのか、どのような課題を解決しようとしたのか、プロジェクトの目的や規模に対して適切だったのかなどを聞き取って、候補者の意図と理解を確認しましょう。
面接などの場で、技術選定の背景や、技術のメリット・デメリットへの考慮を具体的に質問します。候補者の思考の深さや技術への理解度を確認して、評価ミスを避けてください。
コード以外の要素(ドキュメント等)を見落とす
ポートフォリオを見ると、ソースコードに注目が集まりがちですが、READMEファイルやAPI仕様書、コード内のコメントなどのドキュメントにも目を向けましょう。候補者の「他者に伝える力」や「情報を整理しまとめる能力」が表れるからです。
たとえば、プロジェクトの概要や環境構築の手順、APIのエンドポイント仕様などが分かりやすく記述されたREADMEは、他の開発者の理解を助けます。適切に書かれたコードコメントは、複雑なロジックの意図を伝え、将来のメンテナンス性を高めます。
ドキュメント作成能力は、チーム開発において極めて重要なスキルです。コードだけでなく、ドキュメントにもしっかりと目を通し、総合的に評価する姿勢が求められます。
ポートフォリオの評価ポイントと面接での活かし方
候補者からポートフォリオが提出された場合、面接の場で効果的に活用しましょう。書類だけでは分からない実務遂行能力や思考の深さを、より具体的に判断できるからです。成果物を見るだけでなく、背景にある意図やプロセスを深掘りしましょう。本稿では以下の3つの視点で面接での活用方法をお伝えします。
- 面接で聞くべき質問例
- 面接官が意識すべき評価軸
- スキルシートとの整合性を確認する
各ポイントについて詳しく見ていきましょう。
面接で聞くべき質問例
ポートフォリオを面接で活用するには、候補者の思考プロセスや問題解決能力を深掘りするための質問が鍵です。「プロジェクトについて説明してください」と促すだけでなく、意思決定の背景や技術的な工夫について問いかけましょう。
具体的な質問例は以下のとおりです。
- なぜそのプログラミング言語を選定したのですか?
- 他の選択肢と比較して、どのようなメリット・デメリットを考慮しましたか?
- 最も技術的に苦労した点はどこですか?それをどのように解決しましたか?
- プロジェクトを最初から作り直すとしたら、どこをどのように改善しますか?
- リファクタリングは行いましたか?その意図は何ですか?
上記の質問を通じて、成果物の裏にある候補者の「考え方」を引き出しましょう。
面接官が意識すべき評価軸
面接でポートフォリオを深堀りする際、面接官は技術的な質問に終始しすぎないよう注意が必要です。技術的な理解度の確認が重要ではあるものの、細かすぎる実装の揚げ足を取ったり、候補者を試すよう質問をしたりすると、建設的な評価につながりません。
面接官が意識すべき評価軸は、「候補者が自社の開発チームにて、実務で活躍できそうか」という観点です。具体的には、
- 問題解決へのアプローチ方法
- 技術的な課題に対する探求心
- チームメンバーと協力して開発を進められるコミュニケーション能力
- 新しいことを学ぶ意欲
などを評価します。
候補者を追い詰めていないか、誘導尋問になっていないかなどを自問自答しながら、候補者の潜在的な能力や実務適性を見抜きましょう。
スキルシートとの整合性を確認する
ポートフォリオは、スキルシートに記載された経験や技術の裏付けを確認するための有効な手段です。面接時には、ポートフォリオで示された技術スタックやプロジェクト内容が、スキルシートに記述されている職務経験、担当業務、習得技術と矛盾なく一致しているかを確認しましょう。
スキルシートに「大規模プロジェクトのリーダー経験あり」と記載があるにも関わらず、ポートフォリオが非常に小規模な製作物のみであった場合には、理由を具体的に質問し、経験の深さや実態を慎重に見極めましょう。スキルシートでは控えめでも、ポートフォリオから高い技術力や豊富な経験が読み取れる場合もあります。ポートフォリオとスキルシートを突き合わせ、より正確な評価につなげてください。
スキルシートとの違いと併用のコツ
スキルシートとポートフォリオはそれぞれ異なる役割を持つ評価材料です。スキルシートが候補者の経歴や習得技術の概要を伝える一方で、ポートフォリオは具体的なアウトプットを通じて実態を示します。本稿ではスキルシートとの違いと併用のコツについて、3つの視点で解説します。
- スキルシートで分かること・分からないこと
- ポートフォリオは“裏付け”として活用する
- 提出がない場合の考え方
順番に詳しくお伝えするので、採用時の参考にしてください。
スキルシートで分かること・分からないこと
スキルシート(職務経歴書)で把握できる主な情報は以下のとおりです。
- エンジニアのこれまでの経験社数や在籍期間
- 担当したプロジェクトの概要
- 使用してきたプログラミング言語やフレームワーク
- データベースといった技術要素
- プロジェクト内での役割や業務範囲
定量的な情報を客観的に把握できるため、候補者のキャリアの概観を判断できます。ただし、スキルシートだけでは、実際にコードの品質や設計思想、問題解決能力の具体的なレベルなどの「実装の質」や「思考の深さ」までは読み取れません。また、チーム内でのコミュニケーションスタイルや、新しい技術へのキャッチアップ意欲といった定性的な側面も把握しづらいため注意が必要です。
ポートフォリオは“裏付け”として活用する
スキルシートが候補者の経験やスキルを表明するものだとすれば、ポートフォリオは内容を具体的に証明し、「裏付け」るための補足材料と位置づけられます。
スキルシートに記載された「〇〇フレームワークを用いた開発経験3年」という情報に対し、ポートフォリオで実際の成果物が提示されていれば、信憑性や具体的なスキルレベルを深く理解できます。コードの品質や設計の工夫、問題解決へのアプローチ方法などをポートフォリオから読み解き、スキルシートだけでは見えなかった候補者の実力を把握しましょう。
評価の際にはまずスキルシートで経験の概要を掴み、ポートフォリオで詳細や実態を確認するという流れがおすすめです。ただし、ポートフォリオの内容が必ずしもスキルシートの全ての経験を網羅するわけではない点も理解しておく必要があります。
提出がない場合の考え方
エンジニア採用において、ポートフォリオの提出は必須とされていないケースもあります。候補者から提出がないからといって、直ちに候補者の評価を下げるのは得策ではありません。
ポートフォリオを作成・公開できない理由には、以下の点が考えられます。
- 関わったプロジェクトが守秘義務契約の対象となっており、成果物を外部に公開できない
- 受託開発が中心で自社サービスや個人開発の経験が少ない
- 業務が多忙でポートフォリオ作成に十分な時間を割けない
重要なのは、ポートフォリオの有無で判断するのではなく、スキルシートや面接を通じて、候補者の経験やスキルを多角的に評価しようとする姿勢です。ポートフォリオがない場合でも、面接で過去のプロジェクトにおける具体的な役割、工夫した点、困難だった点などを深掘りしましょう。
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まとめ
エンジニア採用においてポートフォリオは、提出があれば候補者の技術力、設計・構造力、伝達力を多角的に把握できる貴重な資料です。スキルシートだけでは見えにくい実装の質や思考のプロセスを具体的に確認できるため、選考の精度向上につながります。
評価の基本はあくまでスキルシートを中心とし、ポートフォリオは内容を裏付けるための材料として扱うのが現実的です。本記事で紹介した内容を参考に、貴社のエンジニア採用にポートフォリオをご活用ください。