エンジニアとしてキャリアを積んできたけれど、「違う技術領域にチャレンジしたい」「インフラから開発へ、開発からPMへとステップアップしたい」──そんな思いを抱えている方も多いのではないでしょうか。
経験がまったくない領域に移るのは難しそうに思えても、実は“ポテンシャル採用”という選択肢があります。
これは、実績や専門性だけでなく、「今後の成長可能性」や「新しい分野への意欲」を評価して採用を行うスタイル。IT業界においても、スキルチェンジやキャリアチェンジを前提にした採用が広がっており、同じ業界内で職種を変えるチャンスが生まれています。
この記事では、ポテンシャル採用の定義や他の採用手法との違い、異なるIT職種への転職がなぜ可能なのか、実際の年収やポジションへの影響、企業が評価するポイント、そして採用されるための準備方法までを丁寧に解説します。

ポテンシャル採用とは?意味と特徴を解説
ポテンシャル採用とは、これまでのスキルや実績ではなく、「これからの成長性」や「新しい分野への意欲」を重視して人材を採用する手法です。特定の職種における経験が十分でなくても、学ぶ姿勢や柔軟な考え方、吸収力といった将来的な伸びしろが評価されます。
とくにIT業界では、技術の変化が激しいため、現在のスキルセット以上に「成長する力」が求められる場面も増えており、キャリアチェンジを志す人にとっては大きなチャンスとなり得ます。
中途採用との違い
中途採用は基本的に「即戦力」を求める採用です。すでに同じ業務を経験している人や、すぐに現場で成果を出せる人材を前提としています。
一方、ポテンシャル採用では「未経験でも伸びしろがある」と判断されれば、育成前提で採用される可能性があります。そのため、職種の幅を広げたり、次のステージに進みたいと考えている人にとって柔軟性のある選択肢です。
新卒採用との違い
新卒採用は、社会人としての経験がない学生を対象とした“育成型採用”で、基本的にはポテンシャルや人柄を評価して採用します。
ポテンシャル採用も育成を前提としていますが、対象は社会人経験を持つ人材です。つまり、一定のビジネススキルや社会性があることが前提となり、そのうえで「新しい領域でも伸びていけるかどうか」が見られます。
「未経験歓迎」との違い
「未経験歓迎」は、実務経験がなくても応募できる求人に付けられる表現であり、必ずしも成長性や意欲までを重視しているとは限りません。
一方で、ポテンシャル採用は「どれだけ学ぶ姿勢があるか」「どう成長していきたいか」といった本人の内面や将来性を重視した選考が行われます。結果として、職種転換やキャリアチェンジのハードルを下げる採用手法といえます。

未経験から異職種に転職できる理由
異なる職種への転職は、経験がない分だけハードルが高く感じられるものです。しかし近年では、職種変更を前提にしたポテンシャル採用も増えており、IT業界を中心に“未経験でもチャレンジ可能な環境”が整いつつあります。
ここでは、なぜ異なる職種への転職が実現可能なのか、その背景にある社会的・業界的な要因を解説していきます。
IT職種は全体的に人材不足
IT業界は慢性的な人手不足が続いており、職種を問わず幅広い領域で採用ニーズが高まっています。たとえば、開発エンジニアからインフラエンジニア、あるいはテスターからプロジェクト管理へのステップアップといったように、隣接領域への職種転換は現実的な選択肢となっています。
経験者に限定すると採用の間口が狭くなるため、「関連スキルを持っていて、成長意欲のある人」であれば、職種未経験でも採用を検討する企業が増えているのです。

少子高齢化で若手社員の需要が高まる
日本全体で進む少子高齢化により、企業は次世代の中核となる人材を早期に育てていきたいという意識を強めています。とくに20代~30代前半のITエンジニアは、吸収力の高さや変化への対応力を評価されやすく、職種未経験でも将来性を見込んだ採用につながるケースが増加中です。
実務経験が十分でなくても、社会人としての基本スキルを備え、スキルアップの意欲を明確に伝えられれば、異なる職種へのチャレンジは十分に可能です。
企業が「育てる前提」で人材採用へ
かつて主流だった「即戦力採用」は、今や大きな転換点を迎えています。近年では、多くの企業が中長期的な育成を前提とした人材採用へとシフトしており、特に変化の激しいIT業界では、「いま持っているスキル」よりも「変化に対応する力」や「学び続ける意欲」が重要視される傾向が強まっています。
その背景には、企業の教育・研修制度への意識変化と投資の増加が明確に見て取れます。
教育研修費用は3年連続増加──1人あたり34,606円
産労総合研究所の「2024年度 教育研修費用の実態調査」によると、従業員1人あたりの教育研修費用は34,606円となり、3年連続の増加を記録しました。前年と比べても2,194円の増加となっており、企業の人材育成への本気度が数値としても現れています。
さらに、今後1~3年の教育費用が「増加する見込み」と回答した企業は全体の約6割にのぼり、教育投資への前向きな姿勢は今後も続くと見られます。
「育成すれば伸びる」前提の人材活用へ
2024年度に各社が力を入れている研修内容には、「新入社員教育」や「キャリアデザイン・ライフプラン教育」など、若手層や中堅層の成長を後押しする内容が多く挙げられています。これは、単なる技術研修にとどまらず、個人の中長期的なキャリア形成を支援する姿勢の表れでもあります。
こうした動きは、採用基準の変化とも密接に関係しています。目先のスキルや経験だけではなく、「柔軟に学びながら成長できる人材」をいかに見出し、組織で育てていくか――。それこそが、持続的な競争力を生み出す戦略的投資として、多くの企業に受け入れられ始めているのです。
ポテンシャル採用の年収・キャリア形成への影響
ポテンシャル採用で転職を考える際に気になるのが、入社後の年収やキャリアパスではないでしょうか。未経験の職種に挑戦するとなると、「年収が下がるのでは」「キャリアが遠回りになるのでは」といった不安を感じるのも自然です。
ここでは、ポテンシャル採用による転職が、実際にどのような待遇やキャリア形成につながるのかを整理して解説します。
初年度年収は控えめだが伸び代あり
ポテンシャル採用では、応募職種の実務経験が乏しい分、初年度の年収はやや控えめに設定されることが一般的です。即戦力としての評価が難しい以上、スタート地点は慎重に見積もられる傾向があります。
しかし、これは「評価されない」という意味ではありません。入社後にスキルを習得し、現場で成果を出すことで、年収は着実に上がっていきます。実際に、1〜2年で昇給・昇格のチャンスをつかんだ例も少なくありません。特にエンジニア職では、技術的成果や資格取得、業務改善の貢献が明確であれば、評価につながりやすい環境が整っています。
下流工程やサポート業務からスタートする傾向
異なる職種への転職となると、最初から責任あるポジションを任されるのは難しいのが現実です。多くの場合、まずは下流工程やサポート業務、もしくは既存業務の補助といった「入り口の業務」からスタートすることになります。
これはマイナスではなく、職場の文化や業務フローを理解し、スキルギャップを埋めるための準備期間ともいえます。そのなかで着実に信頼を積み重ね、実績を作っていくことで、プロジェクトの中核を担うポジションにステップアップしていくことが可能です。
ポテンシャル採用では、経験やスキルだけではなく、「どんな人か」「どう成長していくか」といった“人柄”や“将来像”が重視されます。
とはいえ、面接や書類でどのような点を評価されるのか、事前に把握しておくことで準備の方向性は大きく変わります。このセクションでは、企業がポテンシャル採用において注目している代表的な評価ポイントを解説します。

企業文化・理念への共感
ポテンシャル採用では、スキルの代わりに「企業と合いそうかどうか」が重要な判断軸になります。たとえば、「働き方への価値観が一致しているか」「組織の文化に馴染めそうか」といった点は、配属後の活躍に直結するため、企業側も慎重に見極めています。
応募する企業の理念や事業内容にどれだけ興味を持てるか、その共感を言語化できるかが、評価を左右するポイントです。
自己成長意欲・学ぶ姿勢
職種未経験であっても、「これから学んでいきたい」という強い意志があるかどうかは、ポテンシャル採用において極めて重要です。独学で勉強していることや、勉強会への参加、オンライン講座の受講など、成長に向けた具体的な行動は説得力のあるアピール材料になります。
また、過去に新しい業務をキャッチアップした経験などがあれば、それも「学ぶ姿勢がある人」として評価される根拠になります。
キャリアビジョンの明確さ
「なぜこの職種に挑戦したいのか」「将来的にどんな役割を目指しているのか」を言語化できることは、企業にとって安心材料になります。単なる「なんとなくの転職」ではなく、自分の将来像に対して納得感を持って行動している人は、社内で育てる価値があると判断されやすいのです。
将来のキャリアイメージと、今回の転職の位置づけを明確に語れるようにしておきましょう。
基本的なビジネスマナー
未経験であっても、社会人としての基本が身についているかどうかは前提条件といえます。たとえば、挨拶や報連相、メール・チャットでのやり取りといった“当たり前のこと”をきちんとこなせるかは、どの企業でも見られています。
また、レスポンスの早さや言葉遣いも含めて、仕事の進めやすさに直結するため、ポテンシャル採用であっても軽視されることはありません。
前向きな転職理由
「成長したい」「新しい環境で自分を試したい」といった前向きな転職理由は、ポテンシャル採用において強い武器になります。逆に「今の仕事がつまらない」「環境が合わなかった」といった後ろ向きな理由ばかりでは、企業側も将来性を感じづらくなってしまいます。
過去の経験をどう活かし、これからどう変わっていきたいのか。自分なりのストーリーを言葉にすることが、評価につながります。

ポテンシャル採用を成功に導く戦略
ポテンシャル採用は、経験よりも成長の可能性が評価される分、自分自身をどう見せるかが採用の成否を左右します。
「やる気はある」と伝えるだけでは不十分で、その意欲をどう証明するかがポイントです。
このセクションでは、ポテンシャル採用で内定を得るために、実際に準備しておくべきポイントを具体的に紹介します。
自分の市場価値を知る
まず大切なのは、自分が「今どのくらい評価される人材なのか」を客観的に知ることです。
転職エージェントのカウンセリングや、スカウト型サービスの登録などを通じて、自分のスキルや経験が市場でどう見られるのかを把握することで、適切な職種や年収レンジ、応募企業の選定がしやすくなります。キャリアの棚卸しをしながら、「過去の経験をどう応用できるか」を明確にしておきましょう。

職務経歴書・履歴書で強みを伝える
未経験の職種へ応募する場合でも、これまでの経験から得た強みは必ず活かせます。職務経歴書では、単に業務内容を並べるのではなく、「成果を出すために工夫したこと」「課題をどう乗り越えたか」など、再現性のあるスキルを具体的に記述しましょう。
未経験である分、「この人なら新しい環境でも成果を出せそうだ」と思わせるようなエピソードが有効です。

ポートフォリオで実績を見せる
開発職やデザイン職など、アウトプットが可視化できる職種であれば、ポートフォリオの準備は必須です。
過去の制作物や、学習の成果として作ったアプリ・ツール、資料作成、業務改善の提案書など、「自分に何ができるか」を目に見える形で提示しましょう。また、GitHubやnote、Qiitaなどのアウトプットをまとめておくと、信頼性や主体性のアピールにもなります。

ITエンジニアを目指すならスキルアップを
IT職種でのキャリアチェンジを狙うなら、プログラミングやインフラの基礎知識など、必要なスキルを事前に学んでおくことが非常に効果的です。
Progate、ドットインストール、Udemyといったオンライン教材や、AWSやG検定などの資格取得は、「やる気」を形にする手段にもなります。実際に未経験からIT職種に転職した人の多くが、「何かしらの学習実績」を持っていたことが、面接通過率に大きく影響しています。
30代でもポテンシャル採用は可能?
「ポテンシャル採用」と聞くと、20代向けのイメージを持つ方もいるかもしれません。たしかに若手の育成枠として採用されるケースは多いですが、30代でもポテンシャル採用で異職種にチャレンジすることは十分に可能です。
ポイントは「未経験」というリスクを、別の価値で補えているかどうか。たとえば、過去の業務で得た汎用的なスキル(マネジメント、調整力、課題解決力など)や、IT業界での業務経験そのものが、隣接職種での応用につながると判断されれば、30代でも歓迎されるケースがあります。
また、30代は「伸びしろ」だけでなく、「自律性」や「安定した社会人マナー」も期待される世代。ポテンシャル採用の枠組みであっても、成長意欲をしっかり伝えられることに加え、社会人としての基礎力や、転職の目的が明確であることが選考のカギとなります。
特に同じIT業界内での職種転換であれば、スキルギャップが小さく、評価されやすい傾向にあります。30代だからといって可能性を狭める必要はなく、自分の強みを再整理したうえで、戦略的にアピールしていくことが重要です。
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「異なるIT職種にチャレンジしたい」そんな想いを実現したいなら、ポテンシャル採用の実績が豊富なエージェントに相談するのが近道です。「社内SE転職ナビ」では、IT業界のキャリアチェンジに特化した支援を行っており、開発→インフラ、運用→情シスなど、スキルや経験を活かした転職事例も豊富です。
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まとめ
ポテンシャル採用は、スキルや経験だけでなく「今後の成長意欲」や「柔軟性」を重視する採用手法です。特にIT業界では、同じ業界内での職種転換を目指す人にとって、有効な選択肢の一つといえます。
実際には、年収がやや低めに設定されたり、最初はサポート的な業務から始まることもありますが、そのぶん丁寧に経験を積んでいける環境が用意されていることも少なくありません。企業の側も人材育成に目を向ける傾向が強まり、意欲ある人材を育てていく土壌ができつつあります。
キャリアを見直すタイミングで、「今できること」だけで判断せず、「これからやっていきたいこと」に目を向けることで、選択肢は広がります。同じIT業界の中で新たな役割に挑戦したいと考えているなら、ポテンシャル採用というルートを検討してみてはいかがでしょうか。