ITエンジニアとしてのキャリアを検討している人やその道を歩み始めた人の中には「SES(客先常駐)はきつい・つらい」などのマイナスイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
SESは未経験からエンジニアとしてキャリアをスタートしやすい反面、世間的には「きつい・つらい」と噂されている職種の一つです。今回はSESに対してマイナスのイメージが蔓延っている理由や実態を明らかにしながら、SESで働くメリットについてもまとめていきます。
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なぜSESはつらいと言われるのか
そもそも、SESはなぜつらいと言われるのでしょうか。主な理由としては下流工程の業務が多いがゆえに自分の意思とは反した案件にアサインされる、給与が低い、残業が多いなどが挙げられます。単発的な業務も多く、今後のキャリアに活かせるのか不安に感じている人も少なくありません。
これらの観点からSESはつらいと感じてしまう人が多いようです。以下ではSESがつらいと言われている理由について一つ一つ分解して解説します。今、実際にSES企業で苦労を感じている方はいくつ当てはまるかチェックして見ましょう。
案件を選べない、案件がすぐに変わってしまう
実際にSES企業で苦労されている方の中で、こんなことは起こっていませんか。
- 会社や営業の都合により、短期間で案件がコロコロ変わってしまう
- 案件によって使用する技術がバラバラでコアスキルが身につかない
- 毎度、一から人間関係を再構築しなければならない
- 通勤にすごく時間がかかる案件にアサインされることがある
SESとして働く場合、原則、会社や営業側の指示で動くことになります。そのため、自分の意思で決定することは基本的にできず、案件も組織も短期間でコロコロ変わってしまったり、通勤に時間がかかる案件にアサインされてしまったりする可能性があります。また、毎回技術力やスキルに合わせた案件にアサインできるわけでもないため、使用する技術がバラバラでコアなスキルが身に付きにくいのも現状です。
配属される案件がどのようなものか、実際に入ってみないとわからないことも多く、SESエンジニアの間では「案件ガチャ」という言葉が生まれるほど、当たり外れが激しいのが実態です。人間関係が悪かったり、納期がすでに迫っていて残業や休日出勤を求められたり、ハズレの案件に回されることも多いにあり得ます。
このようにSESとして働くにあたっては自分の意思や希望が反映されにくいため、もどかしさを感じてしまうのも無理ありません。
▼SESでなく、社内SEとして働きたい人はこちらもご覧ください。
年収が安い
SESは未経験からでも挑戦しやすいポジションではありますが、給与に不満を抱いている人も多いようです。これは労働者と派遣先の間にSES会社が仲介に入り、マージンを取っているという構造上、やむを得ないところもあります。
また、IT業界全体として多重構造になっているのも原因の一つです。
例えば、A社が10人のエンジニアが必要なプロジェクトを受注したにも関わらず、エンジニアが不足していた場合、パートナー企業のB社から人員を確保します。しかし、B社からの人材が5人しか確保できなかった場合、B社のパートナー企業であるC社にエンジニアの確保を依頼するという流れです。一つの案件を2次請け、3次請けと下請けに流すような構造になっているので、下流に行けば行くほど、利益が少なく支払われる金額も少ないといことが発生します。
他にも業務内容の難易度は上がっているのに給与が上がらないケースや評価制度が曖昧なせいで年収の上げ方がわからないという人も多いのではないでしょうか。企業によっては案件が決まらなければ自宅待機という状況になるパターンもあり、労働時間に基づいた成果報酬を受け取るSESエンジニアは生活に支障が出る場合もあるでしょう。
残業が多い
これはSESエンジニアに限ったことではありませんが、エンジニアという業務の性質上、残業が多くなってしまう傾向にあります。納期までに作業を終えなければならず、企業や営業側の都合で無理なスケジューリングをされるとどうしても残業をせざるを得ないのです。また、案件によっては毎日終電になったり、土日出勤が発生したりすることもあります。
エンジニア全般的に残業は多くなりがちですが、特にSESは月間の契約労働時間の幅が決められているがゆえに残業が発生しやすいという特徴があります。例えば、契約時に「月160~200時間:50万円」という契約を交わすことがほとんどです。幅があるので上限いっぱい働かせようとする企業があったり、契約時間に達するために無駄に残業したりというケースも多くなっています。
キャリアアップできない
キャリアアップができないというのも理由の一つです。基本的に会社都合で案件を決められることになるので、配属先や案件によってスキルの付き方が異なり、自分自身が希望するキャリア形成が望めないというケースがあります。スキルアップできる案件に携われることもありますが、誰でもできるデータ入力や運用・保守案件を任されるケースもあります。
また、配属先できちんと教育してくれる保証もありません。一つ会社や案件に所属する期間も短いので、十分にスキルを身につけられないということもよくあります。
SESの環境改善にまい進する企業もある
SESとして実際に働いている人の中でまさにご自身の状況に当てはまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。給与や残業など、なかなか自分の思うような環境下で働けないというのは大変ですよね。
しかし、実はこれまで述べてきたSESエンジニアの悩みを改善しようと努力している企業も最近増えてきたのです。新しく環境改善にまい進する企業にはどんな制度やフォロー体制があるのかを先ほどの項目に沿って見ていきたいと思います。
案件を選べない、案件がすぐに変わってしまう
案件を選べない、すぐに変わってしまうという点に関しては最近、案件を社員に公開し、希望の案件があれば手を挙げられるような仕組みを取り入れている企業もあります。このような仕組みを導入している場合、会社側とのマッチングをしっかり行いながらプロジェクトを進行していくので、必ず案件にチームアサインされることになり、一人で放り出されたり、手持ち無沙汰になったりすることはありません。
もちろん、希望通りの案件にアサインされるとは限りませんが、少なくとも希望をきちんとヒアリングしてから進めていくことで自分の意思が全く反映されないということは起こりません。
年収が安い
SESエンジニアの場合、給与形態が不透明になっているため、目指すのを諦めてしまう人もいます。そのため、最近では評価基準を明確にし、何をクリアすれば年収がいくら上がるかについて開示する企業も増えてきました。企業側の利益だけでなく、社員へも還元するという考えが結果的に企業にとってプラスに働くということを認知し、定期的にベース給アップを行う企業も増加傾向にあります。
もちろん、業務内容や勤務条件をよく把握する必要がありますが、中には年収1,000万円を目指せるような企業の募集も見かけるようになりました。よって、きちんと見極めることができれば、一概に「SESは年収が低い」ということはありません。
残業が多い
残業時間はエンジニアという職種において慢性的に起こりがちな事態ではありますが、近年の働き方改革の流れも受けて、少しずつ働く環境を変えている企業も増えてきました。例えば、人事・労務システムとして一人一人の残業時間をチェックし、稼働が高くなっていれば現場に確認・交渉しにいく仕組みを作っている企業もあります。
それでも改善されなければ案件から撤退させるという強固姿勢を取っている企業も。他にも、取引先が大手企業であれば客先の規制や納期が厳しくなく、残業が比較的少ないケースもあり、中には平均残業時間が10時間前後の企業も増えてきています。
キャリアアップできない
SESとしてスキルアップすることは難しいと巷では囁かれていますが、状況によっては実現可能です。実際に会社の利益だけでなくエンジニア一人一人のキャリアときちんと向き合い、考えてくれる企業もあります。また、きちんと向き合えるようにキャリアプランや今後の目標について一緒に考えてくれる専任を設けている企業もあり、原則キャリアプランに基づいて案件アサインを検討してくれるのです。
全ての企業がそうではありませんが、社員のキャリアパスを考えることが企業成長に繋がると考えているところもあるので、しっかりと企業を見極めて慎重に選んでいくことが大切です。
良いSES企業とは?見分けるコツ
SES企業はよく見極めなければ冒頭からお伝えしているような悲惨な目に遭う可能性もあります。その理由として違法に近い経営を行うブラック企業が多いという事実があるからです。
ゆえにSESのメリットをフルに享受するためにはホワイトで良い企業を見つけていくことが重要です。すでにSESとして勤務している方は今のご自身の環境と照らし合わせて、今後のキャリアを検討する材料にしてみてください。
給与やボーナスが良い
エンジニアや技術力に重きを置いている企業であれば、給与やボーナスを見ればわかります。給与やボーナスは技術力や営業力を担保する一つの指標にもなります。また、福利厚生や費用負担の割合なども見ておくと良いでしょう。
社長がエンジニア出身
社長自身がエンジニア出身の場合はエンジニアとしての苦労に理解があるため、フォロー体制や環境整備が整っている傾向にあります。また、エンジニア時代のコネクションを活かして仕事に取り組んでいる可能性も高く、質や条件の良い案件を継続的に受注しているという傾向も強いのです。
エンドユーザーや元請け企業とのコネクションがある
希望している案件に携われるかどうかは営業力にかかっています。営業力の強さを示す指標の一つとして「エンドユーザーや元請け企業とのコネクションがあるか」という点が挙げられます。多重下請け構造になりがちなIT業界では下請けになればなるほど搾取されてしまいがち。直接エンドユーザーと取引をしているというのは、一つの指標になるでしょう。
評価や昇給の仕方に納得できるか
いくら給与やボーナスが良くても条件や評価の仕方が納得いくものでなければ、働いてみても不満な気持ちを抱いてしまいます。昇給のタイミングや評価制度の基準などが明確になっているかは一つの指標です。入社から数年経ってもあまり昇給していない場合や評価基準が曖昧な場合は気をつけた方が良いかもしれません。
実はSESが向いている人、向いていない人
ではSES企業で働くメリット、デメリットからSESが向いている人と向いていない人についても見ていきましょう。SESはきついという印象が根付いてしまっているかもしれませんが、きちんと企業を選べばメリットも十分にあります。
例えば、未経験でも積極的に雇ってくれる点や幅広い経験を積めるといった点はSESで働くからこそのメリットでしょう。一方で冒頭からお伝えしているような給与や残業時間などの部分もデメリットとしては存在しています。
以下ではSES企業のメリット・デメリットを認識しながら、向いている人・向いていない人についても触れていきます。一概にすべての人に当てはまるわけではありませんが、参考にしてみてくださいね。
メリット
きついと言われがちなSES企業で働くメリットは実はたくさんあります。もちろん、すべての企業がこの通りではありませんが、しっかりと見極めた上で就職すれば以下のようなメリットがあると言えるでしょう。
- 未経験でも就職しやすく、入社が難しい大企業やベンチャーの案件に参画できる
- 研修・教育制度が充実している企業であれば、スキルアップがしやすい
- 案件ごとに都度チームが組まれるのでマネジメント経験もしやすい
- 最新技術に触れられる機会が多い
- 万が一合わない案件や環境に配属されても、転職ではない形で環境を変えられる
- エンジニアがいてこそ成り立っているので、福利厚生が充実している
- SES契約の場合、通常期待される成果を挙げる善管注意義務はあるものの瑕疵担保責任は負わなくてもよい
ただし、これらのメリットはどうしても環境に依存してしまう部分が多く、企業によっては実現できない場合もあります。良い企業を見極めていくことの重要さはもうお分かりいただけているかと思います。
デメリット
SESのデメリットは会社によって価値観やエンジニアに対する待遇が全く異なるため、会社選びを誤ると冒頭からお伝えしているような「給与が低い」「残業が多い」「スキルアップができない」などの苦労を経験してしまうことになります。SESは未経験でも就職しやすい一方で、初心者には雑用ばかり任せ、教育体制が十分に整っていないというような企業も存在します。
他にも、クライアントに常駐して技術力を提供することが基本スタイルであるがゆえに、帰属意識が薄くなり、仕事に対するモチベーションを保ちにくいという性質もSESのデメリットと言えるでしょう。
向いている人
SESのメリット・デメリットを踏まえた上で向いている人・向いていない人の特徴についてもまとめていきます。
まず、SESが向いている人は以下のような特徴が挙げられます。
- スキルアップしたい人
- 経験が浅い人
- 飽きっぽい人
- 安定した企業で働きたい人
スキルアップしたい人や経験が浅い人でも教育・研修制度が充実しているSESであれば、着実なキャリアアップを目指せるでしょう。事業会社の場合はOJTがメインとなりますが、企業によっては教育担当者が付いてくれる場合もあります。
また、案件がコロコロ変わってしまうことも言い換えれば、常に新しい案件に携われるという意味ではメリットと感じる人もいるでしょう。特にずっと同じ業界やサービスで仕事を行うことに飽きてしまう人にとっては、転職をせずとも環境を変えられるので新鮮です。
その他、安定した企業で働きたい人にも実はおすすめです。SES企業の中でも幅広い業界・サービスの案件を持っている企業であれば、仮に一つの業界で不況が起こっても他の領域でフォローできるので、仕事がなくなるということは起こりません。このような観点では安定して仕事を獲得したい人にも向いていると言えるでしょう。
向いていない人
- スキルアップに興味がない人
- 一人で仕事を行いたい人
- 新しい環境に適応できない
SESの経験の中でスキルアップしようとする意欲がなければ、安い給与で長時間労働をしてつらい思いをするだけになってしまう可能性があります。SESの中でも自分の次のキャリアを見通しながら目的を持って働くことが非常に重要です。そのため、スキルアップや自己研鑽に興味がなく、ただ仕事をこなしたいというタイプの人にはSESの経験はただつらいものになってしまう可能性があります。
また、案件が短期間で次々に変わるため、人間関係も変わっていきます。そのため、自社、他社の社員問わずにプロジェクトチーム内の人とコミュニケーションを円滑に進めていく必要が出てくるので一人で仕事を行いたい人や新しい環境にすぐ馴染めないような人はSESの環境は厳しいと感じるかもしれません。
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まとめ
いかがでしたか。今回はSESという働き方の実態とメリット・デメリットを中心にお伝えしました。今回の内容を踏まえ、SESのキャリアアップについても向き合ってみましょう。同じSESであってもコンサルタントにステップアップするというキャリアパスを描ける企業もあります。確かに目の前の仕事だけを考えるとつらいときもあるかもしれませんが、長い目で見た時にはSESの経験を活かせるケースもあるのです。
自分自身が希望するエンジニアとしてのキャリア形成を叶えるためには、また自分の適性に合った企業を見つけるためにはキャリアの棚卸しを行うことや企業をきちんと見分けていく力が非常に重要になってきます。もちろん、自分一人でも情報収集することは可能ですが、詳しいことは専門家に相談する方が確実です。もし、今後のキャリア形成や自分のしたいことがわからないような状況にあるのであれば、一度エージェントに相談してみるのも一つの方法です。
以下の記事では社内SEのメリット・デメリットについてもまとめています。ぜひ併せて参考ください。