「組み込みエンジニアって具体的にどんな仕事をするの?」「必要なスキルや年収は?」と疑問に思っていませんか。
組み込みエンジニアは、家電や自動車、医療機器などの電子機器に組み込まれるソフトウェアを開発する技術者です。私たちの生活を支える多くの製品に関わるため、専門的なスキルが求められますが、その分やりがいのある職種です。
本記事では、組み込みエンジニアの具体的な仕事内容や平均年収、求められるスキルを詳しく解説します。また、役立つ資格や向いている人の特徴、将来性についても紹介するため、これから組み込みエンジニアを目指す方や転職を考えている方に役立つ情報が満載です。
本記事を読むことで、これから組み込みエンジニアを目指す方はもちろん、すでにエンジニアとして働いていて組み込み分野へのキャリアチェンジを考えている方にも、具体的な方向性や目標が見えてくるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
組み込みエンジニアの仕事内容
組み込みエンジニアは、家電製品や自動車、産業機械などに搭載されるソフトウェアの設計・開発を担当する技術職です。一般的なパソコンのような汎用コンピュータではなく、特定の目的に特化したハードウェアに組み込まれる制御システムの開発が主な業務です。
具体的な開発対象は多岐にわたります。例えば、工場の生産ラインを制御するシステムや、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスに搭載されるセンサー制御、家庭用エアコンや洗濯機などの家電製品に組み込まれるマイコン制御などを作り上げています。
業務内容としては、システム設計から開発、テスト、デバッグまでを一貫して担当する場合が一般的です。また、案件によってはハードウェア設計や製品の企画、保守・運用管理まで担当することもあります。
近年特にIoTやAI技術の進化により、組み込みエンジニアの役割はさらに拡大しています。機械を効率的に制御するシステムの開発は、多くの業界で重要視されており、今後も需要が高まる分野です。

組み込みエンジニアの平均年収
社内SE転職ナビが保有する組込エンジニアの年収は、最低年収の平均が491万円、最高年収の平均が847万円となっています。(2025年2月時点)。組み込みエンジニアの年収は、経験年数やスキルレベル、担当する製品分野によって大きく異なりますが、比較的高い給与水準の職種と言えるでしょう。
年収に影響を与える要因としては、まず役職が挙げられます。プロジェクトリーダーやマネージャーなどの管理職に就くことで、基本給とともに役職手当が加算されます。また、技術力も重要な要素です。特にIoTやAI、セキュリティなどの専門的なスキルを持つエンジニアは、より高い報酬を期待できます。
業界による違いも大きく、自動車や医療機器など、高い信頼性が求められる分野では、より高水準の給与が設定されている傾向があります。さらに、年収以外にも、業績連動型のボーナスや充実した福利厚生を提供する企業も多く、総合的な待遇の考慮が重要です。
組み込みエンジニアに求められるスキル
組み込みエンジニアは、ハードウェアとソフトウェアの両方の知識が求められる専門性の高い職種です。転職市場では、これらの技術スキルが採用の重要な判断基準となり、必要なスキルを習得していれば、キャリアチェンジのチャンスが広がります。
ここでは、組み込みエンジニアに求められる5つの重要なスキルについて詳しく解説していきます。
- プログラミング言語やOSの知識
- ハードウェアのスキル
- 技術文書の読解力(英語を含む)
- AIの知識
- 電子基板の知識
プログラミング言語やOSの知識
組み込みシステム開発では、C言語の習得がほぼ必須とされています。メモリ効率がよく、ハードウェア制御に向いているため、今でも多くの製品で採用されています。マイコン制御やセンサ制御など、低レイヤー寄りの処理にはC言語が適しています。
C++は、オブジェクト指向の概念を取り入れた言語で、IoTデバイスや複雑な制御系の開発によく使われます。ファームウェアのモジュール設計などで役立ちます。また、プロセッサを直接操作したり、最適化を極める場面ではアセンブリ言語の知識も必要になります。全てをアセンブリで書くことは稀ですが、一部だけ最適化するなど現場での応用はあります。
OSは、組み込みLinuxやリアルタイムOS(RTOS)が主流です。たとえば家電やFA機器ではRTOS、小型Linuxデバイス(ネットワーク機器、STBなど)では組み込みLinuxが使われます。それぞれの特性を理解し、適切なOSを選び運用できる力が求められます。
ハードウェアのスキル
組み込みエンジニアには、ソフトウェアの知識だけでなく、ハードウェアに関する深い理解が求められます。特に、電子回路の基礎知識や回路図の読解力は必須のスキルです。
プロジェクトによっては、回路図面のみを頼りに設計を進める場合もあり、各モジュールの機能や相互の関連性を正確に把握する必要があります。
また、マイコンやプロセッサの動作原理、メモリ管理、割り込み処理など、ハードウェアの基本的な仕組みの理解も重要です。センサーやアクチュエータなどの周辺機器との通信制御や、インターフェース設計においても、ハードウェアの知識は不可欠です。
さらに、発注者の要求を正確に理解し、最適なシステム設計を行うためには、ハードウェアの制約や特性を踏まえた上で、ソフトウェアの実装方針を決定する必要があります。このように、組み込みエンジニアは他のITエンジニアと比べて、より広範なハードウェアの知識が求められる職種といえます。
技術文書の読解力(英語を含む)
組み込みエンジニアにとって、仕様書やデータシートなどの技術文書を正確に読み解く力は重要です。特にハードウェア仕様や制御命令に関する情報は英語で提供されるケースが多いため、最低限の英語リーディングスキルは必要とされます。
とはいえ、英語での会話やビジネスメールを日常的に使う場面は少なく、多くの場合、辞書や翻訳ツールを併用しながら読み解く力があれば実務上は問題ありません。特定の製品やツールに関する技術情報を自力で調べられるかどうかが、実務での対応力を左右します。
AIの知識
近年、AIを活用した組み込み製品が増えており、AIに関する基本的な知識も求められるようになっています。特に、画像認識や音声認識といった分野では、組み込みデバイス上での機械学習モデルの推論処理が実用化されつつあります。
ただし、大規模なモデルを使うWebサービスとは違い、組み込み分野ではCPUやメモリの制約が厳しいため、軽量なモデルを使った実装や、推論専用のライブラリ(例:TensorFlow Lite、Edge Impulseなど)の活用が重要です。
また、「自分でAIモデルを構築する」よりも、「既存のモデルを選定し、組み込み環境に合わせて組み込む力」が現場で求められるケースが多いのが特徴です。AIの知識とともに、最適なモデル選択やパラメータ調整、動作検証のスキルが求められます。
電子基板の知識
組み込みエンジニアに求められる電子基板の知識は、年々その重要性を増しています。従来は電子回路設計エンジニアの専門領域とされていた基板設計や評価についても、基本的な理解が必要とされるようになってきました。
近年はIT人材の不足もあり、ソフトウェアエンジニアが基板設計の初期レビューに関わったり、試作段階でのデバッグに立ち会ったりするケースも増えています。たとえば、配線ミスによるGPIOの誤動作や、電圧降下によるセンサ不良など、ハード起因の不具合に対してソフトから原因を特定・回避するスキルが求められる場面もあります。
そのため、マイクロプロセッサの動作原理や電子基板の構造を理解し、ハードウェア側の制約を踏まえたソフトウェア設計を行える力は、組み込みエンジニアにとって不可欠なスキルとなっています。
組み込みエンジニアに役立つ資格
組み込みエンジニアには必須の資格は存在しませんが、産業機器や通信機器に搭載されるシステムの設計・開発には、高度な専門知識とスキルが求められます。資格取得は、自身の技術力を客観的に示す指標となり、キャリアアップや転職活動で大きなアドバンテージとなるでしょう。
ここでは、組み込みエンジニアに特に役立つ3つの重要な資格について詳しく解説していきます。
- 基本・応用情報技術者試験
- ETEC(組込み技術者試験制度)
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験
基本・応用情報技術者試験
ITエンジニアの基礎知識を身につけるために役立つ資格が、「基本情報技術者試験」と「応用情報技術者試験」です。これらは経済産業省が認定する国家資格であり、ソフトウェア開発の基本的な知識や技術が問われます。
組み込みシステムに特化した試験ではありませんが、プログラミングやシステム設計の理解を深められるため、組み込みエンジニアにとっても有益です。
特に、応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験よりも高度なスキルが求められ、プロジェクト管理や設計に関する知識も問われます。これに合格すると、実践的なスキルを持つことの証明になり、転職活動やキャリアアップの際に強みになるでしょう。
基本情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
応用情報技術者試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
ETEC(組込み技術者試験制度)
ETECは、組み込み技術の基礎力を測るための資格試験で、JASA(一般社団法人 組込みシステム技術協会)が実施しています。試験の結果によってA~Cの3段階評価が行われ、スキルレベルに応じた評価を得られます。
試験は「組込みソフトウェア技術者試験クラス2(エントリレベル)」と「クラス1(ミドルレベル)」の2段階で構成され、500点以上のスコアを獲得すると上位レベルの試験に挑戦できる制度です。
試験では、組み込みシステムの基礎知識からプログラミング技術、リアルタイムOS、ハードウェアの基礎知識まで、実務で必要となる幅広い知識が評価されます。特に、エントリレベルの試験は、組み込み開発未経験者や新入社員の教育指標としても活用されており、キャリアの初期段階での技術力向上に役立ちます。
国家資格ではないものの、組み込み分野の知識を体系的に学ぶのに適しており、未経験者や初学者がスキルアップを図るために有効な資格と言えるでしょう。
ETEC(組込み技術者試験制度) | JASA(一般社団法人 組込みシステム技術協会)
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は、情報処理技術者試験の高度試験区分の一つで、組み込みシステム開発における高度な専門知識を証明する国家資格です。
試験範囲には、組み込みシステムの設計・開発に関する知識だけでなく、IoT、ネットワーク、情報セキュリティ、ハードウェア・ソフトウェア設計などが含まれています。
試験では、選択問題のほかに記述式や論述式の問題も出題されるため、知識を理解するだけでなく、それを適切に説明する能力も求められます。実務経験を積みながら学習することで、より効果的に試験対策を進めることが可能です。
組み込みエンジニアとして専門性を高め、転職やキャリアアップの際に強みとなる資格です。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | 試験情報 | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
組み込みエンジニアに向いている人
組み込みエンジニアは、ソフトウェアとハードウェアの両方に関わる仕事です。そのため、システム開発に興味があるだけでなく、ものづくりに対する情熱や論理的思考力が求められます。また、他のエンジニアや関係者と協力しながら進める業務が多いため、コミュニケーション能力も重要な要素です。
ここでは、組み込みエンジニアに向いている人の特徴を詳しく紹介します。
- 新規開発に携わりたい人
- モノ作りが好きな人
- IoTの分野に興味がある人
- 論理的思考能力が高い人
- 円滑にコミュニケーションできる人
新規開発に携わりたい人
新規製品開発に関わりたい人は、組み込みエンジニアに向いています。組み込みエンジニアの魅力の一つは、最先端の製品開発に携われることです。
特に近年は自動運転技術やIoTデバイスなど、革新的な技術の開発が活発に行われており、エンジニアとして大きな可能性が広がっています。新しい製品の開発では、アイデアの段階から製品化まで一貫して関われることも多く、自身の発想や技術力を存分に発揮できる環境があります。
また、開発した製品が実際に市場に出て、多くのユーザーに使用されることで得られる達成感も、この職種ならではの魅力です。さらに、技術の進歩が速い分野であるため、常に新しい知識やスキルを習得できる機会も豊富です。
モノ作りが好きな人
組み込みエンジニアは、開発したシステムが実際の製品に組み込まれる仕事です。そのため、モノ作りが好きな人にとって、大きな魅力を感じられる職種といえます。
自分の設計したソフトウェアが機械の動作に直接影響を与え、実際に手を動かして形にできる点が特徴です。動作確認の際には、想定通りに動くことに達成感を得られるでしょう。
特に、ハードウェアと連携するプログラムを作ることで、よりリアルなモノ作りの実感を味わえます。開発した製品が実際に人々の生活を便利にしたり、社会に貢献したりする様子を目にできるのも、この職種の大きな魅力です。
完成品が世に出る喜びを味わいたい人にとって、組み込みエンジニアは魅力的な選択肢でしょう。
IoTの分野に興味がある人
IoT技術は、家電や自動車、産業機器などさまざまな製品に組み込まれ、私たちの生活を支えています。組み込みエンジニアは、これらの製品のシステム開発を担当するため、IoT分野に興味がある人にとって最適な仕事といえるでしょう。
スマート家電や環境センサー、セキュリティシステムなど、IoT製品の開発には組み込みソフトウェアが必要とされます。IoTデバイスの開発では、センサーデータの収集や通信プロトコルの実装、クラウドとの連携など、幅広い技術知識が求められます。
特に近年は、省電力化や安全性の確保など、新しい課題も増えており、技術者としての成長機会も豊富です。また、5Gの普及に伴い、より高度なIoTサービスの開発が期待されており、組み込みエンジニアの活躍の場は今後さらに広がっていくことが予想されます。
論理的思考能力が高い人
組み込みエンジニアの仕事では、論理的に物事を考え、適切な解決策を導き出す能力がある人が向いています。組み込みソフトウェアの開発では、高い信頼性と安定性が要求されるため、綿密な設計と厳密なテストが必要不可欠です。
そのため、問題の原因を論理的に分析し、効率的に解決できる能力が必要です。特に、リアルタイム性が求められる組み込みシステムでは、タイミングや処理順序に関する複雑な問題が発生することも多く、論理的な思考プロセスが問題解決の鍵となります。
また、ハードウェアの制約や性能要件を考慮しながら最適な設計を行う必要があり、様々な要素を総合的に判断する力も求められます。日々の開発作業では、コードの品質管理やデバッグ作業など、細かい検証作業も多いため、着実に作業を進められる慎重さも必要です。
円滑にコミュニケーションできる人
組み込みエンジニアは、単独で作業するだけでなく、多くの関係者と協力しながら開発を進めます。そのため、他のエンジニアやクライアントとの円滑なコミュニケーションを取る能力が必要です。
組み込みシステムの開発では、ハードウェア設計者や製品企画担当者、品質管理部門など、様々な職種の人々と協力して作業を進めます。そのため、自分の考えを分かりやすく伝え、他者の意見を適切に理解できるコミュニケーション能力が重要です。
特に近年は、グローバル化が進み、海外の開発拠点やパートナー企業との協業も増加しています。そのため、言語や文化の違いを超えて効果的なコミュニケーションを図れる能力が、より一層重要になってきています。
また、顧客との仕様調整や進捗報告など、技術的な内容を非技術者にも分かりやすく説明する機会も多く、相手に応じた適切なコミュニケーションスキルが求められるのです。
組み込みエンジニアの将来性
デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速とIoTの普及により、組み込みエンジニアの需要は今後も着実に拡大していくことが予想されます。特にAI技術の進化により、高度な制御システムの開発が求められるため、組み込みエンジニアは将来性の高い職種と言えるでしょう。
近年では、5G通信の本格普及やスマートシティの実現に向けて、あらゆるモノがインターネットにつながるIoT社会が急速に発展しています。家電製品や自動車、産業機器など、私たちの身の回りのあらゆる機器にコンピュータやマイコンが搭載され、それらを制御するソフトウェアの需要は年々増加しています。
例えば、自動車業界では、電動化や自動運転技術の進展により、高度な組み込み技術が不可欠です。また、医療機器や航空宇宙産業など、安全性が求められる分野では、より精密な組み込みシステムの開発が必要とされるため、専門知識を持つエンジニアの需要は高まり続けると考えられます。
今後もAIやIoTの進化とともに、組み込みエンジニアの活躍の場は拡大し続けるでしょう。
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まとめ
本記事では、組み込みエンジニアの仕事内容や年収、必要なスキル、役立つ資格、向いている人の特徴、将来性について詳しく解説しました。組み込みエンジニアは、私たちの生活に欠かせない様々な機器のシステム開発を担う、やりがいのある職種です。
IoTやAIの発展により、組み込みシステムの需要は着実に増加しており、キャリアの選択肢も広がっています。必要なスキルとしては、C言語やC++などのプログラミング言語の知識はもちろん、ハードウェアや電子基盤の理解、さらには英語力やAIの知識まで求められます。
また、基本情報技術者試験やETECなどの資格取得も、キャリアアップの重要な要素です。モノ作りが好きで、新しい技術に興味があり、論理的思考力を持つ方には特に向いている職種と言えるでしょう。
ぜひ、組み込み分野への参入を視野に入れた新たなスキル習得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。