近年、日本の企業におけるIT人材の不足が深刻な課題となっています。少子高齢化やデジタル化の加速によって、国内人材だけでは需要に追いつかなくなっているためです。その解決策のひとつとして注目されているのが、グローバルIT人材の採用・活用です。
本記事では、なぜグローバル人材がIT分野で注目されているのか、どのように採用し、活用すべきかを具体的に解説します。
ここでいう「グローバル人材」とは、外国籍の人に限らず、語学力や異文化対応力、国際的なビジネス経験を持つ日本人を含む広義の人材像を指します。多様な価値観やスキルを持つ人材の活用は、IT人材不足の解消だけでなく、技術力や組織の柔軟性を高める可能性を秘めています。

なぜグローバルIT人材が注目されているのか
厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)によると、令和6年10月末時点の外国人労働者数は過去最多を更新しました。約230万人に達しており、今や欠かせない人材となっています。グローバル人材がこれだけ注目されている理由について、以下の4つの視点で解説します。
- 日本のIT人材が不足している
- グローバルIT人材が増加している
- 日本が高度人材ポイント制度を導入した
- 外国人の日本移住者が増えている
日本のIT人材が不足している
少子高齢化に伴う労働人口の影響もあり、日本のIT人材不足は深刻な課題です。国内のデジタル化が急速に進展している一方で、IT人材の供給が追いついていないからです。経済産業省の調査によると、2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると予測されています。
労働人口の減少だけでなく、IT技術の高度化・多様化に対応できる人材育成の遅れも影響しています。IT化やDXを推進しているものの、対応できる人材の不足を理由に事業の推進が滞ってしまうケースもあるでしょう。
企業はグローバルな視点からIT人材を確保し、国内のIT人材不足を補わなければなりません。グローバルIT人材の活用は、企業のデジタル化戦略を成功に導くための重要な鍵なのです。
グローバルに活躍できる人材へのニーズが高まっている
国内市場の成熟に伴い、海外展開を視野に入れる企業が増加しています。そのなかで、語学力・国際感覚・異文化理解力を備えた人材=グローバル人材へのニーズが高まっています。
外国籍のIT人材に加え、海外留学経験や外資系企業での勤務経験を持つ日本人も、グローバル人材として注目されています。こうした人材は、国際的なコミュニケーションを担えるだけでなく、国内外のチームを橋渡しする存在としても期待されています。
組織の多様性が企業価値を高める
グローバル人材を受け入れることで、組織に多様な視点や価値観が加わります。単なるITスキルだけでなく、文化の違いを前提とした柔軟な意思決定やチームマネジメント力が求められる現代において、多様性は企業の競争力そのものといえます。
多言語対応、海外市場対応、多国籍チームでのプロジェクト推進など、グローバル人材が活躍できるフィールドは確実に広がっています。
グローバルIT人材を採用する方法
グローバルIT人材が注目されている理由を知れば、すぐにでも採用・活用の検討を始めようとする方もいます。ただ、グローバルIT人材の採用は、これまでの日本人対象の方法ではうまく行かない場合もあります。
ここからはグローバルIT人材を採用する方法について、以下の3つの視点で見ていきましょう。紹介する内容を参考にして、理想的なグローバルIT人材の採用を実現してください。
- 人材紹介サービスを活用する
- メディア・SNSを活用する
- リファラル採用
人材紹介サービスを活用する
語学力や国際経験を備えたIT人材は、特化型の人材紹介サービスを通じて出会うのが効果的です。外国籍のエンジニアに限らず、海外駐在経験のある日本人、帰国子女、外資経験者なども候補となります。ビザの状況やスキルセット、日本語・英語での業務対応力などを事前に確認したうえで紹介されるため、ミスマッチを防ぎやすいのも特徴です。
IT人材に特化した人材紹介会社は自社の人材データベースを保有しており、企業のニーズに合致する人材を紹介してくれます。給与交渉や入社後のフォローアップなどもサポートしてくれる場合もあり、企業と求職者の双方にとって安心です。費用はかかるものの、採用活動にかかる時間や労力を大幅に削減でき、優秀な人材を確実に獲得できる可能性が高まります。
メディア・SNSを活用する
LinkedInやX(旧Twitter)、YouTubeなどのSNSを活用し、企業の技術的な強みやチームの雰囲気、キャリアアップの事例などを発信することで、グローバル志向の人材からの認知・共感を得られる可能性が高まります。
SNS発信に加えて、外国人エンジニア向けの求人サイトや技術系コミュニティにも積極的に情報を掲載することで、応募の接点を増やすことができます。また、エンジニア自身が情報収集に使っているハッシュタグや検索キーワードを意識するなど、発信の工夫も重要です。
リファラル採用
すでにグローバル人材が社内にいる場合は、母国や前職でのつながりを活かして紹介してもらうリファラル採用も有効です。文化的なフィット感が高く、信頼関係をもとに入社後の定着率も高まりやすい傾向があります。
また、外国籍・海外経験者に限らず、英語対応や国際プロジェクト経験者など、グローバル要素を持つネットワークを社内で掘り起こすことも重要です。
グローバルIT人材の採用を成功させるポイント
グローバルIT人材の採用には、言語や文化の違いやスキルセットの評価など、国内人材の採用とは異なる難しさも伴います。優秀なグローバルIT人材を獲得するためには、適切な体制づくりが不可欠です。
本項では、企業がグローバルIT人材の採用で成功するための重要なポイントを以下の3つの視点で解説します。
- 自社が求めているグローバル人材像を明確にする
- 学歴や実務経験を確認する
- 日本語でのコミュニケーション力を確認する
自社が求めているグローバル人材像を明確にする
優秀なグローバルIT人材を採用するには、自社がどのような人材を求めているのかを明確に定義する必要があります。人材像が曖昧なまま採用活動を進めても、ミスマッチが起こりやすく、採用後の活躍が期待できないからです。
開発分野や求めるスキルセット、必要な語学力、勤務時間、チームワークのスタイルなどを具体的に定義しましょう。「フロントエンド開発経験3年以上、React.jsのスキルを持つ、ビジネスレベルの英語力、柔軟な働き方が可能な人材」といったように、具体的な要件を定めます。社内の業務プロセスに適応できるか、文化的な適性もチェックしなければなりません。
国籍ではなく、「どのようなグローバル対応力が必要か」を明確にすることが成功のカギです。語学力、技術分野、対応地域、リモートワーク対応力など、自社の事業戦略に沿った条件を整理しましょう。
実務経験や国際経験を評価する
グローバル人材としての適応力を見極めるうえで、実務経験や国際経験の有無は重要な指標です。たとえば、海外勤務経験やグローバルプロジェクトへの参加、外国籍メンバーと連携した開発経験などがあれば、実際に異文化環境下で成果を出してきた実績として高く評価できます。
また、単なる「語学スキル」ではなく、「語学を使ってどのような業務成果を出したか」「異なる業務習慣のなかでどう対応したか」まで掘り下げて確認することが、採用後の活躍につながります。
外国籍人材の場合は、過去の日本企業での勤務経験や、日本語を使用したビジネス実績があるかどうかも重要なチェックポイントとなります。
コミュニケーション力と柔軟性を確認する
グローバル人材の採用においては、語学スキル以上に「異なる文化や働き方を受け入れながら、協調的に仕事ができる柔軟性」が求められます。たとえ高い技術力を持っていても、価値観の違いに対応できなければチーム内での摩擦やパフォーマンス低下につながりかねません。
そのため、面接では「これまでに異文化間で困難を感じた場面」「それをどう乗り越えたか」といった実体験ベースの質問が効果的です。過去の経験からどのように学び、行動に反映できたかを見ることで、柔軟性や自己認識力も評価できます。
また、単なる協調性ではなく「相手に合わせつつも自分の意見を伝えられるか」「言葉の壁をどう補ってきたか」といった具体的なやり取りも確認すると、実務におけるコミュニケーション能力の精度が見えてきます。
グローバルIT人材の活用方法
グローバル人材の能力を最大限に引き出し、企業の成長につなげるには、採用して終わりではなく、受け入れ体制・育成・評価の仕組みまで一貫して設計することが重要となります。
ここでは、外国籍の人材や海外経験を持つ人材を含む「グローバル人材」が社内で力を発揮できるようにするための具体的な活用方法を紹介します。
多様な働き方への柔軟な対応
グローバル人材が働きやすい環境を整える第一歩は、柔軟な働き方の導入です。
国によっては宗教行事や祝日、ライフスタイルに違いがあり、フルタイム・出社前提の働き方に馴染みにくいケースもあります。
たとえば、
- フレックスタイム制度の導入
- リモートワーク前提の体制づくり
- 祝日のローカル設定(出勤日を振替できる仕組み)
などを整えることで、パフォーマンスを引き出しやすくなります。
情報共有と業務の“言語バリア”を減らす
社内のナレッジやマニュアル、業務指示がすべて日本語だと、グローバル人材はキャッチアップに時間がかかります。
だからこそ、以下のような「バリアを下げる工夫」が有効です。
- 英語併記の業務マニュアルやドキュメントの整備(要点だけでも十分)
- 会議資料の簡易英訳
- 翻訳ツールの導入(DeepLやGoogle翻訳+チャット連携)
必ずしも社内公用語を英語にする必要はなく、「理解を助ける仕組み」があるかどうかが重要です。
異文化理解を促進するチーム設計
文化背景の違うメンバーがいるチームでは、些細なことで誤解やストレスが生じがちです。
ただし、それは「問題」ではなく「前提」です。
グローバル人材を活かすには、以下のようなチーム設計が効果的です。
- オンボーディング時に“会社の当たり前”を言語化する(例:「ほうれんそう」「空気を読む」は説明が必要)
- 月1回の1on1やチームチェックインで、言語化しにくい悩みを吸い上げる
- 雑談の場やランチMTGなど、関係構築の“余白”をつくる
文化の違いは「ズレ」ではなく、イノベーションの種です。それを活かせるチーム文化の醸成が求められます。
プロダクト開発・事業推進に視点を活かす
グローバル人材は、「社内多様性の象徴」としてだけでなく、事業面でも大きな価値を発揮します。たとえば、
- 海外市場向けプロダクト開発の仮説検証
- 多言語対応UI/UX設計のアドバイザー
- ローカル習慣に即したマーケティング企画
など、「現地の肌感覚」があるからこそ提案できる視点をビジネスに転用できます。
単なる“人材の多様性”にとどめず、“価値創出の源泉”として捉えてみましょう。
キャリアパスと評価の明確化
グローバル人材は、「どのように成長できるか」「自分の強みがどう評価されるか」を重視する傾向があります。
にもかかわらず、日本企業では評価軸やキャリアパスが曖昧なケースも多く、早期離職につながることもあります。
以下のような対応が求められます。
- 成果に対する評価指標の明文化
- 技術職・マネジメント職の明確な分岐とロールモデル提示
- 四半期に一度のフィードバックと対話の機会
特に外国籍人材にとっては「評価がどう決まるのか」がブラックボックスになりやすいため、説明責任を持つことが信頼形成につながります。
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まとめ
本記事では、多くの企業が直面しているIT人材不足を解消する鍵として、グローバルIT人材の採用と活用について解説しました。グローバルIT人材は、高度なスキルや多様な視点を持つだけでなく、24時間体制の構築や多言語対応、グローバル市場への進出を加速させる力を持っています。
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