エンジニアにとって、なぜコミュニケーション力のアップが大切なのでしょうか。この記事では、開発エンジニアにとってコミュニケーションが大切な理由と苦手意識を解消する方法、コミュニケーション力を上げる方法、メリットについて説明していきます。
この記事は以下の方におすすめです!
- 技術はあるけど、チームでのやり取りに苦手意識があるエンジニア
- プロジェクトが思うように進まないと感じている開発者
- リーダーやマネージャーを目指すエンジニア

ライター:firstriver
30年以上の会社生活を経験。家電機器に組み込むマイクロコンピュータのソフトウェアと周辺回路の設計を皮切りに、ソフトウェア開発部門、技術開発部門の開発リーダーやマネージャーに。その後、ケーブルテレビ配信の技術規格策定に携わる。現在は、化学メーカーの情報システム部門で各種システムやツールの導入・運用を担当。
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開発プロジェクトでコミュニケーション力が大切な理由
エンジニアにとって、コミュニケーション力は技術力と同じくらい重要なスキルです。どれだけ優れた技術を持っていても、それを適切に伝えたり、周囲と協力して進めたりできなければ、プロジェクトの成功にはつながらないからです。
ここでは、エンジニアにとってのコミュニケーションの重要性を、以下の3つの観点から説明します。
- クライアントへの対応
- プロジェクトの推進
- 関係者との情報共有
クライアントへの対応
エンジニアは新たな製品やサービスを採用してもらうために、社内外のクライアントに対して、魅力的に感じてもらえる提案ができなければなりません。そのためには、豊富な語彙力や専門的な知識をもってわかりやすく説明できる力が求められます。
また新製品やサービスに関して、クライアントから様々な要望が出されますが、必ずしも整理されたものとは限りません。「〇〇のようなイメージ」「○○のような機能が欲しい」のように抽象的でわかりにくい表現で説明されることも多くあります。
このような場面では、相手の意図をくみ取り、具体的な仕様にまとめる能力が要求されます。そのためには、質問を通じて相手の考えを引き出し、情報を整理する力が必要です。
こうしたスキルを身につけることで、クライアントとの認識のズレを減らし、スムーズな開発につなげることができます。
プロジェクトの推進
開発プロジェクトでは、メンバー間におけるスムーズなコミュニケーションが作業の効率や品質を大きく左右します。各メンバーが担当する開発ブロックは密接に関係し合っているため、互いの状況を共有しながら進めることが重要となります。
またマネージャーやリーダーの立場では、メンバーの進捗を把握し、課題が発生した際に迅速かつ適切に対応することが求められます。対応の遅れは直接プロジェクトの遅延につながるため、日頃から円滑なコミュニケーションを意識することが重要です。
このために、普段からメンバーと密にコミュニケーションを取り、課題が発生した際にすぐに気づける関係を築くことが、プロジェクトを円滑に進める上でのカギとなります。
関係者との情報共有
開発プロジェクトではスケジュールに制約があるため、課題が発生した際には迅速に対応する必要があります。 しかし、一人で解決できることには限界があるでしょう。だからこそ、自分の状況をチーム内で共有し、周囲と協力しながら進めることが重要です。
自分の担当ブロックで課題が発生した場合、複数のメンバーでいろんな角度から課題を分析することにより、自分一人では考えも及ばないような解決策が出てくることもあります。
【複数メンバーでの課題分析が課題解決につながった例】
ある機能ブロックを開発していた際、特定の条件下でのみ発生する問題に直面しました。発生頻度が極めて低く、原因を特定できずにいました。
開発状況を理解しているチームメンバーと相談しながら検証を進めていたところ、あるメンバーがふと「その条件を外して試してみたら?」と提案しました。当初は「そんな意味のないことをしても…」と思いましたが、試してみると、今まで再現できなかった問題が簡単に再現できたのです。
問題が再現できれば、原因の究明がスムーズになり、解決策もすぐに見つかりました。このように、異なる視点を持つメンバーと情報を共有することで、一人では思いつかなかった解決策が生まれることがあります。
コミュニケーションの苦手意識を解消する方法
コミュニケーションが苦手だと感じるエンジニアの方もいるかもしれません。話すことに自信がない、うまく伝えられないと感じることもあるでしょう。でも、仕事を進める上では避けて通れない場面が多いものです。そこで、苦手意識を和らげ、少しでも話しやすくなる方法を紹介します。
苦手意識を解消する方法について説明していきます。
- 話す前に伝えたいことを再確認する
- 相手の話を途中で止めたりしない
- 話し方の速度や抑揚を考慮する
話す前に伝えたいことを再確認する
人と話すことに苦手意識を持っている場合には、慣れるまでの間、相手に伝えたいことを事前に自分の頭の中で整理し、自分に対して話してみると効果的です。そうすると、簡単に話せると思っていても、実はつかえてしまいうまく説明できないことを発見できたりします。
また、伝えたいことを整理することで、要点がはっきりしていないことに気づくこともあります。このような点を改善しつつ何度か繰り返し反すうするうちに、自然に要点を整理する習慣ができ、スムーズに話すことができるようになります。
特に大切な状況においては、以上のような事前練習を忘れることなく実行することにより、そのうちに、事前練習に時間をかけることなく短時間で事前確認ができるようになり自然にスムーズに話すことができるようになります。
まずは聞く力を鍛える
話すことに抵抗がある場合、まず「聞く力」を鍛えるのも一つの方法です。会話は一方的に話すものではなく、相手の話を理解しながら進めるもの。話すことが苦手でも、相手の話をよく聞くことで、自然と会話に参加しやすくなります。
特に仕事では「認識のズレをなくすこと」「曖昧な部分を共有すること」が重要です。言いにくくても、「ここはどうなっていますか?」と一言確認するだけで、トラブルを防げることも多いです。話しやすさよりも、仕事を円滑に進めるために必要なこととして考えたほうが、気持ちが楽になるかもしれません。
自分の話し方に慣れる
自分の話す姿を客観的に見ると、違和感を覚えたり、マイナス評価をつけがちです。しかしそれは、単に慣れていないだけの場合が多いです。まずは、ご自身の話し方を知ることから始めましょう。例えば、スマホで録音・録画してみる、録画済のWeb会議を見直す等すると「思ったより早口だった」「抑揚がない」といった点に気づくことができます。
最初は違和感があっても気にしすぎる必要はありません。何度か聞いたり見たりするうちに、「意外と普通かも」と感じられるようになってきます。また、信頼できる人にフィードバックをもらうのも効果的です。「聞き取りやすい?」「分かりにくいところはあった?」と聞いてみると、案外「全然問題ない」と言われることも。自分が思っているより、他人は話し方を気にしていないものです。
こうして自分の話し方に慣れてくると、自然と苦手意識が薄れ、コミュニケーションへの抵抗感も減っていきます。
開発プロジェクトを成功に導くコミュニケーション術5つ
プロジェクトを円滑に進めるためには、技術力だけでなく、適切な意思疎通ができる力も不可欠です。相手の意図を正しく理解し、自分の考えを明確に伝えることで、誤解や手戻りを防ぎ、スムーズな進行につながります。
ここでは、エンジニアが実践すべき5つのコミュニケーション術を紹介します。
- 相手の話をよく聞く
- 平易な表現に心がける
- 結論や目的から話す
- 具体例を挙げて説明する
- 別の言葉で言い換える、表現方法をかえてみる
相手の話をよく聞く
「苦手意識をなくす方法」でも触れたように、話すことに自信がなくても、まずは相手の話をしっかり聞くことから始めるだけで、会話のハードルは大きく下がります。これは、チーム内の技術的な議論や、クライアントとの要件整理、関係者との交渉の場面でも同じです。相手の意図を正しく理解しなければ、的確な回答や提案をすることはできません。
交渉や議論では、相手の立場や考え方を把握することで、互いに納得できる最適な落としどころを見つけやすくなります。 また、提案の際にも、相手のニーズをしっかり理解できていれば、より刺さる提案ができるようになります。
つまり、話すのが苦手でも、まずは「聞くこと」に集中することで、自然と会話の流れに乗れるようになり、結果的にコミュニケーション全体がスムーズになっていくのです。
平易な表現を心がける
交渉や提案の場面では、できるだけシンプルで平易な言葉を使うことが重要です。
専門的な内容を高度な用語で説明するのは楽ですが、聞き手が理解できなければ意味がありません。むしろ、難しい内容を分かりやすく伝えるスキルこそ、優れたエンジニアに求められるものです。
技術的な説明をする際には、専門用語ばかりを使うのではなく、相手の理解レベルに応じた表現に言い換える習慣をつけましょう。これは、単に相手に伝わりやすくなるだけでなく、自分の理解を深めることにもつながります。


結論や目的から話す
相手が何の話なのか分からないまま会話が進むと、聞き手は身構えたり、話の趣旨を見失ったりします。そこで重要なのが、結論や目的を最初に伝えることです。例えば、開発プロジェクトで他のメンバーに協力を依頼する場合、以下の2つのパターンでは印象が大きく異なります。
結論を最後に伝える場合
「〇〇ブロックの開発で、解決できない問題が発生しています。その問題は〇サブブロック内で発生しており、〇〇に起因していると推測されます。
症状としては、ユーザー操作ができなくなる致命的な問題です。試行錯誤した結果、~~なときは問題が発生しないことは分かったのですが、~~だと再現し、~~の影響かもしれません。しかし、まだ〇〇の挙動が完全には把握できておらず、原因を特定しきれていません。
Bさん、問題解決に協力してもらえませんか?」
このように、課題の説明を長々とした後でようやく協力のお願いが来ると、Bさんは「何の話なのか?」「自分に何をしてほしいのか?」を考えながら聞く必要があり、負担が大きくなります。
結論を最初に伝える場合
「Bさん、〇〇ブロックの開発で発生している致命的な問題について、調査の方針を相談したいです。(結論)
現在、〇サブブロック内で特定の条件下でユーザー操作ができなくなる現象が発生しています。(理由)
いろいろ試した結果、~~のときは問題が発生せず、~~のときにのみ再現します。ただ、〇〇の挙動がまだ把握しきれておらず、根本的な原因の特定ができていません。(具体例)
今後、どの方向で調査を進めるのが良いか、一緒に考えてもらえますか?」(再び結論)
後者の伝え方なら、Bさんは話の冒頭で「何を求められているのか?」が明確に理解できるため、その後の説明をよりスムーズに聞くことができ、話を聞き終わった時点で回答しやすくなります。
具体例を挙げて説明する
抽象的な話だけでは、聞き手がイメージしづらくなります。そのため、具体例を交えて説明することが大切です。
例えば、「この機能のレスポンスが遅い」と伝えるよりも、「1回のリクエストに3秒以上かかる状況になっている」と伝えた方が、問題の深刻度が明確になります。
具体例を示すことで、聞き手が「なるほど、それなら〇〇の方法で改善できるかも」と、より適切な対応を考えやすくなります。
別の言葉で言い換える、表現方法をかえてみる
一度説明して伝わらなかった場合、そのまま同じ言葉を繰り返しても意味がありません。そんなときは、別の言葉に言い換えたり、異なる表現を試したりすることが有効です。
たとえば、技術的な仕様を説明して相手が理解していない様子だった場合、図やアナロジーを使って説明することで、より伝わりやすくなることがあります。
「このデータ構造はツリー構造になっていて、各ノードに対して〇〇の処理をする」と言って伝わらなければ、
「イメージとしては、フォルダ階層みたいなもので、親フォルダの下に複数の子フォルダがある感じです」と言い換えると、理解しやすくなることがあります。
伝わらないときは、「相手の理解しやすい言葉は何か?」を考え、柔軟に表現を変えることが大切です。
コミュニケーション能力アップのメリット
コミュニケーション能力を高めると、仕事の進め方や人との関わり方が変わり、業務がスムーズになります。特にエンジニアの場合、技術だけでなく、周囲と円滑にやり取りする力があると、チームでの仕事が格段にやりやすくなります。
ここでは、コミュニケーション能力を向上させることで得られる主なメリットを紹介します。
信頼関係を構築できる
コミュニケーションが円滑になると、チームのメンバーとスムーズにやり取りできるようになります。業務の情報共有だけでなく、お互いの人となりも理解しやすくなるため、自然と信頼関係が深まります。
信頼関係ができると、仕事の進め方にも良い影響があります。
- やり取りに余計な手間がかからなくなる(説明しなくても意図をくみ取ってもらいやすい)
- 情報交換がしやすくなり、必要な情報が手に入りやすくなる
- 困ったときに相談しやすくなり、早めに解決策を見つけられる
こうした環境が整うと、チーム全体の仕事の進み方もスムーズになっていきます。
マネージャーに必要なスキルが身につく
マネージャーの仕事には、メンバーとのやり取りが欠かせません。プロジェクトを円滑に進めるには、メンバー一人ひとりの状況を把握し、適切にサポートすることが求められます。
コミュニケーション能力が向上すると、メンバーの得意・不得意、困っていることを把握しやすくなるため、適切な指示やフォローができるようになります。
リーダーやマネージャーを目指す場合、技術力だけでなく、こうした周囲との関わり方を意識することが大切です。
仕事を効率よく進められる
開発プロジェクトでは、チームの状況を把握しながら仕事を進めることが求められます。コミュニケーション能力が高まると、次のような点で仕事の進め方が変わります。
- チーム全体の進捗が分かりやすくなり、無駄な手戻りが減る
- 自分の担当範囲で課題が発生しても、すぐに相談・対応できる
- 他のメンバーの課題解決を手伝いやすくなり、プロジェクト全体の進行をスムーズにできる
情報のやり取りがスムーズになることで、自分の作業に集中しやすくなるのも大きなメリットです。
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まとめ
エンジニアにとってコミュニケーションが必要とされる場面、コミュニケーションの苦手意識を解消する方法について説明し、コミュニケーション力をアップさせる方法、アップできた場合のメリットについて説明しました。
エンジニアにとって、コミュニケーション力のアップは、仕事の成果を効率よく上げていくための大切な条件の1つであることを理解頂けたものと思います。この記事が、読者の方々のコミュニケーション力アップのために参考となれば幸いです。