今後ニーズが高まるITエンジニアとは?企業のニーズを理解して転職を有利に進めよう。

私は30年以上の間、家電メーカーにおいてITエンジニアやマネージャを経験してきました。そんな私の立場から、

  • 現状ITエンジニアが不足している理由
  • 今後ニーズが増していくITエンジニアの職種
  • どの様なスキルを持つITエンジニアが必要とされるか
  • 企業が取るべき対応から学ぶ、転職活動のポイント

以上によりITエンジニアが転職する際に、有利に進めるための情報とすることを想定し、説明していきます。

この記事は以下の方におすすめです!

・転職活動において企業のニーズを知っておきたい方
・働くなかで磨くべきスキルを知りたい方

firstriver

ライター:firstriver

30年以上の会社生活を経験。家電機器に組み込むマイクロコンピュータのソフトウェアと周辺回路の設計を皮切りに、ソフトウェア開発部門、技術開発部門の開発リーダーやマネージャーに。その後、ケーブルテレビ配信の技術規格策定に携わる。現在は、化学メーカーの情報システム部門で各種システムやツールの導入・運用を担当。

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この記事の目次

IT人材不足の現状と今後の予測

経産省のデータ(図1)によると2024年時点で約40万人のIT人材が不足しているとの数字が示され、今後、更にこの数字は増加傾向にあり、2030年時点では約59万人の不足となると予測しています。

この数字は平均的な推移として予測した場合の数字で、高位シナリオ(ワーストケース)で予測すると2030年に79万人が不足すると予測しています。

図1 出典「経済産業省参考資料(IT人材育成の状況等について)」

IT人材不足の理由

なぜ、このように慢性的にIT人材が不足する状況が続くのか、IT人材不足の主な理由を以下の観点から説明します。

  • IT市場が成長を続けている
  • 技術革新のスピードが速い
  • 一人前になるまで時間がかかる

IT市場が成長を続けている

2021年に発表された総務省資料(図2)によると、2017年時点におけるIT市場規模は12.153兆円で、それ以降直線的に増加傾向が続き2023年は13.88兆円まで拡大しています。IT市場規模は、総務省の資料に沿って考えるならば、今後も拡大を持続していくものと感じます。

図2 出典 総務省資料「ICT産業の動向」

技術革新のスピードが速い

IT分野における技術革新のスピードは非常に早く、AI技術、ディープラーニング、生成AIなどの他、自然言語処理の技術革新により自然な会話ができるコンピュータの出現などが代表的な例として挙げられます。

エンジニアはこのような新技術にキャッチアップするために、常に新たな知識を取り入れる学習が求められるため、エンジニアへの負荷はとても大きいものです。

一人前になるまで時間がかかる

技術革新のスピードの速さに加え技術の高度化により、エンジニアが習得しなければならない技術の範囲や深さが増しています。その結果、新入社員として入社した人がITエンジニアとして、一通りの開発業務をこなせるようになるまでの時間が従来以上にかかるようになってきています。

このような実態を踏まえると会社側としては、入社してきた新入社員がITエンジニアとして一人前になるまでの期間は、エンジニアの工数としてカウントしない考え方で運営せざるをえません。 ITエンジニアの人材不足は今に始まったことではなくここ数十年来、状況に変化はありません。

この状況を理解した上で、日々の業務を確実にこなしつつITエンジニアとして技術をキャッチアップして自分のものにする努力を怠らなければ、今後も必要とされる人材であり続けられるはずです。

主なITエンジニアの職種

今後、一層必要とされ、ニーズが増してくるであろうエンジニアの職種を以下に挙げると共に具体的に説明していきます。

  • マネジメント系エンジニア
  • インフラ系エンジニア
  • セキュリティエンジニア
  • Webエンジニア
  • 先端技術エンジニア

マネジメント系エンジニア

マネジメント系エンジニアに相当するのは、プロジェクトマネージャやエンジニアリングマネージャです。

エンジニアリングチームや開発プロジェクトを管理し、効果的な運営を行い目標の達成を目指す役割を担います。幅の広い専門知識とマネジメント力の双方が必要とされます。

マネジメント力とは、各種チームを先導できるリーダーシップ、チーム内外の人達としっかりとした対応ができるコミュニケーションスキルに加え、課題解決力、スケジュール管理力など様々な能力が要求されます。これらの力は、様々な業務やプロジェクトを経験しながら少しずつ体得していくスキルです。

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インフラ系エンジニア

IT環境を構築するためにこれを設計し運用、保守を行うエンジニアのことを指します。

サーバに特化し選定や設計、テスト、運用を行うサーバエンジニア、ネットワーク環境を構築し、運用することで安定したネットワーク環境を提供するネットワークエンジニア、データベースの開発、運用、保守において中心的な役割を果たすデータベースエンジニアがインフラ系エンジニアになります。

インフラ系エンジニアの技術範囲は非常に広く、ITインフラを構成する技術は、進歩し続けているために常に学習を継続する必要があります。

サーバエンジニア向けの試験として有名なのは、ネットワーク機器メーカーであるCISCO社が実施するCCNA(Cisco Certified Network Associate)です。業界内では有名な資格試験なので、合格すればネットワークエンジニアとして転職したい場合に有利です。ネットワークエンジニアまたはデータベースエンジニアとして活躍するためには、IPAが実施する「ネットワークスペシャリスト試験」、「データベーススペシャリスト試験」にパスする方法があります。

※IPA(情報処理推進機構)
IT推進による産業強化や情報セキュリティ向上など国のIT製作実施の要である経済産業省の所轄する公的機関

セキュリティエンジニア

企業における情報セキュリティのポリシーをしっかり構築し、サイバー攻撃に対して強靭なシステムを構築し運用する役割を担います。インシデント発生時に速やかな対応を行う体制を事前に構築しておくとともに、実際にインシデントが発生した場合に速やかな対応が求められます。

最近は、企業に対する外部からの攻撃による被害が頻繁に報告されています。社外秘データや顧客データの流出、マルウェアへの感染、ランサムウェアによる身代金要求など企業経営に直接的なダメージを与えかねない悪質な事例が報告されています。以上のような状況に対応するために、セキュリティエンジニアに求められる役割は、益々重要性を増してくるものと思います。

セキュリティエンジニアとして活躍するためには、IPAが実施する「情報セキュリティスペシャリスト試験」にパスする方法があります。この試験にパスすることで、セキュリティエンジニアとして転職する場合に有利です。

Webエンジニア

Web上で稼働する各種システム、ツールを開発するのがWebエンジニアです。Webエンジニアとして必要なスキルは多岐に渡るため特定することはできませんが、代表的なプログラミング技術として、サイトを構築するためのJavaScript、HTML5、CSSが挙げられます。

また、サーバ側のプログラミング言語としてPHP、Python、Ruby、Javaなどがあります。さらに、クラウドサービスを提供するためのamazon AWSやマイクロソフト Asure、Google Cloudを使いこなす技術も重要で、ITエンジニアとしての武器になります。

各種システムやツールは多機能化、多様化し複雑化していくため、これを支えるWebエンジニアのニーズが減少することは考えられません。

先端技術エンジニア

先端技術としてAI、IoT、ビッグデータなどを扱い各種システムやサービスを構築したり分析したりするのが先端技術エンジニアです。今やAIは製造業をはじめ、小売業や医療業界など多岐にわたる事業分野で活用されているため、この技術を持っていると転職の際に有利です。

IoT技術は、家電製品や建築物、車などとインターネットをつなぐことにより、システムの効率化や自動化などを実現する技術であり、今後一層普及されていくために関連する製品を販売するメーカーへの転職の際に有利です。

ビッグデータの収集や調整及び管理を行うための環境構築と運用を行うデータエンジニアや、データを分析して事業への活用を行うデータサイエンティストも今後一層ニーズが高まることが予想されます。

今後求められるIT人材とは?

今後求められるIT人材のタイプを整理するとスペシャリストとゼネラリストに分類できます。両者の特徴と求められる理由について説明します。

ゼネラリスト

ITの世界において、特定の技術分野にとどまらず幅広い知見を有し、様々な技術分野における業務に対応することができるITゼネラリストは、常に高いニーズが続くものと考えられます。幅広い知識に加え、高いコミュニケーション能力による関係者との円滑なコミュニケーションが求められます。

また、各種課題に対して保有する幅の広い知識を活用し、効率的かつ効果的な解決策を導くことが出来る能力の保有が求められます。「主なITエンジニアの職種」で説明したマネジメント系エンジニアがゼネラリストと言えます。

少しだけ私の経験を紹介します。私の場合、組込系ソフトウェアエンジニアをキャリアのスタートとして、約10年間家電機器用の組込マイコンのソフトウェア設計を担当しました。

その後、リーダー的な役割を担うようになりチームを先導していく立場になりました。さらに経験を積むことにより、プロジェクトマネージャや技術部門のマネージャを担当しました。この流れで整理すると、リーダー以降プロジェクトマネージャや技術部門のマネージャはゼネラリストと言えます。

リーダー役を担ってくれるエンジニアが私の周りにいなかったことが、私がリーダーとしてチームのけん引役となった理由でしたが、以降ゼネラリストとしての道を続けていくことができたのは、決して嫌いではなかったからだと思います。

スペシャリスト

特定の技術分野において、高い専門スキルを有するエンジニアのことです。

「主なITエンジニアの職種」で説明したインフラ系エンジニア、セキュリティエンジニア、Webエンジニア、先端技術エンジニアは全てスペシャリストと言えます。

今後も継続的にIT市場規模が拡大していく以上、これらのスペシャリストはITエンジニアの中にあって高いニーズが続いていくものと思います。

企業として考えられるIT人材対策

今後ますます必要なIT人材の確保が困難となっていくことが予想される中で、企業として取るべき対応を以下の点で説明します。

  • 社内教育体制の強化
  • 外部委託・内部開発のすみわけ

ITエンジニアの皆さんが、企業側におけるIT人材対策の考え方を理解していると、企業のニーズに沿った対応が取れるので転職する際に有利です。企業側の考え方をしっかりと理解しておいてください。

社内教育体制の強化

社外からITエンジニアの確保が困難になっていくであろうことを想定し、企業としては社内教育体制の強化が必要です。

社内におけるIT人材の教育体制を強化し、社員のITスキルを強化していくことにより、社内におけるITの開発体制の強化を図ります。また、社内におけるジョブチェンジを行うことで、ITエンジニアの候補者を増やし、社内教育により、ITの開発体制の強化を図ります。

外部委託・内部開発のすみわけ

製品開発を例に挙げてみます。経営層から当初の開発計画を前倒しして、早期市場導入が求められることがよくあります。

このようなケースでは、早期に開発体制の強化が必要であると判断せざるを得ないことがあり、即戦力による体制を補強するために外部委託するまたは中途エンジニア採用を行うことにより対応することがあります。短期的ではあるもののそれなりの人数(体制)が必要な場合には、外部委託を選択します。

外部委託する場合の注意点として、会社としての得意な固有技術や売りとしている固有技術など、内部で大切に保有し維持・強化すべき部分は社内で開発を行い、それ以外の部分を外部委託する方針で進めるという点が挙げられます。固有技術の外部流出を防ぐためです。

他方で、持続的な体制強化がすぐに必要な場合には、中途採用を行う。並行して新入社員の採用も併用する方法を取るべきです。以上を参考までに、簡単に整理してみました(図3)

図3 開発体制強化方法

優秀なITエンジニアを獲得するために企業とるべき対応

優秀なITエンジニアを獲得するために企業が考えるべきことを以下の観点で説明します。

  • 採りたい人材の具体的なスキルを提示
  • 魅力的な採用条件を提示
  • 人材紹介サービスの活用
  • 自社内で育てる

ITエンジニアの皆さんが転職を検討する際に、企業が考えていることを知ることにより、有利に転職活動を進められます。転職を検討する際の参考としてください。

採りたい人材の具体的なスキルを提示

採用したい人材の条件を出来るだけ具体的に提示します。それにより、例えば、外部に委託する場合に集める人材にブレが出ず、期待する人材像に近い条件のエンジニアの採用が可能になります。

例えば「ITエンジニアとしての経験が5年以上で開発リーダーもしくはそれに準ずる役割の経験を有し、PythonまたはPHPのプログラミングによる開発経験が3年以上あること」などのようにピンポイントでほしい人材の条件を提示します。

こうした募集要項に対し、エンジニアとしては自身がぴったり合うものだけでなく、おおまかに開発の全体像や進行のイメージを持っておくとよいでしょう。すると、アピールすべきポイントが見えやすく、募集要項にはかかれていないものの親和性があると考えられるスキル・経験を伝えることもできます。

採用された後の働き方を具体的に伝える

求人には次のような項目を記載します。

【職務内容について】

  • 企業概要
  • 事業・サービスについて
  • 企業理念やMVV
  • 具体的な業務内容
  • ポジションの魅力
  • 組織構成
  • 開発環境・使用するツール等

求人概要

  • 雇用形態
  • 就業時間
  • 各種保険
  • 諸手当
  • 休日休暇

その他、会社側に対して、好感触を持ってもらえるようなそうなことはを出来る限り具体的に記述します。

例えば「配属予定の部署は和気あいあいとした雰囲気で職場の仲間は皆親切。職場はビルの10階で眺めはバッチリ。会社は〇〇駅から徒歩3分でアクセスも楽々」など

エンジニアとしてはこうした情報と自身の理想とする働き方を照らし合わせ、応募を判断するとよいでしょう。

IT転職エージェントの活用

IT転職エージェントを利用して職を探そうとするエンジニアは多いため、会社として採りたい人材の条件を登録しておくことにより、効率的に必要な人材を探すことが出来ます。

但し会社としてITエンジニアを採用する場合に注意しなければならないのは、転職エージェントの選択だと私は思います。転職エージェントは数多く存在しますが、得意分野と不得意分野があります。

様々な職種に幅広く対応しているエージェントがある一方で、特定の分野に特化したエージェントもいます。ITエンジニアを採用する場合、我々の会社では後者のエージェントの中から選択することとしていました。

エンジニアとして転職を検討する際には、エージェントが希望する企業の求人を扱っているかが重要となります。IT特化のエージェントであれば多くのIT企業の求人を扱うほか、事業会社でのIT職求人も様々なポジションで取り扱っています。

自社内で育てる

中途採用は即戦力を獲得できるというメリットがある一方で採用のリスクがあります。想定していた人材とは異なるエンジニアを採用してしまうことです。

例えば「リーダーの経験があって、コミュニケーション能力もあり、かつ技術力があるエンジニアを採用したい」要は、積極的にチャレンジ精神豊富なエンジニアが欲しかったのに、採用してみたら「リーダーの経験があり、技術力もあるが、残念ながらとても慎重派で消極的」というようなケースです。

他方で外部委託は、委託を慎重に行わないと自社内から技術が流出し、これを繰り返すと自社内の技術力の低下を招く可能性があります。そこで時間はかかりますが、社員を教育し社内におけるITスキル強化を進めていくという方法も考えられます。この方法は、成果が出るまでに時間がかかるため、長期的な計画を立てて実行していく必要があります。

このように、企業は面接で「良い人材」と判断しても、採用後のリスクを想定して慎重になる面があります。そのため面談では、自身の経験やスキルを伝えるだけでなく、

・これまでに経験した課題と、どのように解決したか
・採用された後に取り組みたいこと
・将来的な展望

等も併せて伝えることをおすすめします。企業は「これまでのあなた」を信頼して採用し、「これからのあなた」に期待したいと考えています。上記を伝えることで、企業側の不安を払拭することにつながるでしょう。

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まとめ

IT人材不足の現状とその理由と今後求められるIT人材、更に企業側の考えるIT人材確保対策について説明してきました。

今後、ますます優秀なIT人材の確保が難しくなっていく中で、各企業における戦力強化は非常に大きな課題であり、対応の如何によっては企業として成長していけるか否かを決定づける要因の1つにもなりえます。

他方で、IT業界および企業の人材確保に向けた考え方を理解した上で、ITエンジニアの皆さんは、自身の市場における価値を高めてステップアップしていくためにこの記事を参考にしていただければ幸いです。

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